#3 魔女旅に出る
今回は1991年10月25日に発売されたスピッツの3rdシングル『魔女旅に出る』を見ていきたいと思います。
初期の楽曲の中でもけっこう名曲扱いされている曲です。
それは歌詞がいいのもあるでしょうし、将棋の藤井聡太七段が「一番好きな曲」と発言したことで改めて注目されるようになったというのもあるでしょう。
あとはメロディにオーケストラが参加していて、特に2番のサビ終わりから大サビにかけての長い間奏がたいへん豪勢です。
このシングルをきっかけにミニアルバム『オーロラになれなかった人のために』が作られた、という背景もあるみたいですね。
で、さっきも言ったように歌詞がいいんですよね~。
特に2番がいいです。
歪んだ鏡の向うに
忘れてた道がある
さあ まだらの靴を捨てて
諦めかけていたこと、目を背けていたこと…
一度は見るのをやめてしまった夢に向かって、「もう一度行ってみなよ」と言っているように優しく背中を押す感じがいいですね。
というか、全体的にこの曲は暖かくて優しいんですよ。
よくある応援ソングというと「オイがんばれよ!」「下向くな!上を向け!前を向け!」みたいな、本当に病んでいるときに聴いたらますます疲れちゃいそうな暑苦しいのも多いですよね。
でも、この曲はどちらかというと「僕がついてるよ」「見守っててあげるからね」っていう感じで、新しい挑戦をする人にしっかりと寄り添って安心させてあげるような曲なんです。
だから一番大事なサビの部分で
いつでもここにいるからね
という、「戻ってくる場所がある心強さ」を歌っているんだと思います。
ちなみに、「なんで“魔女”なの?」という疑問もあるかと思いますが、僕はこの曲を「親元から離れる娘に贈る歌」だととらえています。
“魔女”という言い回しも、ずいぶん手を焼かされたことに対する親しみを込めた呼び方のように感じたりもします。
“苺の味”というワードで嬉しくもあり、寂しくもあり…という甘酸っぱい心境を表現したり、“猫の顔でうたってやる”というところにいろんな感情を隠して送り出す側の切なさを感じたりもしますし。
まぁ恋人との前向きな別れとか、そっち方面で考えるのが王道のような気もしますが、僕にはこっちの解釈の方がスッと入ってきたので、いつもこの曲を聴くときにはこういう情景を思い浮かべながら聴いています。
MVはないですがサブスクで聴けるのでぜひ。