#29 正夢

今回は2004年11月10日に発売されたスピッツの29thシングル『正夢』を見ていきたいと思います。


この曲のBメロからサビに入るところのメロディが最高なんです。
サビに向かってギアをグッと入れるような感じがして、その後の”どうか正夢~”のフレーズで「よっしゃ!」って感じになるんですよ。

ま、聴いてもらったら僕の言いたいことが少しはわかると思います。笑


あと、2番のサビでは

愛は必ず 最後に勝つだろう

というフレーズが出てきます。

もしかしたら予想がつく人もいるかもしれませんが、これはKANの『愛は勝つ』という曲の引用です。
なんでも草野さんがKANのボーカルの人の高校の後輩みたいで。

こういうのってなかなか面白いですね。



さて、この曲ですが、かなり切ない曲です。

情景描写は1番のAメロを見ていただければ十分かと思います。

ギリギリまで寝ていて…というよりも夢を見ていて遅刻しそう、という場面ですね。

そんなになるまで見ている”夢”って何でしょう?


というところでサビに入ると、”夢”の内容が”君”との妄想であることがわかると思います。

”浅いプールでじゃれる”というフレーズですが、これには「安定した」とか「危険のない」という意味合いが込められているのだと考えられます。


で、まぁ好きな人との幸せな時間を夢見ているわけですが、この一言でサビが終わります。

ずっと まともじゃないって わかってる


思えばAメロでも”冷たい風”を浴びて冷静に戻っていく様子が描かれていますね。

”僕”がなぜこのように思っているか、その理由が2番のAメロでわかります。



”僕”の妄想に出てくる好きな人…それは別れた彼女だったんだと。


恋愛以外で何かムシャクシャすることでもあったんですかね。
その態度を関係のない恋人にぶつけてしまうということは、親しくしていた期間もそれなりに長かった間柄なのでしょう。

ただ、そういうことが増えて、どんどん2人の関係に亀裂が入ってきて、どうにもならないところまで来てしまった。

”君”のことを好きな気持ちはあるのに、関係を終えざるを得なかった。


そんな”僕”のやりきれなさ、そしてできることならもう一度…という切ない思いが身に染みます。

だからこそ、もしやり直せるなら”浅いプールでじゃれるような”恋でいい、そういう恋がしたいと思っているのです。



これがまた切ないところなのですが、この曲はすべて”僕”の妄想の中の話であって、現実の世界に”君”は一度も出てきません。

そして、どれだけ願っても二度と”君”には会えないことも、叶わない夢ばかり見ている自分が”まともじゃない”ことも、”僕”はちゃんとわかっています。

だから”僕”は、いつもキラキラな夢の中へと逃げ込んでいくのです。

夢の中でだけは、いつも幸せでいられるから。


明るく、でもどこか切ないメロディがこの世界観をより際立たせてくれています。

MVはYouTubeで見れますし、サブスクでも聴けるのでぜひ。


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