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残雪期登山の注意点は?雪崩は?どう行動すればいいかという話
やまにちは。赤い女ライダーまっつんです(@red_mattsun)
明日からGWですね(この文章を書いた当時)。
今年(2019年)は10連休!長期で山に入られる方や、残雪期の高山にチャレンジしようとされる方も多いのではないでしょうか。
今回は残雪期の登山で注意すべきリスクとは何か、またそういったリスクを回避するためにどういう行動をとればよいのか、と言う点に注目してお話ししてみようと思います。
春山・残雪期において雪崩れや落石に注意とはよく言われますが、実際どのように行動すればいいか?と言う点にも触れたいと思います。
想定している山行形態はロープを使わない一般登山道の残雪期の歩行、雪稜の歩行、雪渓内を歩行してのピークへのアプローチです
残雪期ってどんな時期?
GWの高山、3000m級の北アルプスや中央アルプスの多くは「残雪期」と言う時期に当たります。
残雪期は言葉の通り本格的な冬は終わっているが、雪が山に残っているという時期です。
残雪期と冬期の違いをいくつか上げてみます。
①安定した天候の日が多い
②冬と違いまとまった降雪は少ない(たまにある)
③朝晩は気温が下がり日中は気温が高くなりやすい
④気温が上がると雪がグズグズになる
⑤雪が解けていくため踏み抜きなどが多くなる
⑥降雪があると気温の高さから雪崩が起こりやすい
⑦雪解けに伴う落石が起こりやすい
残雪期は厳冬期とは全く気候が違い、条件が良ければ安定した状況で雪上歩行を楽しむことができます。
但し、残雪期の高山は天候が荒れれば冬のように吹雪や視界不良にも十分なりえます。
そのため、GW時期の残雪期の2500mの森林限界を超える山では冬山装備が基本です。
残雪期は天候は安定していますが、一方で高山ではいつ冬に逆戻りしてもおかしくない、季節の境目と言えるでしょう。
残雪期には雪だけじゃなく雨が降る!
また、冬とは違い残雪期には時期は雨も降ります。雨は雪よりも厄介です。
乾いた雪は装備をすぐに濡らすことはありませんが、雨は装備を濡らします。
冬よりは気温が高いとはいえ稜線付近は気温が低く、風が吹くことも多いです。濡れた装備は体温をジワジワ奪っていきます。
完全な冬装備であっも雨でベシャベシャになった雪を歩いていると色々なところが濡れてきます。
この時期に泊まりで山に入る場合、替えの靴下などの濡れ対策は厳冬期よりも重要かもしれません。
ザックの中での防寒具の濡れ対策も重要です。
残雪期は天候以外の条件の判断も重要
条件(コンディション)を読むことは登山技術の一つですが、
残雪期の天候は冬と違って安定しているので「天気を読む」という点での難易度はぐっと下がります。
急に大荒れになり、長期間天気が回復しない、なんてリスクは冬と比べるとかなり低くなります。
しっかり天気予報や現地で状況判断すれば比較的安全に雪山に入ることができます。
但し、天候以外に雪の状況が冬とは変わってくるということが言えます。
特に雪崩や落石には注意が必要ですし、雪庇の踏み抜き、雪ブロックの落下等にも注意しなければなりません。
残雪期の落石は氷や雪で固定されていた岩や浮石が気温の上昇・雪解けなどで支えを失い、落下することで良くおこります。
そのため、春山や残雪期の大規模崩落や落石は気温の上昇とともにリスクが上がります。
もろい岩場やルートを行く場合は気温の低いうちに突破する方がいいです。
大きな沢や雪渓を上り詰めるようなルートでは残雪期は常に落石に注意しなければなりませんし、
場合によっては危険個所は速やかに通過する必要があります。
雪渓内での落石は雪上を音もなく巨大な岩が滑り落ち、迫ってきます。
残雪期はこういったリスクも高くなります。
残雪期登山での行動の仕方
さて、ここまでは残雪期の山の状況についてです。
では実際に残雪期登山で、これらのことに注意して自分の安全を確保するためにはどう行動すればいいのでしょうか。
残雪期での落石・雪崩に注意した行動方法
残雪期で雪上を歩行する場合は常に上部を注意しましょう。
特に谷(ルンゼ)や沢を上り詰めるルートを歩く場合は落石には常に気を配るべきです。。
一般的に人気なのはの白馬大雪渓、針の木雪渓、涸沢や槍沢などが当たります。
自分の立っている場所の上部を見て落下物のフォールラインを意識しよう
岩は必ずフォールラインに向かって落ちてきます。
フォールラインとは斜面に置いたボールが一直線に転がっていく方向のことですが、
雪の上を滑り落ちる岩はフォールラインに沿って進みます。
雪崩も基本的にフォールラインに向かって進みます。
自分が上部の岩や落ちそうな雪庇など落下物になりうるもののフォールラインに入っていないか常に意識してください。
そしてフォールラインは集約されることも多いので、いくつかのフォールラインの行き着く先の集まったところはもっともリスクが高くなります。
ラインを簡単に見つけるには既に落下してきた岩が落ちている場所や、通り道だったり、雪崩の跡を見ると良いです。
常に安全地帯を確認・意識して行動しよう
逆に雪崩や落石が当たらない安全地帯も必ずあります。上部の状況を見ながら安全な場所を考えましょう。
落石も雪崩も要はくらわなければ良いわけで、ルートの中でどこが危険か、どこが安全か意識しながら行動します。
雪渓内などで、雪崩れや落石のリスクの上がる地点では常に上部を見て行動します。
もし危険なエリアが続きそうだったら下の方から安全地帯をいくつか確認しておき、
進むときは上からものが落ちてきないか注視しながら、危険個所はできるだけ速やかに通過して次の安全地帯に移動します。
休憩は必ず安全地帯内で行い、斜面の上の方を向いて何か落ちてこないか様子をうかがいながら休憩します。
運任せのリスク回避
霧などで視界が悪ければ目で見て危険を理解しての行動がとれなくなります。
そうすると一気にリスクを見極めることが難しくなります。
地形図などで危険個所を確認することもできますが、現場が見えないと正しく判断するのはなかなか難しいです。
そういった条件下では運に従う要素が多くなってしまいます。
危険な場所がルート上にある場合は、危険を回避をしながらピークを目指せるのか、判断するのは自分次第です・・。
腐った雪、落ちてはいけない場所での雪上歩行
残雪期の春山では雪がズブズブになり、アイゼンやピッケルが効かない条件があります。
ズブズブでどこまでも足場が崩れてしまうような雪などです。
そういった条件で落ちると、滑落停止などの技術を身に着けていて正しい体制をとっても停止できない場合があります。
腐った雪では、大した斜面でなければ自然に停止しますが、急な斜面では滑落停止が効かずずっと滑って行ってしまうことになります。
もちろん滑落しないことが一番重要ですが、ズブズブで支持力のない雪での急斜面は「絶対に滑落してはいけない条件」と言えます。
理由は停止できないからです。雪稜歩行ではこういったことがままあります。
残雪期の雪は朝と昼との気温の変化で硬さも全然違いますし、状況が変わります。
雪上歩行する中で自分がいる場所は落ちても何とかなりそうなのか、はたまた絶対に落ちてはいけない場所なのか、周りの状況をしっかり見ながら落ちてはいけない場所では特に集中して進みます。(もちろん落ちて大丈夫だからと言って気を抜くのはナンセンスですが・・)
また、自分の技量では厳しいと判断する場合は引き返したりロープを使ってもらって確保したりして、より安全に山行するためにベストな判断ができるようにします。
雪崩れや落石のリスクを回避したルートを行くという選択
春山や残雪期の北アルプスなどに「冬ではないから」と安易な気持ちで夏道と同ルートを行くということもよくありません。
と言うのも、夏道は雪崩などを考慮したルートではないことが多いです。
雪や天候が安定していればもちろんそれで良いのですが、GW前後などは時に冬の気候に逆戻りしたり、まとまった雪が降る場合もある時期です。
厳冬期であればそもそも雪崩が起こりそうな沢や谷の中を歩いたりトラバースするルートは極力避けますが、
残雪期であっても天候によってはそういった観点でルートを選ぶことが重要です。
どんな条件であっても同じように沢の中の夏道を歩くのは浅はかだと言えます。
もし予定していた日程の直前にまとまった降雪がありそうな場合や雪の状況に不安がある場合は、山荘や近くの山岳センターなどに問い合わせして、状況を聞くのも良いでしょう。
また、人気ルートであれば近くの山小屋の管理人が最適なルートをマーキングしてくれている場合もあります。
そういった情報も含め、入念な事前調査を行いましょう。
過去の同時期の記録や雪の状況など調べて判断材料にするのも良いと思います。
そうして、そのルートをこなせるか判断しましょう。もし危険だったら尾根を通るルートに変更するとか別の山に行くなど、視野を広げて山行を考えます。
日焼けに注意!残雪期に雪面に反射する紫外線は殺人的です
さて、最後に残雪期のリスクとして日焼けについてお話ししておきます。
残雪期では雪面からの照り返しによって、顔全体が日焼けしやすい時期です。
特に唇のように日焼け止めを塗りにくい場所はずる剥けになってしまうこともあります。
私は汁が出るくらい重症の日焼けを唇に負ったことがあります。
日焼け止めだけでなくネックゲイターなどで顔を保護し、サングラスなどで目を保護するようにしましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。残雪期の雪上歩行で注意すべき点についてお話ししました。
少しでも参考にしていただければと思います。
残雪期は意外と長いので楽しく安全に雪上歩行を楽しみたいですね。
何かリクエストがあれば記事や動画にしようと思いますのでツイッターなどからどうぞ!
あとがき
以前雪渓を歩いていたらスキーツアーの客を連れたガイドがものすごく危ないラインで(上部にまさに落下しそうな岩がたくさんあるような)普通に下を向いて休憩していて、頭を抱えたことがありました。見ているだけで冷や冷やしました・・。