【さよならを教えて】これは絶望を直視する物語である【感想】
※ネタバレ在り 無料で全部読めるけどお金くれるとエロゲを買えます
鬱ゲーと持て囃されているけど、僕からは一度も鬱ゲーには見えなかった。
奇ゲーではある、常に夕方の校舎、現実なのか妄想なのかわからずじまいで錯乱する主人公、歪になっていくチャイム…
主人公の錯乱した描写が上手く、こちらも狂った気にさせていく。精神的に難儀のあった僕としては一種の共感が生れていった。凄いシナリオだ、少しでも鬱っぽかったら誰でも狂えるんじゃないか?
あらすじ
主人公は女子高の教育実習生の人見広介、彼は教育実習の始まりと共にある悪夢を見る。怪物が天使を穢し嬲り殺し喰われる夢。怪物とは僕で、天使とはとある少女である。その相談を保険医である大森となえに相談するところから始まる。教員免許さえあればこの先もなんとかなると思いながら、なんとか教育実習が終わってくれと彼は願っている。
5人のルートがあり、その中での一番のメインが「天使さま」である巣鴨 睦月だ。天使さま、彼はそう思い込みただの少女に神聖を見出している。夢の中の天使さまを食らう怪物の自分を恐れ、そして彼女の純白な神聖に怯え惹かれていく…この作品は終始彼女との関係が語られていく。
・・・・というより、実のところ巣鴨睦月以外のヒロインは存在していない。何せ主人公は教育実習生ですらない。
彼は精神病棟に入院してる患者なのだ。他の4人は主人公の妄想でしかない。鳥だったり標本だったり人形だったり…
巣鴨睦月は重度の鬱で入院している女子高生であるし、大森となえは精神科医だ。
主人公は親から教師になれと言われ続けた結果、妄想の中で教師になろうとしていた。というのがこの作品の真実である。物語を進めていくといきなり脈絡なくレイプしだしたり、廊下でトイレしだしたり、現在地と景色が一致しなくなっていく。完全に妄想がぐちゃぐちゃになりその妄想で生きる。
絶望への直視
僕から見たら彼は一切絶望に負けていなかった。それ故の鬱ではあると思うのだが、彼は真面目に生きていた。
教育実習生の妄想は彼にとって不都合で辛い事であるし、彼は何とか生きていこうとしているのが伝わってくる。絶望の中で懸命にしてるからこそ、逃げて負けているようには見えなかった。
だから僕は彼のことをとても尊敬する気持ちが生まれた。物語が最後になると極限まで狂い、向こう側から帰ってこれないのでは?と言われているところから自分は精神科にいるという自覚が生れていた。(ただし大森となえの助手という妄想付きだったが)
彼は教師になるという強迫観念から脱し、精神科医になりたいという夢が生れていたのではないか?と思うと希望が確かにそこにある。絶望の中から自力で自分を模索し、そして自己の希望的なものを見出していた主人公は物凄いと思う。だからこそこのゲームを鬱ゲーというにはあまりにも稚拙な感想だ。一人の人間の精神面での戦いがとてもよく描かれていてとてもいい作品だったなと思います。
終いに
とてもいい作品で思い詰めてた時にこそ、主人公から元気をもらえる作品だと思います。彼の戦いは愚直で気真面目過ぎるわけだから参考にしてはいけないけれど、それでも力はもらえました。辛いときにこそ、人間は折れていい。強すぎると折れる場所を見失いどうしようもなくなるのはこの主人公や僕自身の体験からでもそう思う。
彼みたいになってはいけないけど、それでもその場で戦っている人はいる。
このゲームは絶望に立っている人間へのエールですらある。
何度も言うけど名作でとてもいい作品でした。ネタバレ知っていても全然楽しめます。因みにエロシーンはまぁまぁエグいので注意、あんまりのめりこんで鬱にならないでね。
あと沙耶の唄もプレイし終わったからそのノートも書きたいね。その後にサマポケやる夏がそろそろ僕にも訪れるわけだし。
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