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甘い関係 

店に行くと彼女は「いつものですね」ニコッと笑って、いつもの豆大福と草餅を包んでくれた。お金を渡しお釣りを受け取った。「ありがとうございます」マスク越しの彼女の笑顔が眩しかった。

地元の商店街の一角に、小さな老舗の和菓子屋さんがある。いつもお客で賑わう繁盛店で、ここの豆大福と草餅が大好きでトレーニング後のお楽しみに利用させてもらっていた。(もちろん粒あん)

和菓子屋というだけあって、来るお客も店員も高齢の方が多いのだが、その中に一人だけ一際若い綺麗な女性店員さんがいた。店主の娘さんかお嫁さんなのだろうと思っていたが、いつも笑顔で誰にでも接客をしていて好感が持てた。

売り場は高齢の女性と彼女が担当していて、どちらに当たるかは運次第なのだが、彼女に担当してもらう事も多かった。

最初は何気なく普通に通うくらいだったが、次第にオススメ商品を聞いたり、たわいも無い事を会話するようになった。まあ、自分はオッサンではあるものの、あの店舗の客層の中では比較的に若い方だし、トレーニングしてるし、比較的ライトなキャラなので話しやすかったかもしれない。

彼女は店の情報がインスタに出てたと言ってもピンときていなかったり、会話も丁寧でどこか古風なところがあったり、箱入りのお嬢様と言った感じだった。

ある日行った時は「おはようございます!」と元気に挨拶してくれた。今までそんな挨拶された事がなかったので、その挨拶に少し戸惑った自分に、振り返り壁の時計を確認しながら「まだ・・おはようございますで、いいですよね?」と笑った。それ以来、二人の挨拶はおはようございますになったのは言うまでもない。

買う順番を待っていると、接客している彼女がいた。チラッとみて自分の順番になるよう、少し急いで包装をして早口で前の客を終わらせて、自分の担当してくれたり、自分の担当にならない時も包んでくれてるおばちゃんの横から「お会計だけしますね」と手を伸ばしてきてくれたり健気なところもある可愛い子だった。

単なる仲良しかもだけど、きっと少しくらいは好意を持ってくれてるよね?毎週、彼女と会話するのが楽しみになっていた。

そんなある日、いつものように注文した商品を包んでくれ、お会計をしながら彼女がぽつり呟いた。「実は私、明日でここの仕事終わりなんですよ」「あっ、今度いらっしゃったら時に居なくても病気とかじゃ無いですからね。・・心配するかと思ったので・・」と、どこまでも可愛いのよ・・

話を聞くと、今は大学4年生で4月からはオーストラリアに行くという。仲良くなれて、楽しい時間を過ごせていただけに、ちょっとショックだった。

次の日の最終出勤日の日、いつも通りお店に行くと
彼女が居た、先に店内にはどれにしようと迷ってるお客数人居たが「お決まりのお客様、こちらはどうぞ」奥のレジに自分を誘導してくれた。

「いつものですね」ニコッと笑って商品を包んでくれた。いつもの豆大福と草餅を。「今日で最後なんです」と改めて話す彼女。知ってるよ、もちろん・・。すかさず彼女のために用意した花を渡した。朝、花屋で買った小さい花。彼女のイメージの黄色い花の入った花束だった。

少しビックリする彼女。「楽しい買い物させてくれてありがと。頑張ってね」と伝えると、ニッコリしていた。

「またどこかでね」
「はい、またどこかで」

笑顔の彼女が眩しくて可愛かった

連絡先を聞くとか一緒に写真撮るとか・・
あー、もう照れくさくてこれ以上は俺には無理ね。
お店を後にしましたよ。

でも22歳とはビックリだった。
落ち着いていたから、そんな若いと思ってなかった。

お名前だけでも聞いときたかったwざんねん。、

こうして彼女との「甘い関係」も幕を閉じました。
「いなくなっても来てくださいね」と彼女には言われたけど・・
この店に通うと彼女思い出して悲しくなるし
健康診断には向けて甘いもの減らして頑張ろうかな

甘い関係はひとまず終わった
ほろ苦い思い出を残して






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