国内のA3水域を航行する場合の設備や資格について~N-STAR通話可能範囲とは
こんにちは、徒然です。船舶の通信士のわたしが無線関係、通信士関係のnoteを書いています。今回は国内のA3水域を航行する船舶の無線機器や資格についてです。(今回は気軽に読んでください、大した話じゃありません😔)
↑この図はJCIのHPにある『沿海区域、A2水域、N-STAR衛星船舶電話の通話可能水域』です。日本領土に近い赤色の囲いが沿海区域、青がA2水域、緑が通称N−STAR水域です。それぞれ船舶に搭載する設備や人員が違ってくるのですが、無線関係についてはいくつかの法的要素を組み合わせることによって無線機器や無線従事者を乗せなくても航行できる範囲は、一般的法的認識よりも広いですよ、ということを説明していきます。
青の囲いのA2水域で、その外側の水域は当然A3水域なのですが、A3水域の範囲は一気に北極や南極などの極圏以外の世界的な水域になってしまいます。無線設備的には、一般的にMF/HF無線機やインマルサットCの搭載が義務となっており、国際航海の有無によって保守要件の選択数はちがうのものの、船上保守なら2級海技士電子通信、船上保守ではないなら3級電子通信であり、A3水域には基本通信長が必要です🙂(多くの船では兼任ですが…)
ですが、A3海域を航行する場合でも通信長のは配乗は必要なく(別に船内にそういった役職の人がいてもいいのだけれど…🙄)、さらには無線従事者資格も1海特でOKという場合もあります。それは、『A3海域を航行するものの国際航海をしない船舶』です。では、どういったことなのか?詳しく説明していきます。
どのような船舶が該当するのか。まず、国際航海をしない、これはつまり日本以外の港に着岸しない、という船舶です。A3海域は航行するけれど、着岸する港は全て日本の領土内だよという船舶は該当する場合があります。GMDSSでは『旅客船および漁船以外の非国際航海の船舶』はGMDSS保守要件には該当せず、結果通信長の配乗は必要ありません🤭
次に3海通以上で操作可能な機器を搭載しない、ということです。これはMF/HF無線機、インマルサットCを持たないことになります。しかしGMDSSの規定にもある通り、A3海域を航行する船舶はMF/HF、インマルサットCを搭載することが義務付けられているのですが…
実はこれ、ある海域まで航行する場所を限定することによってMF/HF、インマルサットCの搭載を省略できるのです。その範囲というのが、JCIの図にある『N-STAR衛星船舶電話の通話可能水域』です。もう一度図を見ていただくとわかる通り、この範囲には先島諸島、大東島諸島、小笠原諸島、硫黄島などが入っています。本来、日本のA2水域の港からこれらの港に行く場合A3海域用の設備が必要ですが、この『N-STAR衛星船舶電話の通話可能水域』(以下、『N-STAR水域』)の範囲内では搭載義務が代替機に変更が可能です。A3水域に必要なMF/HFはインマルサットCに代替可能であり、そのインマルサットCもN-STARの設備に代替可能です。
法的なことを確認しますと、電波法施行規則28条1項3号にはMF/HF無線機やインマルサットEGCを持ちなさいよ~、ということが書いてありますが、その7項に『インマルサットCがあればMF/HFなくていいよ』ということも書いてあります。これは、航行水域を『A3のN-STAR水域まで』、という形にすると航行水域は区分上A1A2(+N-STAR水域)となりそれによってGMDSSの保守要件を取らなくていいことになるので(電波法施行規則29条)、電波法35条が適用されず、MF/HF関係の予備設備を持たなくていいことになります。少し意味がわからないかもしれませんが、『A1A2+N-STAR水域限定にしてしまえば、保守要件無いので通信長要りません、MF/HF/インマルサットCないので3海通も要りません』ということが法的に可能になります。
では、そのN-STAR設備とは???、実はこれ簡単にいえば衛星船舶電話のことです。船舶の衛星電話といえば、国内の船舶ならおそらくワイドスターでしょう(わたしはそれ以外知らないです…、イリジウム船舶電話という船もあるのかな?)。この船舶電話は操作資格は必要無く、感覚は家の固定電話と同じようなものです。その他の無線設備は通常のA2水域の船舶と同じになります(VHFとかEPIRBとかレーダートランスポンダとかNAVTEXとか…)、無線従事者資格は1海特でOKです🤗
わたしは沿海や国内近海の内航船が実際どのような無線設備になっているのかは詳しくないのですが、MF/HFを搭載して運用するならば3海通以上は必要です。もし、『MF/HF無線を使わない、N-STAR水域限定にする』としても変更には運輸局の検査のもと、無線局免許状は通信局にて書き換えが必要です(搭載していてもその辺り書き換えさえしてしまえば対象機器の電源入れなければいいのだけれど)。このあたりはA3水域に3海通が必要なのではなくてMF/HFの操作に3海通が必要という方が正確ではあります。ですが、上記の理由と要目でA3海域の航行には必ずしもMF/HFの搭載が必要、というわけではありません。
今回は国内A3水域も行くけど、国際航海はしないよという貨物船などはこういったことができますよというかなりマニアックな話になっていまいましたが、国内の場合MF/HFは必ずしも搭載義務ではないというのは3海通を持っている人がいなくなった場合には役に立つ知識かもしれません。(A3に必ず3海通が必要なのではなく、MF/HFを積んでしまったので3海通が必要なんですね)。場合によっては船舶電話がインマルの代わりになるというのはちょっと驚きではないでしょうか?というわけで、今回はほとんど需要のない話でした😰🤗
TKS BIBI OUT