星を掬う
星を掬う 町田そのこ
出版社 : 中央公論新社
辛かった哀しかった寂しかった。
痛みを理由にするのって、楽だった。
でも……。
千鶴が夫から逃げるために向かった「さざめきハイツ」には、自分を捨てた母・聖子がいた。
他の同居人は、娘に捨てられた彩子と、聖子を「母」と呼び慕う恵真。
「普通」の母娘の関係を築けなかった四人の共同生活は、思わぬ気づきと変化を迎え――。
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わたし、可哀相って言葉嫌いなんです。千羽鶴みたいじゃないですか。何も救わない。誰かの自己満足のために役にも立たない善意を押し付けられる。
::同情と共感の違い
なんて純粋な心の持ち主だろう、と思った。それだけ幸福に生きてきたら、こんな風に育つのだろう。とてもうつくしい心根の持ち主。綺麗で、そして愚かだ。
::物事は自分が見ている視点と違うことがある。本質をみることを心がける。
自分の人生は、自分だけのもの、よ。誰かのために浪費しちゃだめよ。自分で輝かせないとね。
親に捨てられて苦しんできた。なるほどなるほど、大変だったかもしれないね。でも、成人してからの不幸まで親のせいにしちゃだめだと思うよ。
他人の悪意に負けて自分の生き方を狭めるなんて許さない
自分らしくっていう言葉はどこまでも遠くて、おかあちゃんらしく、って言葉はとても、しっくりきた。私はよくできた、おかあちゃん2号で、それ以外の個性ってのは、もう失っていたの。一卵性、母娘。嫌な言葉よね。
::自分らしく生きることの重要さ
誰かを理解できると考えるのは傲慢で、寄り添うことはときに乱暴となる。大事なのは、相手と自分の両方を守ること。相手を傷つける歩み寄りは迷惑でしかないし、自分を傷つけないと近づけない相手からは、離れること。
::自己を犠牲にして相手に与えることはするべきでない
わたしはいつも、この子のうつくしさにはっとしているような気がする。この子は己の受けた痛みを、決して誰かのせいにしない。両親がいたら、そんな風には決して言わない。自分の心を健やかに守りながら、まっすぐに生きている。
辛かった悲しかった寂しかった、痛みを理由にするのって、楽だよね。わたしもそう。誰かの―あのひとのせいにすると、自分がとても憐れに思えて、だから自分の弱い部分を簡単に許せた。仕方ないじゃない、だってわたしは小さなころに母親に捨てられたんだもの、って免罪符にもしてきた。あのひとのせいにして思考を止めてきたわたしが、わたしの不幸の原因だったんだ。
加害者が救われようとしちゃいけないよ。自分の勝手で詫びるなんて、もってのほかだ。被害者に求められてもいないのに赦しを乞うのは、暴力でしかないんだ。
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生きていく中で、この本に書かれているメッセージを学んできた自分がいて、ところどころで思い出すことがあった。このメッセージは、生きていく上で大切になる根底の部分だと思う。
町田さんワールドは深いし、気づかされるところがちりばめられている。
他人の人生、他人の思考を垣間見ている感覚。
そして、苦しみの中で生きている人に光を差し込む。
すらすらと読んだけど、あとから考えさせられるなぁ。
いろいろ綴りたいことがあるんだけど、口をつぐんた方がいいなとも思うこの感じはなんとも表現しづらいな。
このストーリーを読んでどんなことをみんな思うのだろう?
そんなことが気になったストーリーでした。
🌸:カラー
「乙女のしとやかさ」「清浄」
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