#7 君が思い出になる前に
今回は1993年10月25日に発売されたスピッツの7thシングル『君が思い出になる前に』を見ていきたいと思います。
言ってみればこの曲がスピッツで初めてハネた楽曲ということになるでしょう。
いわくつきのベストアルバム『RECYCLE…』も、この曲が最初のトラックになっています。
内容としては曲名の通りです。
別れることになった男女ですが、別れが惜しくて「もう一度…」と願ってしまっている…という切ない曲になっています。
君が思い出になる前に もう一度笑ってみせて
優しいふりだっていいから 子供の目で僕を困らせて
というサビの歌詞に、なかなかサヨナラできない“僕”の弱さというか、諦めきれない気持ちが表れています。
ですが、よくよく歌詞を読んでみると、どうも別れを切り出したのは“僕”の方みたいです。
1番の歌詞を見てみると、船に乗るのは“僕”ですしね。
だから余計にサビの切なさというか、悪い言い方をすれば諦めの悪さが際立つのですが、2番を見れば「なぜ別れることになったのか」がだいたい想像できるはずです。
追い求めた影も光も 消え去り今はただ
君の耳と鼻の形が 愛しい
“光”だけでなく“影”も消えるというのが少々意味深ですし、別れたとはいえ諦めきれない彼女の“耳と鼻の形”だけしか思い浮かんでいないのは妙です。
そして決定的なのがBメロ。
忘れないで 二人重ねた日々は
この世に生きた意味を 越えていたことを
ここでようやく「死別」という状況がはっきりと思い浮かぶかと思います。
しかも、闘病の末…とかではなくて、おそらく突然の死だったのでしょう。
それが不慮の事故か、自殺なのか、そこまでは読み取れませんが。
だから諦めきれないのです。
“僕”にとって“君”の死は相当なショックだったに違いありません。
だから追い求めていた何もかもが“僕”から消えてしまったのかもしれないですし、“君”のことを断片的にしか思い出せないのかもしれません。
では、”船に乗る”というのはどういうことか?
確かに”僕”がどこかへ行くということではありますが、「ここからどこかへ行く」というよりは、「どこかからここへ戻ってくる」というのが正しいように思います。
もっと具体的に言うと、”君”が亡くなってからずっと入り浸っていた妄想の世界(あるいは無の世界)からそろそろ現実の世界へと戻ってこなくてはいけないのだ、という“僕”の気持ちの整理、決心を表しているフレーズなのではないかと思っています。
そして、最後に“僕”の記憶の中に残り続けるのは、あの日のように笑っている“君”であってほしい…そんな切なさが身に染みる一曲です。
MVはYouTubeで見れますし、サブスクでも聴けるのでぜひ。
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