(5)日本の「永住権」の実態
「日本にはアメリカのような永住権制度がない」と書いたが、これはちょっと説明が必要だ。筆者のいう「永住権」というのは、「永住者」のことではない。国籍の前段階にある「永住権」がなく、権利ではない「永住許可」の制度が日本にはあるのだ。「特別永住権」という言葉を聞いた方もいるだろう。しかしこれも、厳密にいえば間違いなのだ。「特別永住者」が正しいのであって、本来権利であってはならないものだ。
特別永住者とは、平成3年11月1日に施行された「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」により定められたもので、かつて日本国籍を有していたが、わが国の敗戦によって突然「外国人」となり、日本の内地で生計を立てていた人(実際には戦後のどさくさに朝鮮半島から密航者して来た者も多く含まれる。日本内地の方が暮らしやすかったからだ。そんな状況で「強制連行」があったとは笑止千万だ)を「特別永住者」、それ以外の外国人を「一般永住者」として区別した。諸外国で同様のケースがあった場合には、通常は二重国籍になることが多いらしく、原則として二重国籍を認めないわが国としては、この措置はやむをえないものだとは思う。
特別永住者になれるのは、特別永住者の子孫だけであって、お察しの通り、所謂在日韓国・朝鮮人が大半を占める。そして、4世、5世の世代になっても彼らが帰化しないのは、自らのアイデンティティに誇りを持つからだと説明されるが、実際には、所謂「在日特権」を手放したくないからだと言われているのも事実だ。
それでは、一般永住者にはどのようにすればなれるのか。
出入国管理及び難民認定法第22条2項によれば、条件は「素行が善良であること」と、「独立の生計を営むに足る資産又は技能を有すること」のふたつだけである。
この条件を満たし、その申請者の永住が我が国の利益に合致すると認めたときに限り、法務大臣は、その者の永住を許可する事ができるという。現在、合法的に日本に滞在する外国人の、実に25%以上が永住者だ。
犯罪者など、条件に合わない者からは、永住許可を取り消しても構わないはずだが、そんな例はあるのだろうか。筆者の教え子の行政書士に尋ねてみた。
現在の、永住者を含む在留外国人の在留許可取り消しの制度ができたのは、平成16年になってからのことらしい。永住許可の取消も、法令上は可能だという。取消の事由としては、①虚偽書類で申請した場合と、②ビジネス系の資格での滞在の場合、3ヶ月以上実績がない場合と定められているが、彼が知っている限りでは、現行の制度ができてから、たった3件しか実績がないという(執筆当時)。更新時に不許可を出す以外では犯罪者の追放をしていないのではないかということだった。
在留資格を取り消された後は、書類偽造などの悪質な場合には強制退去になるが、悪質でないと判断された場合や、②が理由の場合には出国するために必要な期間が指定され、その期間内に出国すれば、在留期間内に合法的に出国する場合と同様に取り扱うという、甘い処置が行われる。
しかも、日本人と結婚して在留許可を得た後、離婚した場合などは、在留資格取消しにはならないという。実際、滞在目的で一定期間日本人と婚姻し、その後一方的に離婚して、在留許可だけを得るという例もかなりあるらしい。
前回書いたが、アメリカでは永住権を持っていても、犯罪に手を染めたり、飲酒運転を重ねたりしただけでも、国外追放になる。結婚による滞在資格の場合、婚姻の事実は追跡調査される。そういうことは日本ではない。アメリカが移民を基礎としてできている国家であり、悪質な移民を追放することで、国家のまとまりを保てるという事情もあるだろうが、それは、国際化社会の現代、日本のような国でも考えねばならないことだろう。
永住者や特別永住者が、既得権になってしまってはならない。あくまでもそれは、日本国政府、ひいては、天皇陛下からの恩恵なのであって、権利として振りかざすようなものではあり得ない。だから、特別永住者であろうと、日本国籍を取得していない限りは、重犯罪人は本国に追放するという厳しい措置を想定しておく必要があるハズだ。
さらに、恐ろしいことがある。
永住者の申請は、原則として、10年以上継続して日本に在留していることも条件となっている。
帰化申請するのに、何年間の滞在が必要だったか、既に書いたが、覚えていらっしゃるであろうか。
5年である。つまり、永住者の申請よりも、帰化申請の方が、年数が短いのだ。帰化申請に、永住者である必要はない。これならば10年待って永住者になるよりも、五年で帰化申請する方が簡単だと思われても仕方がない。
日本の永住制度や帰化の制度というのは、戸籍制度と同様に今日のような国際社会をまったく想定していない、恐ろしく陳腐なものとなっている。古いだけならかまわないが、このままでは、国民国家の根幹を揺るがしかねない。
制度を悪用する不逞外国人に「特権」を与えることがないように、そして。万一与えてしまっても、簡単に剥奪できるように、政府は早急に措置を講ずる必要がある。
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