なぜ2海通を勧めるのか?〜GMDSSと通信士の関係③
こんにちは徒然です。noteでは船舶の通信士関係についてあれこれ書いています。②では航行区域と最後にGMDSSを少しだけ書きました。GMDSSと無線機器はとても関わりが多いので今回はそこを説明していきたいと思います。
GMDSSというのは船舶の安全航行についての世界的な取り決めのことです。GMDSSは全ての船舶対象というわけではなく、対象となるのは船種では客船、漁船、客船と漁船以外という3つのカテゴリー分けがされています(ですが客船と漁船については省略します)。
今回の話、いわゆる商船や官庁系(とはいっても漁船扱いの官庁もあるみたいだけど)はGMDSSの船種的には『客船と漁船以外』というところに該当します。そしてカテゴリー分けとしては、国際航海の有/無、A2海域以内かA3海域以遠かによってに海技士電子通信の必要となる級が変わってきます。
イメージがつくとは思いますが、A2海域よりA3海域の方が遠くに行くため、設備もより多くのものを搭載しなければいけません。しかし操作については何度も言うように、3/2/1海通やれることは同じですし、さらに通信長職に就くためには海技士が必要です。
ここからは電子通信の3/2/1級、の違いについて説明していきます。(以下はGMDSS的には『漁船及び旅客船以外』というカテゴリーについての説明です)
上図は通称:船舶職員法の通信長の資格要件の箇所です。この通り『船上保守を行わない船舶/3級電子通信』、『船上保守を行う船舶/2級電子通信』とあります(どちらもその級以上の資格,という意味です)。
さて船上保守とは???…、漢字で多少意味がわかるかもしれませんが、具体的はどういった内容でしょうか。この言葉の説明は電波法35条に載っていますので、そこから順番に説明していきます。(この電波法35条はGMDSSの無線関係に大きく関わり、この35条の内容そのものが後で説明する『保守要件』の内容そのものともいえます)
この三こそが『船上保守』のことなのですが、GMDSS内のカテゴリ別に一、二、三のうちいくつ選択しなければならないかが違ってきます。三の船上保守も含めて一、ニ、三をそれぞれ内容を説明します。
一:通称『設備の二重化』、予備の設備を持ちましょう、という意味です。その予備の設備とは電波法施行規則28関係(28条1〜5)に載っていますがいきなり見てもかなりややこしく書かれているので(残念ながらそういうものです…)今回と関係あるところだけ。要約すると、A3海域を航行する船舶はVHF無線電話(DSC付き)とMF/HF関係(DSC送/受信機,NBDP,無線電話)のバックアップ機を持ちましょう、ただインマルサットCをこのMF/HF関係のバックアップ機にもできるので(これは電波法施行規則28条7項)、この法に適合する形で(MF/HF関係+インマルサットC)の機能を 1台ずつ収容したラックタイプ型無線通信装置とVHF無線電話は2台以上という搭載が一般的ですよ、ということが書いてあります。(操作にはもちろん3海通以上が必要です)
二:通称『陸上保守』、着岸中に保守、メンテナンスができるようにしておくこと、という意味です。具体的にはそういった大手の無線関係の会社(J無線🙄だったりFの電気🙄だったりね)を点検保守事業者として陸上保守の契約を結び、メンテナンスを代行してもらうという形が一般的です。当然ながら点検業者側は業務サービスなので契約料が発生します。
三:通称『船上保守』、航行中に保守、メンテナンスを行えるようにしておくこと、という意味です。船上保守には予備品や専用工具と相応の資格人員が必要です。予備品は例えばVHF無線電話ならハンドマイクから基盤、ヒューズなど、レーダーなら予備のマグネトロンなど。専用工具はテスターや周波数測定器や電力計、シンクロスコープ(電波の波形を表示できる機械)など、(このあたりのことは電波法31/32条、電波法施行規則30/31条です)。ですが、一番肝心なところは船上保守を行うには海技士の2級電子通信が必要というところです、2級電子通信には2海通が必要ですね。タイトルの通り、通信士を目指すにあたっては2海通までは頑張って取得し、2級電子通信にしましょうという理由は3海通では船上保守の船舶では通信長ができないからです。
わたし個人は船上保守、陸上保守どちらの船舶にも乗ったことはありますが、船上保守にしている船舶は実際のところあまり多くはないかもしれません(正直なところわたしもどれくらいの船が船上保守なのかは知りません、あまり多くはないだろうなと予想)。船舶の見た目ではわかりませんし、搭載する無線機器については船上保守/陸上保守によって違いがあるわけではありません。採用の募集要項があった時に、2級電子通信以上とあれば、(おそらく船上保守なのかなぁ~…)とは思いますが、それだけでは正直わかりません。ただ、採用する側も船上保守のため2級電子通信資格保有者を見つけるのは大変困難であり(絶対数が少ないから)、無線従事者資格だけなら2海通はいるかもしれませんが、電子通信/通信の海技士資格保有者、特に2級電子通信となるとなかなかいないのが現状です。勉強をして2級電子通信までしておくとこういった船舶への採用の際は以上の理由でかなり有利であるといえます。2海通は3海通よりは難しいですけど…2級海技士ですからね、そういう意味では大したことはありません。
GMDSSの話に戻しますと、A3,A4海域の航行する国際航海有りの旅客船および漁船以外の総トン数300トン以上の船舶(A3までいくような商船などはここに該当する)は上記の『予備設備』『陸上保守』『船上保守』(これらの3つを保守要件という)のうち2つを選択して承認を受けなければなりません。多くは『予備設備+陸上保守』を選択していて、大型商船では航海士が3級電子通信で通信長を兼務兼任していると思います。『予備設備+船上保守』では繰り返しですが、保守機器と2級電子通信が必要になります。
以上わたしが2海通はあった方がいいよ、という理由は簡単にいうと2海通が船上保守に対応している2級電子通信に対応しているからです。2海通は講習の案内があるので講習で取得する場合もあるみたいですが、基本的には航海や機関の海技士と同じく2級以上は自分で勉強して取る人がほとんどだと思います。通信士を目指す場合、いつ募集があるかはわかりません。通信士になってみたいよ、という希望がある場合でも募集自体は少ないです、募集があったのに2海通以上でした、ということはあるかもしれません。船上保守を選択している船の採用する側にとって、2級電子通信取得者は非常に希少価値があります。2海通はすこし難易度が上がりますが、3海通からあとひと踏ん張りし、気合と根性(はいお決まりのワード😉)で船上保守の船舶に対応し、他の通信士希望者に差をつけましょう。
(ちなみに、船上保守を選択している船舶でももちろん3海通で無線機の操作はできますし、3級電子通信でも通信士はできます。法律上、通信長にはなれませんよということです)(さらに、2級海技士通信はGMDSS対応資格ではないので通信長はできません、通信士までです。)(船上保守の通信長職に対応している資格は 1級通信、1/2級電子通信だけです)
今回は説明がかなり難しかったです。正直意味がわからなかったかもしれませんが、ここは実際に通信士になってから自分の船の保守要件がどうなっているか確認してからでも遅くはありません。GMDSSについては基本的には自分の船がどの保守要件を選択しているのかくらいしか考えないので全体を一般的に説明するのはとても大変でした。今回は『あ〜全然わからん説明へたくそだろ』と言われそうですが(ごめんなさい😥)、電子通信の海技士は2級だと採用のチャンスが大きくなるかもしれないということを覚えておいてください。2海通以上の取得を頑張る人へ、志高く突き進みましょう。
TKS BIBI OUT
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