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「蟻のように牛がいる」の巻

 渡米して最初はロサンゼルス、その後サクラメントに住んだので、ハイウエイ5号線を使うことが多かった。両地点間を移動するために車で走ると、大体6時間ぐらいかかるのだが、非常に単調だ。しかしその途中に、1か所だけ、大牧場があってその単調さをかき消してくれるのだ。
 写真(2005年11月21日撮影)に写っているのは、全部牛である。奥のほうでうっすら雲のようになっているところも牛である。見渡す限り牛だ。実はこの時、時速90マイル(約144km)くらいで走りながら撮影していたので、もっと絶好のシャッターチャンスを逃している。本当はもっと一面の牛なのだ。
 写真からは伝わってこないが、撮影時に車の窓を開けたら、その悪臭たるや半端ではない。そりゃそうだろう、これだけの牛の排泄物は、とんでもない量になることだろう。
 若いころ、大阪から松山に行った帰り、松山自動車道(だったと思う)がまだ開通していなくて、伊予三島のあたりで下道を走っていたら、製紙工場の恐ろしい臭いで、気分が悪くなったことがあった。ところが住人に言わせると、慣れてしまえば関係ないらしい。このう○この臭いもそうなのだろうか。確かに、カウボーイが鼻をつまんでいる姿など見たことはない。
 ところで、アメリカの牛肉は、硬くてうまくないと思っている半可通が多いと思うが、アメリカの肉も日本と同じだ。旨いものは旨いし、不味いものは不味い。それだけのことだ。アメリカのファミレスで食うステーキなどは勿論後者だが、日本風のレストランの鉄板焼きなどでも、後者であることが結構多いので、そういうところへツアーなどで連れて行かれると、「やっぱりアメリカの肉は不味い」ということになってしまうのだ。アメリカ人だってバカではない。今では和牛種の飼育もおこなわれており、すでに市場にバンバン出ている。
 当たり前のことだがちゃんとしたステーキハウスに行けば、そこそこ金はかかる。これだけたくさんの牛がいるんだから、もっと安くなってもいいとは思うのだが、まぁ、日本よりははるかに安い。筆者が出張先でよく行った、ファミレスよりちょっと上の(つまり、アルコールを供するレベルの)レストランで、プライムリブで25~30ドルぐらいだろうか。ただし、日本の1人前の倍の量はある。
 当時、狂牛病の件で、全頭検査云々という話が喧しかったが、できるわけないと思っていた。この牧場だけでこの数なのだ。その後、アメリカの牛肉は来るようになったのだが、全頭検査ってやってるんだろうか? 日本人は忘れっぽいから、有耶無耶になっているのでは? と勘ぐってしまう。

拙ブログ『無闇にアメリカに来てはいけない』より「ほら、蟻のように牛がいる」(2007年11月08日 22:53付)に加筆修正した。


 

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