#18 冷たい頬
今回は1998年3月18日に発売されたスピッツの18thシングル『冷たい頬』を見ていきたいと思います。
何と言ってもメロディが綺麗な曲です。
シャッフル再生にしていてこの曲のイントロが流れると「おっ」と思って、少しの間聴き入ってしまうんですよね。
それでじっと耳を傾けているところに一番最初に入ってくるフレーズが
「あなたのことを 深く愛せるかしら」
ですからね。もうこんなことされたらねぇ…
とんでもない曲を作ってくれちゃったもんですよ。
このフレーズ、僕はいつもこの曲が収録されているアルバム『フェイクファー』のジャケ写になっている女性に言われているような気持ちになりながら聴いています。
あの女性もまたそんな雰囲気を持っているんですよ。
ただ、出だしに満足して少し気を緩めながら聴いていると、だんだん「?」となってくるのがこの曲です。
この曲、ほとんどの動詞が過去形なんですね。
しかも、ただ事実を思い出しているというよりも、なんとなく後悔のようなニュアンスが混じっていることに気付いてもらえるかと思います。
一方で現在形なのは”染める”、”追いかけてく”、”眠り続ける”の3つ。
”染める”については過去のことをまるで今起こっていることかのように表すときに用いられる、いわば文法的な問題。
”眠り続ける”については、手帳の隅に書いたストーリーが勝手に消えることはないですから、現在形で当たり前です。
では、”追いかけてく”は?
この”追いかけてく”は、”僕”が今でも”君”のことを心のどこかで想い続けていることを表したものだと考えることができると思いませんか?
僕の解釈では、この曲は「フラれた彼女に執着し続ける男の歌」です。
逆に言うと、サヨナラしたはずなのに執着し続けているから、未だに手帳の隅のストーリーは消えずに残っているんですね。
戻って1番の歌詞。
あきらめかけた 楽しい架空の日々に
一度きりなら 届きそうな気がしてた
”一度きりなら”というワードに闇を感じますね。
おそらく”僕”には女性に執着する気質があって、それで今までたくさんの失恋をして、その度に後悔を重ねてきたんでしょう。
今回は初めていいところまでいってたみたいですが、性格はそう簡単には変わりませんしね。
そう考えると、あれほど絶賛していた出だしの歌詞も、本当はこんなセリフだったんじゃないかとは考えられませんか?
(今までのように)あなたのことを 深く愛せるかしら
おまけに有名な話をもう1つ。
最後の部分で出てくる”シロツメクサ”ですが、花言葉は「幸福」「約束」ときて、それから「私を思って」、最後に「復讐」。
去り際にこんなことを言っていると思ったら、ちょっとゾッとしませんか?
MVはYouTubeで見れますし、サブスクでも聴けるのでぜひ。