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【連作ショートショート】悪魔の花(1)



 ピンポーン。
 ドアホンが鳴り、ユミコは荷物を受け取った。いつもの宅配便の箱ではなく、ぶきっちょに折り曲げて作ったお手製の段ボール箱だ。けっこう大きいし、ずっしりと重い。
 送り状を見て、
「あっ、ばあちゃん!」
 と思わず声が出た。ひさしぶりだなあ。
 ユミコが段ボールの箱をばりばりと開くと、中から出てきたのは赤色と紫色が交じり合ったキレイな花だ。素焼きの鉢が重かったのである。
 ユリのようにぐっと咲き誇る感じの花びらから、甘い香りが漂う。そのうしろから懐かしい故郷の土の匂いがした。
「お花、届いたよー」
 ユミコはさっそくばあちゃんに電話をかけた。
「おー、ユミコー、元気かあ」
 とばあちゃんは言った。それはこっちのセリフだよ。
「裏山を歩いておったら、見つけてなあ。ユミコ、花好きだったけん、鉢植えにしたんよ」
「うれしいー。大事に育てるからね」
 ばあちゃんもはじめて見かけた花だという。ざっそくスマホで撮影して検索してみると、思いがけない名前が出た。
 悪魔の花。
 千年に一度しか咲かない珍しいもので、取り扱いを間違えると、世の中に禍をもたらすという。
 うれしいけど、怖い。
 ユミコはさっそく親友のケイコに相談した。
「あ、そういうのに詳しい人、知ってる!」
 と即答。
 持つべきものは頼りになる友人だ。

(第一話 深川岳志)

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