ぽーじいちゃんと。
昨日、施設巡回の看護師さんが
『ぽーさん、今日が最後の利用日なのよ、しかも今日誕生日』と教えてくれた。
前私が勤めていた店舗で仲良くなったおじいちゃん。
異動して以来会ってないから、、、4年は会ってない。
施設間を巡回している看護師さんが、よく、私と仲の良かった利用者様のことを教えてくれる。
私がぽーさんの通う店舗にいた頃は
ぽーさんは歩いて来所していたけれど、今は車での送迎になったこと。認知症が進み、ご家族が介護が大変になり、うちの半日デイサービスではなく、施設に入ることが決まったということを教えてもらった。
昨日は、私は午前中でバイトを上がらせてもらって夕方から稽古の予定だったので、稽古の前に、ぽーさんのいる店舗に挨拶に行くことにした。
認知症が進んでいると聞いていたから
わかってもらえるかはわからない。
でも私には最強アイテムがあるので、ちょっと自信があった。
ぽーさんがくれた、ぽーさん著の本。
1990年ごろ、原発問題などの調査で旧ソ連のセミパラチンスクというところに調査に行った記録の本。
内容にすごく興味があったわけじゃないけど、
私が異動になった時、ぽーさんが「あげる」というのでもらって、大切に残していた本。
本を持って、4年ぶりにぽーさんに会いに行く。
「認知が進んでいるから、ここ(デイサービス)を辞めることはわかっていない。だからそれは言わないほうがいいかも」と看護婦さんに言われていたので
「お誕生日おめでとう」を伝えに行く程で。
久しぶりのぽーさんは、あまり変わっていなかった。静かで、あまり話もせず、でも常に穏やかな顔をしている。
座っているぽーじいちゃんの前にゆっくりしゃがむ。
「こんにちは!ぽーさん、覚えているかしら??」
とよく、顔を見せる。
ゆっくりゆっくり、ぽーさんが何かを思い出しているのが表情からわかる。
「これ、私大切に、大切に持っているのよ」と本を見せる。
「難しくて読んではないんだけど…。ぽーさん、現地のバスガイドさんが綺麗だったって言ってたねー!」
「おお、えらいなぁ、よく覚えてる、えらい。彼女はとびきり美人だった。」
声を出して笑うぽーさん。
「ぽーさんが今日お誕生日だから来たんだよ〜!おめでとうございます!」
と言うと
「嬉しいなぁ、ありがとう。20年ぶりくらいだなぁ」
とまた笑う。
あれれれれ。笑
わかってるのかなぁ、わかってないのかなぁ。
まぁでもどっちでもいい。
ぽーさんの笑顔に胸がギュウウっとなる。
多分もう会えない、これが最後と私はわかっているから。
嘘でも、また会いましょうね、とは言えず
「ぽーさん、元気で、まだまだ元気でいてね」
とまたハグをして、稽古に向かった。
帰り際、施設のスタッフが写真を撮ってくれた。
いい笑顔で「ありがとう」と繰り返したぽーさん。
会いに行ってよかったと思った。
ぽーさんのために!と駆けつけたようで、
多分自分のために、会いに行ったんだな、わたし。
いつか悲しい知らせを聞いた時に
本を見て、後悔しないように。
高齢者施設だから、いろんな別れがある。
いつまでも慣れないし、たくさん後悔もある。
正しいお別れの仕方もわからないし、正解は無いと思うけど。
年齢関係なく、会いたい、と思う人には会わないと。
いつでもどこでも、電話やビデオ通話もできちゃうけど
やっぱり会って、向かい合わないと、ね。
おわり!!!