人は競技を見ていない
ご無沙汰しております。個人noteの更新をめちゃくちゃサボタージュしていました。すみません。まあ年末年始見た試合の中で個人的にかなり思うところがあったので筆を執る次第になりました。
関東2部・3部入れ替え戦
まず12月頭の亜細亜×慶應の入れ替え戦。亜細亜は今季持ち前のパッションと強度、愚直さを武器にぎりぎりの鍔迫り合いを年間通して制し続け、勝ち点0の試合を1に、1の試合を3に変えてきた。尻上がりに調子を上げ、最終的には4位でフィニッシュ。新設される関東3部の昇格を決め、その調子のまま関東大会でも勝負強さを発揮。ジャンプアップで関東2部昇格へのチャンスを得た。対する慶應は、終盤の青学の猛追に屈し9位でのフィニッシュ。降格か残留かをかけて12月4日を迎えた。
負ければ3部。勝てば2部。まさしく1試合で天国と地獄を分ける、生きるか死ぬかのプレーオフ。決勝とか最終節とも違う、異様な緊張感と高揚感はスタンドのこちらにも伝わってくる。
浦安の寒空の中キックオフ。開始早々から自分たちのストロングである強度のところで上回られる、亜細亜にとっては厳しい展開に。15分にサイドを破られると先制点を献上。まったく試合の流れを掴めないまま序盤にして2点が必要になる苦しい展開に。防戦一方の前半をなんとか一失点で切り抜ける。
15分の小休止を挟んだ後半、徐々に亜細亜が流れを変え始める。球際、セカンド回収を徹底して愚直にやり続け、サイドを攻略。ゴールに迫るシーンを増やすと、38分に左サイドからのクロスで同点弾を奪う。その後は完全に亜細亜の空気に会場全体がなり、あわやというシーンの連続に。しかしゴールは割れず、このまま慶應が耐え凌ぐかと思われた48分、CKから亜細亜が叩き込み逆転。ピッチは興奮のるつぼに。試合はそのスコアのまま終了。亜細亜が土壇場で関東2部への切符をつかみ取った。
素晴らしいゲームだった。「すべてを懸ける」「命を張る」というのは試合前に口にする常套句であるが、この90分はまさしくそのような90分間であった。伝わってくる熱気や緊張感は後述する試合たちと比べても別格。まさしく真剣での斬りあいであった。
このゲームをモノにした亜細亜だが、正直開始早々ゲームを支配されたように、クオリティ、強度の部分では慶應の方が1枚上手だった。しかし我慢の時間帯が続いていてもシュートブロック、球際などできることを愚直にやり続け、最後に流れを持ってきた。ベンチメンバーを含めた全員での雰囲気づくり、であったりモチベート力。いかにして鍔迫り合いを制してきたのかという答え合わせになった90分であった。技術、戦術よりも大事なもの、勝負をわけるものがあるということを身に沁みさせられた90分であった。
インカレ決勝 桐蔭横浜大×新潟医療福祉大
元旦に行われたインカレ決勝。桐蔭横浜大と新潟医療福祉大が元旦に聖地・国立で相まみえた。プロ内定者を多数擁する桐蔭横浜と、下馬評的に格上だと思われていたチームを喰ってきたダークホース、新潟医療。試合展開は大学No.1チームを決めるのに相応しい極上のスペクタクルであった。
先制したのは新潟医療。押され気味だった展開であったがクロスのこぼれ球を押し込み先制に成功する。しかし桐蔭横浜もすぐさま反撃。押しも押されぬ大エース、山田のオーバーヘッドから、重戦車・寺沼が押し込み振り出しに。その後はボールを保持する桐蔭横浜と、オナイウを中心に深い位置でのスローインとCKを愚直に狙い続ける新潟医療という構図。31分に新潟医療は深い位置からのスローインを獲得すると、ロングスローから再び勝ち越しに成功。リードして折り返す。
後半も構図は変わらず。ボールを握って揺さぶりをかけ続ける桐蔭横浜。72分に笠井が入るとそれが起爆剤になり、攻撃が活性化。76分に笠井がネットを揺らし、ゲームは振り出しに。こうなると桐蔭横浜は止まらない。ゴールに迫るシーンを増やすも水際のところで新潟医療はゴールを許さない。延長まで粘り切ると思われたロスタイム、ついに大エース・山田が火を吹く。ドリブルで相手をかわすとPA手前から右足一閃、ボールはGKの頭上を越え、ゴールに吸い込まれる。このまま3-2でタイムアップ。エースがエースたるゆえんを国立の地に見せつけ桐蔭横浜大が優勝を飾った。
試合内容はもちろん素晴らしかった。レベル感、迫力ともに超Jリーグ級であった。特に両CBvsCF、そしてそれに伴うセカンドの回収合戦は息を呑むほどの迫力であった。しかし観客動員数は12000人程度。かなりの人数の学生が動員されている事実も鑑みると、熱気と面白さの割に寂しいような気がした。
全国高校サッカー選手権
年末年始の風物詩、選手権。今年も例に漏れず観戦に。準々決勝以降は全試合観戦させてもらった。生で見に行ったのは等々力会場だったベスト8、岡山に初の栄冠をもたらした岡山学芸館×佐野日大、そして超高校級ストライカー福田と司令塔・大迫を擁する神村学園ד王者”青森山田の2試合であった。
どちらも面白かったが、特に後者は見ごたえのあるゲームであった。トランジションと球際、圧倒的な強度の波で敵を圧死させる青森山田と下から丁寧に作る神村学園。先制点は青森山田。持ち前の圧力で相手VOのミスを誘うと、そこを逃がさず先制点。
しかしブレなかった神村。青森山田の第一波を剥がし、大迫のTDパス。福田が収めて、そこから同点ゴールを生み出す。直後には青森山田の熱波に、サイド際で追い込まれるが、ボールを離さないことが信条であることの神髄を見せつけ、決死の状態からプレスをかいくぐり、無風状態のDFラインへ一直線。最後は福田がゴールへの嗅覚を見せ逆転。圧力勝負の風潮が蔓延る高校サッカーに風穴を開けたゲームになったのではないか。
話は変わってファイナルに。紙一重のところで神村は敗れてしまったが、岡山学芸館が初の載冠となった。観客動員数は5万人越え。インカレ決勝の4倍以上となった。
人が見るのは競技ではなく“ストーリー”だ
さてここからが本題、というか書こうと思い立った理由。
世界中のサッカー関係者100人集めてインカレの決勝と、選手権の決勝、どちらが5万人入った試合でしょう、というクイズをしたら十中八九、前者だと答えるだろう。これはなにも高校選手権を貶めているわけではないが、プレースピードや迫力、技術、すべての面を含めてインカレの方がハイレベルであった。これは紛れもない事実であるとどちらも見てもらえれば、納得してもらえるだろう。しかし集客は選手権がインカレの4倍。学生動員を除けばその差はより膨大なものとなる。
人は競技なんか見ていない、ストーリーを見ている。それが選手権が人を巻き込んでいる理由だと思う。高校選手権では「人生最後の大舞台」だの「補欠選手の応援する思い」だの「両親の願い」だのそんなストーリーが実況・解説を通して、地上波の電波に乗って、伝え続けられた。そのような“物語”が人を1月9日の国立に集めた。
それに比べて大学サッカーはどうだろう。なかなかストーリーを表現する場も機会も与えられていないし、各チームが必ず持っているはずの文脈、物語で人を巻き込めていないというのが事実だろう。
そもそも高校というほとんどの人が通る道と、半分しか通らない大学というのでは起こさせられる郷愁・ノスタルジーが全然違う。だけど「人生の夏休み」と形容されるような期間のほぼすべてを競技に費やし、血反吐吐いて、砂を噛むような思いをしながら、人生最後のゲームとして、来季の天国と地獄を分ける、真剣での斬りあいを演じたり、日本一を懸けて元旦国立で、極上のスペクタクルを演じたり、というのはめちゃくちゃ魅力的なストーリーだと思うんですよね。特に入れ替え戦は文脈的にも、内容的にもどちらにも感情移入ができたし、だれが見ても心が動くコンテンツだったと思う。
だからこそなんとなくこの認知されていない感じが悔しいし、もったいねえな!って思う。具体的にどんなムーブをすれば変わるかってところまでは考え付いてなくて、中途半端なんだけど。地上波テレビ局とか、クソデカ媒体が取り上げてくれるのが手っ取り早い。やっぱり。コンテンツの中身に拘っても、見て貰えなきゃ意味が無い。
じゃあどうやってクソデカ媒体に取上げてもらうのか、もうそれは草の根運動的にやるしかない。てかできない。各チームがカッコいい画像や動画とかじゃなくて、こだわりを持って自分たちのストーリーを地道に共有していければ少しずつ変わっていくのかな、とも思ったり。
とにかくまずは自分がやれよって話なので。できることとして、サッカーの中身じゃなくて、ストーリーを共有することをチームのSNS運営でも意識していきたい。個人noteも定期的に今季は更新するので、そこでもストーリーを!意識して!
今年一発目あざした。次は今季開幕前に更新します。それでは!
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