戦略で著名な人物 1人目/マーケティング編/フィリップ・コトラー
戦略と一言で言ってもいろんな分野がある。
国際政治や軍事、思想など様々な分野があり、戦略というとその人によって捉え方が違うが、今回はマーケティング戦略で著名な人物を紹介する。
なお、他分野とはいえ、それをマーケティング分野や経営分野に転用する事はできる。従って、無関係ではないことも添えておく。
フィリップ・コトラー
まずこの人を紹介しなければいけないだろう。
マーケティング・ミックスやSTPをしらないマーケターはいないだろう。
コトラーが有名になったきっかけ
コトラーが有名になったきっかけは、彼のマーケティング理論が実際のビジネスで広く応用され、その成果が認められたことにあります。
特に、マーケティングミックスやSTP分析は、多くの企業が市場戦略を構築する際の基本的なフレームワークとして採用しています。
ここからはコトラーが提唱した著名な理論やフレームワークを紹介していきます。
STP分析
フィリップ・コトラーが提唱したSTP分析は、マーケティング戦略を立案する際に用いられる重要なフレームワークです。この分析は、Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の3つのステップから構成されています。それぞれのステップについて詳しく解説します。
STP分析の3つのステップ
Segmentation(セグメンテーション)
市場を細分化するプロセスです。顧客の特性やニーズに基づいて市場を分割し、それぞれのセグメントを明確にします。一般的なセグメンテーションの基準には、地理的変数(地域、都市規模)、人口動態変数(年齢、性別)、心理的変数(ライフスタイル、価値観)、行動的変数(購買活動、使用頻度)などがあります。
Targeting(ターゲティング)
セグメンテーションで分けた市場の中から、特定のセグメントをターゲットとして選定します。選定方法には、集中型マーケティング(一つのセグメントに絞る)、差別型マーケティング(複数のセグメントに異なる製品・サービスを提供)、無差別型マーケティング(全セグメントに同じ製品・サービスを提供)などがあります。
Positioning(ポジショニング)
ターゲット市場における自社の立ち位置を明確にします。競合製品と比較し、自社製品の強みを活かせるポジションを決定します。一般的には、ポジショニングマップを使用して、競合と自社の位置を視覚化し、差別化ポイントを明確にします。
STP分析の目的とメリット
STP分析は、顧客ニーズの整理や自社製品の強みの明確化を通じて、効果的なマーケティング戦略を構築することを目的としています。これにより、競合他社との差別化を図り、ターゲットに対して適切なアプローチを行うことが可能になります。また、STP分析を行うことで、限られたリソースを効率的に活用し、収益性の高いマーケットを開拓する手助けとなります。
STP分析は、マーケティングの基本戦略として広く利用されており、特に競争の激しい市場において自社の優位性を確立するために重要な手法です。
マーケティングミックス7P(拡張マーケティングミックス)
フィリップ・コトラーが提唱したマーケティングミックスの「7P」は、従来の「4P」に3つの要素を加えたものです。
このフレームワークは、特にサービス業におけるマーケティング戦略を考える際に重要です。以下に各要素を詳しく解説します。
マーケティングミックスの7P
Product(商品・サービス)
提供する商品やサービスの内容、デザイン、品質、付加価値などを指します。
Price(価格)
商品やサービスの価格設定に関する戦略です。コストや市場の需要、競争状況に基づいて決定されます。
Place(流通・チャネル)
商品やサービスをどのようにして顧客に届けるか、流通経路や販売チャネルに関する戦略です。
Promotion(プロモーション)
広告や販売促進活動、PRなどを通じて商品やサービスを顧客に認知させるための戦略です。
Personnel(人・要員)※コトラーが拡張したもの
サービスを提供する人々やスタッフに関する要素です。顧客との接触を通じてサービスの質を高めることが求められます。
Process(業務プロセス・販売プロセス)※コトラーが拡張したもの
サービスがどのように提供されるかのプロセスです。効率的かつ顧客にとって納得のいくプロセスが重要です。
Physical Evidence(物的証拠)※コトラーが拡張したもの
サービスの品質を示す物理的な証拠です。例えば、店舗の雰囲気や設備、スタッフのユニフォームなどがこれに該当します。
7Pの重要性
従来の4P(Product, Price, Place, Promotion)は有形商品に適用されることが多かったですが、サービスのマーケティングには無形の要素が多く含まれるため、7Pが有効です。コトラーは、サービスの特性に合わせたマーケティング戦略を構築するために、これらの要素を追加しました。
7Pの活用事例
東京ディズニーリゾート: 非日常的な体験を商品コンセプトに掲げ、顧客満足度を高めるために7Pを活用しています。
7Pのフレームワークは、サービス業だけでなく、顧客との接点が重要なすべてのビジネスにおいて、より包括的なマーケティング戦略を立案するために役立ちます。
競争地位戦略の4類型
フィリップ・コトラーが提唱した競争地位戦略の4類型は、企業が市場における自らの立ち位置を理解し、それに応じた適切な戦略を策定するためのフレームワークです。
この理論は、企業を市場シェアや経営資源の質と量に基づいて4つのカテゴリーに分類し、それぞれに合った戦略を提案しています。以下にそれぞれの類型を解説します。
コトラーの競争地位戦略の4類型
リーダー(Leader)
市場で最大のシェアを持つ企業を指します。リーダー企業の戦略は、既存の市場シェアを守りつつ、さらに市場全体を成長させることに焦点を当てています。
具体的には、防衛戦略、攻撃戦略、成熟戦略などを駆使して、競争優位を維持します。
チャレンジャー(Challenger)
リーダーに挑戦する立場にある企業です。
チャレンジャーは、リーダーのシェアを奪うことを目指し、積極的な攻撃戦略を採用します。
価格競争や新製品の投入、マーケティングキャンペーンの強化などが一般的な戦略です。
フォロワー(Follower)
リーダーやチャレンジャーを模倣しつつ、安定した市場シェアを維持する企業です。
フォロワーは、リーダーの成功した戦略を模倣し、リスクを最小限に抑えながら利益を確保することを目指します。
ニッチャー(Nicher)
特定のニッチ市場に焦点を当て、そこに特化した戦略を展開する企業です。ニッチャーは、他の企業が見落としがちな小規模市場で独自の地位を築き、専門性や高い顧客満足度を武器に競争を展開します。
競争地位戦略の重要性
この戦略は、企業が自らの市場での立ち位置を正確に把握し、それに応じた効果的な戦略を策定するために重要です。特に競争が激しい市場では、自社の強みを活かし、適切な戦略を選択することで、持続的な競争優位を確保することが可能になります。競争地位戦略は、企業が市場でのポジションを理解し、最適な戦略を選択するための指針となります。
マーケティングの進化(1.0~4.0)
フィリップ・コトラーが提唱したマーケティングの進化は、1.0から4.0までの段階で区分され、それぞれの時代に応じたマーケティングのアプローチを示しています。以下に各段階を詳しく解説します。
マーケティング1.0:製品中心
概要: マーケティング1.0は、製品を大量に生産し、どのようにして多く売るかに焦点を当てた時代です。この時代は、産業革命の影響で大量生産・大量消費が可能になり、製品自体の特性や価格が重視されました。
特徴: 製品中心のアプローチで、顧客ニーズや製品の価値はあまり重視されていませんでした。
マーケティング2.0:消費者中心
概要: 1970年代以降、経済発展とともにモノが溢れ、消費者の需要が多様化しました。これにより、企業は消費者のニーズを理解し、製品を差別化することが求められるようになりました。
特徴: 消費者のニーズや欲求に基づくプロダクトの開発が重視され、消費者中心のマーケティングが行われました。
マーケティング3.0:価値主導
概要: インターネットとソーシャルメディアの普及により、消費者は簡単に情報を得られるようになり、製品の社会的価値や企業の社会貢献が重視されるようになりました。
特徴: 企業は、社会にどれだけ貢献しているか、製品が世界をより良くするものであるかをアピールすることが求められました。
マーケティング4.0:自己実現
概要: 2010年代に入ると、消費者は商品やサービスを選ぶ際に、単にその良さだけでなく「商品を使用している自分が好きになれるか」という自己実現を重視するようになりました。
特徴: 顧客が商品を使用した経験を他者に紹介したくなるような体験を提供することが目標とされ、企業は顧客体験の向上に注力しました。
これらの段階を通じて、マーケティングは製品中心から消費者中心、そして価値や体験を重視する時代へと進化してきました。コトラーの理論は、時代の変化に応じたマーケティング戦略の方向性を示しており、現代のマーケティング活動においても重要な指針となっています。
5A理論
フィリップ・コトラーが提唱した5A理論は、現代のデジタル時代における顧客の購買プロセスを分析するためのフレームワークです。
この理論は、顧客が製品やサービスを認知してから推奨するまでのプロセスを5つのステップに分けて理解することを目的としています。以下に各ステップを詳しく解説します。
5A理論の5つのステップ
Aware(認知)
顧客が製品やブランドを知る段階です。広告や口コミ、ソーシャルメディアなどを通じて、顧客は初めて製品やブランドの存在を認識します。
Appeal(訴求)
製品やブランドに対して興味や好意を持つ段階です。ここでは、ブランドのイメージやメッセージが顧客の感情に訴えかけ、より深い関心を引きます。
Ask(調査)
顧客が製品やブランドについてさらに詳しい情報を求める段階です。インターネットでの検索、レビューの確認、友人や家族からの意見収集などが行われます。
Act(行動)
実際に製品を購入する、またはサービスを利用する段階です。購入後のサービスやサポートもこのステップに含まれます。
Advocate(推奨)
顧客が製品やブランドを他者に推薦する段階です。満足した顧客は、ソーシャルメディアや口コミを通じて他の消費者にブランドを推奨します。
5A理論の重要性
5A理論は、顧客がどのようにして製品やブランドと関わり、最終的に他者に推奨するに至るかを理解するための有用なフレームワークです。このプロセスを理解することで、企業は各ステップでの顧客体験を最適化し、より効果的なマーケティング戦略を構築することができます。
特にデジタル時代においては、顧客の購買行動が多様化しており、5A理論はその複雑なプロセスを整理し、顧客のニーズや行動をより深く理解するための指針となります。企業はこの理論を活用して、顧客のライフサイクル全体にわたって価値を提供し、ブランドロイヤルティを高めることができる。
コトラーの著名な書籍
ここからはコトラーの著名な書籍を挙げます。
コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント
世界中のMBAプログラムで使用されるマーケティングの教科書として有名です。
マーケティングの原理原則を体系化し、実践的なアプローチを提供しています。
概要
この書籍は、マーケティングの基本から応用までを網羅した教科書として、世界中のビジネススクールで使用されています。マーケティングの定義、戦略の策定、顧客価値の創造、ブランド構築、競争戦略など、マーケティングのあらゆる側面を詳細に解説しています。
現代のマーケティングへの応用:
この書籍は、マーケティングの基礎を学ぶための必須リソースであり、特にマーケティング戦略の立案や実施において重要な指針を提供します。デジタル時代においても、基本的なマーケティング原則は変わらず、これらを理解することで、より効果的なマーケティング活動を展開することができます。
現在は12版まで出ています。
コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則
ソーシャルメディアの時代におけるマーケティングの新しいアプローチを解説しています。
概要:
マーケティング3.0では、消費者の精神的な価値や社会的な責任を重視したアプローチが強調されています。企業は製品を通じて社会に貢献し、顧客と共感を築くことが求められます。
現代のマーケティングへの応用:
現代の消費者は、単に製品の機能や価格だけでなく、その製品が社会に与える影響や企業の理念に共感することを重視します。この書籍は、企業がどのようにして消費者の共感を得るかを考える上で重要な指針を提供します。
コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極法則
デジタル時代における顧客とのエンゲージメントを重視したマーケティング戦略を紹介しています。
概要:
マーケティング4.0は、デジタル技術を活用し、消費者の自己実現をサポートすることに焦点を当てています。消費者は商品を使用することで自己表現を行い、他者に推奨することが期待されます。
現代のマーケティングへの応用:
デジタル技術の進化により、消費者はより多くの情報にアクセスでき、商品選択の基準が変化しています。この書籍は、デジタル時代における顧客エンゲージメントの重要性を強調し、企業がどのようにして消費者との関係を築くかを示しています。
コトラーのマーケティング5.0 人類のためのテクノロジー
デジタル技術の進化に伴うマーケティングの変化とプライバシー問題に触れた最新作です。
概要:
マーケティング5.0は、AI、ビッグデータ、IoTなどの先進技術を駆使して、消費者にパーソナライズされた価値を提供し、より深いレベルでのエンゲージメントを実現することを目指しています。この理論は、テクノロジーの活用が前提となりつつも、人間性を重視するアプローチを取っています。
主な構成要素:
データドリブン・マーケティング: ビッグデータを分析し、マーケティング活動を最適化するためのデータエコシステムを構築する。
アジャイル・マーケティング: チームを柔軟に活用し、迅速な製品開発やマーケティングキャンペーンを実施する。
予測マーケティング: 機械学習を活用して、マーケティング活動の結果を事前に予測する。
コンテクスチュアル・マーケティング: 消費者のコンテキストに応じたマーケティングを行う。
拡張マーケティング: テクノロジーを活用して、消費者体験を拡張する.
現代のマーケティングへの応用:
マーケティング5.0は、デジタル技術を駆使して顧客体験を向上させ、企業が社会的な責任を果たすための指針を提供します。企業は、テクノロジーを通じて消費者の生活をより便利で豊かにし、同時に環境や社会に対する責任を果たすことが求められます。このアプローチは、持続可能なビジネス戦略やSDGsの達成にも寄与します。マーケティング5.0は、単に技術の導入にとどまらず、顧客との信頼関係を構築し、長期的なブランドロイヤルティを高めるための重要な手法となります。
コトラーの戦略的マーケティング―いかに市場を創造し、攻略し、支配するか
市場を創造し、攻略し、支配するための戦略的なマーケティング手法を解説しています。
概要:
この書籍は、グローバル市場におけるマーケティング戦略の構築方法を解説しています。市場機会の発見、価値提案の創造、ブランドエクイティの構築など、戦略的なマーケティング手法が紹介されています.
現代のマーケティングへの応用:
グローバル化が進む現代において、企業は国際市場での競争力を高めるための戦略を必要としています。この書籍は、国際的な視点からマーケティング戦略を考えるための重要なガイドとなります。これらの書籍は、フィリップ・コトラーのマーケティング理論を深く理解するための重要なリソースであり、現代のマーケティング活動においても多くの示唆を与えてくれます。
まとめ
これらの書籍は、マーケティングの理論と実践を学ぶ上で非常に重要であり、コトラーの理論を深く理解するための基礎となります。
マーケティングを学ぶ際には、これらの書籍を通じてコトラーの視点やアプローチを理解することは非常に基礎的で重要です。