中日と大筋合意 新外国人ジョアン・タバーレスは活躍できるのか
0.はじめに
28日、遂にオフシーズンから待ちに待った情報が舞い込みました。中日ドラゴンズがジョアン・タバーレス投手(27)を獲得するという報道。
一軍のチーム投手成績が去年からダウンし、特に先発投手の頭数が足りずに是が非でも駒が欲しかった状況で、日本の独立リーグで活躍する彼に白羽の矢が立ったようです。一軍だけでなくファームも故障者続出により、投手陣を運用するのに困難が強いられている現状、果たしてこのタバーレスは活躍できるのか、どのような起用法になるのかについて考えていこうと思います。
1.タバーレス投手の経歴 基礎情報
タバーレスはドミニカ共和国出身で、188cm 106kgという大型の右ピッチャー。18歳の時にロイヤルズと契約したのち、2017年にドミニカのカープアカデミーに練習生として入団。その後2018年には広島東洋カープの育成選手としてヘロニモ・フランスアと共に契約を結び、1年間ファームでプレーします。しかし制球に苦しみ、防御率7点台と思うような成績を残せず1年間で戦力外通告。その後はBCリーグのオセアン滋賀ブラックス、富山GRNサンダーバーズ(現在は日本海オセアンリーグ)の2球団でプレーし、先発とリリーフの両方で活躍していました。18歳の時にドミニカサマーリーグで投げていた以外に、マイナーリーグやウィンターリーグでの登板も全く無く、日本の独立とウエスタンでのみプレーしていた投手。NPB他球団に在籍していた選手を中日が獲得するのは17年ぶりとなりますが、果たしてその広島時代からどのような進化を遂げているのか、どんなタイプの投手なのかについて直近の成績などを見て探っていきます。
2.タバーレス投手はどんなピッチャー?
それではタバーレス投手の広島時代と独立リーグの成績について確認し、特に去年の成績を詳しく調べていきます。
2018年 広島(ウエスタンリーグ)
17登板 19回2/3 12奪三振 8与四球 防御率7.32
WHIP1.88 奪三振率5.49 与四球率3.66
2019年 滋賀(BCリーグ)
38登板 50回1/3 50奪三振 21与四球 防御率1.79
WHIP1.43 奪三振率8.94 与四球率3.75
2020年 滋賀-富山(BCリーグ)
20登板 49回2/3 34奪三振 21与四球 防御率5.98
WHIP1.59 奪三振率6.16 与四球率3.81
2021年 富山(BCリーグ)
21登板 142回2/3 106奪三振 45与四球 防御率2.59
WHIP1.23 奪三振率6.69 与四球率2.84
2022年 富山(日本海オセアンリーグ)
9登板 9回 11奪三振 0与四球 防御率0.00
WHIP0.20 奪三振率11.00 与四球率0.00
(※5/15時点)
昨シーズンから先発として覚醒し、今シーズンはリリーフ投手として無双していることがわかります。元々3点台後半と不安定だった与四球率が去年から今年にかけて2点台以下に落ち着いているのは好材料でしょう。また先発時と比べてリリーフ時の奪三振率が高いのも特徴的で、様々な起用法が考えられそうです。その中でチーム事情的にも先発投手としての期待が高そうなので、先発を主に務めた去年の成績について詳しく調べていきます。
2021年のタバーレス
◎先発タバーレスの強み
・リーグトップの2完封&リーグ3位の142回2/3、1試合平均イニング6.8とイニング消化能力が高い
・春先の7試合連続7イニング以上を含む、12試合で7回以上を投球と高いゲームメイク能力
・被打率が圧倒的なわけではないが、被本塁打が少なく、対右.244 対左.254とどちらも極端に苦手としていない
・ランナーなし被打率.266に対して、得点圏にランナーを置くと被打率.213とランナーありを苦にせず、要所をしっかり凌げるピッチング
△先発タバーレスの課題
・フォアボールは減っているが、与死球が14あるので内角への抜け球は無くしたい
・リリーフ時は三振を奪えているものの、先発時は多く無いので決め球の確立は必須
・7月までは13先発 101回2/3 防御率1.86と無双も、8月以降に7先発 41回 防御率4.35とやや息切れ
いかんせん試合の映像が多いリーグでは無いので、細かい変化球の軌道や真っ直ぐの球質等はまだわかりませんが、情報を見る限り先発ではストレートは140km/h台中盤〜後半、リリーフでは150km/hも超えるボールも投げるようです。広島時代の映像を見る限りは打者の手元で曲がるカットボールのような球種を多く使うタイプかもしれません。とにかく空振りの取れる変化球を使えるかがキーになってきそうですね。
3.タバーレス投手への今後の起用と期待
ここまでお読みいただきありがとうございました。最後にチーム事情や独立リーグの成績面からチームと彼にとってベストな起用法を考えていきます。
まずはここまでの中日ドラゴンズの投手事情について、今季のチーム防御率は3.65とバンテリンドームを本拠地にするチームとしてはあまり良くない数字になっており、去年と比べても数値は悪化してしまっています。特にホーム2.97に対し、ビジターでのチーム防御率は4.55と敵地で抑えられる投手が少ないのと、チームのQS率が50%を割ってしまっているのは大きな課題でしょう。更に大野と柳のWエースを除くとQS率が30%を割っており、勝野の離脱や福谷の不調もあってゲームを作ることができる先発の枚数が足りていません。
ファームも離脱者増でそもそもの投手の母数が足りていないので、やはりチーム事情を考慮すらならば先発として期待したくなります。
ただ、彼の成績を考慮した時に圧倒的な成績を出せているのはリリーフとしての投球時。より良いパフォーマンスを期待するのであれば、リリーフとしての起用も視野に入れて良いかもしれません。勿論先発でイニングを投げてくれるとすればそれが最高ですが、その為にはまず安打を防げる球やしっかりと空振りの奪える球種をファームで身につける必要はありそうです。支配下での獲得になるか育成の獲得になるかは経歴的にも微妙ですが、チームの外国人枠も支配下枠もまだ空いている為、ファームで好成績を残すことができれば早いうちに一軍での登板はあるかもしれません。
日本の独立リーグで投げている投手の為、合流してすぐに投げることができそうなのは強みであり、早ければ6月上旬にもファームのマウンドに上がる可能性もありそうです。
理想は夏過ぎからの一軍での先発投手としての活躍ですが、今ファームの投手が足りていない為、まずはイニングが消化できる投手として二軍で投げてくれればチーム事情的にもかなり助かります。下でイニングを投げてもらって良くなってきた頃に一軍昇格し、先発として活躍してもらうのがベスト、先発でないとしても一定の戦力になってくれれば…という期待をしたいです。
決して大物助っ人といった経歴ではありませんが、去年の先発としての開花や今年のリリーフとしての無双と今後楽しみになる部分は多く、外国人スカウトもよくチェックしていたなという印象の投手。どうか去年と比べて投手陣、特に先発に苦しんでいるチームで救世主のような存在になって欲しいです。
ドミニカカープアカデミー出身で他球団で活躍した選手といえば、MLBで40-40を達成したアルフォンゾ・ソリアーノや巨人の先発左腕として活躍するC.C.メルセデスなどが挙げられるので彼らに続くような活躍ができれば最高でしょうか。
今年から設立された日本海オセアンリーグ出身選手第一号となるのがこのタバーレス、今後のリーグの発展の為にも彼の投球には注目していきたいですね。
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