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52ヘルツのクジラたち
52ヘルツのくじらたち 町田そのこ
出版社 : 中央公論新社
52ヘルツのクジラとは―他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない。そのため、世界で一番孤独だと言われている。自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、新たな魂の物語が生まれる―。
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寂しさを知る人間は、寂しさを知ってるからこそ、失うことに怯えるものだから
あの時、アンさんの言葉だけで生きていけるような気がした。魂の番などいてもいなくてもいい。わたしはきっと、彼の言葉だけでこれからを生きていけるはずだ。だってこんなにも、私は満たされた。
52ヘルツのクジラ。世界で一番孤独だと言われているクジラ。その声は広大な海で確かに響いているのに、受け止める仲間はどこにもいない。本当はたくさんの仲間がいるのに、何も届かない。何も届けられない。
ひとというのは最初こそ貰う側やけんど、いずれは与える側にならないかん。いつまでも、貰ってばかりじゃいかんのよ。
これからわたしたちは、どんなことがあったって頑張れるよ。だって、離れていても声を聴いて、声を聴かせくれるひとがいると知ったもの。
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読んだ後に感情が揺さぶられ、ずっと後を引いた。
聞いてほしい、助けてほしいのに声を出せず周りに届かない52ヘルツの声。読んでいてこんな苦しい状況の中生きている子どもがいるのかと悲しくなった。負の連鎖は続き、親からまた子へ。
でも、そんな苦しい状況の中でも見つけて助け出してくれる人がいて、負の連鎖が途絶える瞬間があった。愛を持って真摯に向き合い、寄り添う。そんな人が周りにいてくれることが救いだった。
52ヘルツのクジラたちの声が届きますように。
🌸:菊
花言葉「高貴」「高尚」