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反応を探す朝

朝、スマホのアラームで起きる

通知に来ている世間のニュースや
友人たちの他愛のない日常報告で
布団をめくり上げるのが億劫になる

二度目の夢に惑わされそうになる自分を
アレクサが通知する2度目のアラームで
のそりのそりと静止する

自動で通知してくれる今日の天気と気温に
鬱々としながらもテキトウに歯磨きをして
ルーティーンのようにパンを焼く

ちなみにうちのパンは乳不使用の
タカキベーカリー製のパンだ

少し小さめ、だが割高だ

しかし、他の市販パンでは
フランスパンやバタールしか選べない私にとり
ふわふわのパンを食べたいなら
これを選ばざるを得ないのだ

そんな事情はおいておいて

パンが焼けるのを待つ間にTVを点けて
ワイドショーをぼぅっと眺める

あーあそこで家事が。
あの芸能人が捕まったか。

新しいパン屋さんがオープンか。
まぁ行けないけどさ、食えるもんないし。
と、いらん「反応」を口に出す。


セットしておいた洗濯物が終わる。
パンをオーツミルクで流し込み、
毎日の薬をラムネのようにバリボリと砕き
今度は珈琲で流し込んだなら、
せっせと洗濯物を干す。

今日は雨だとか、アレクサが言っていたけど
共働きのうちにはそんなことを気にしている
余裕などない、干すもんは干す。

じゃあなぜ朝イチで天気を流すのか。
「反応」で目を覚ますためだ。


洗濯物を干すと、目標の電車まであと20分。
10分で顔面洗浄から突貫工事までを済ます。

昨晩、散々メイク動画を見たくせに
いざその時になると、全く反映しないの
なぁぜなぁぜ?と自分に問いたくなるが
余裕のない朝と無駄な夜に癒やされている
OLの皆さんはきっと同じであろうと信じて
突貫工事はものの5分で終わる。

出掛けに仕事のSlackが来る。
今日やろうとしていたことの連絡が来る。
自分の仕事が移り変わっていく様感じる。
寂しい気分と反動の怒りで
反応を引き出されそうになる。
スマホの画面をオフってポッケにいれる。
イヤホンジャックをさす。

違う違う、
そうじゃ、そうじゃない。
自分にとっても好転なんだ、
新しいステージなんだ、
生きる場所が変わっただけなんだ、
否定されたわけじゃない。

マスクの裏で言い聞かせながら
耳に有線イヤホンをぶちこみ
自分を支配するための出勤行進曲
(梶浦由記リミックス)を
アマゾンミュージックで再生しようと
アプリを開こうとスマホの画面をONにする。

さっきのSlackに返信がついている。
出勤前なんだから見なくて良いのに『見る』。
もやり、がリフレイン。

鬱屈しながらX、Instagram、Threads。
同じ気持ちの人いない?
だれかこの気持ち分かち合えない?

または、自分より不幸な人いない?
称賛したくなる人でもいい。
その人を称賛している自分の姿が
なによりも自分を称賛されるべき人間と
勘違いできるようになるから。

反応できる人を
止まらないスクロールで探して
乗り換えの駅に到着して
スマホの画面をオフって。

電車を降りて、気がつく。
「なんのためにイヤホンさしたのよ」。

そんなことを繰り返しながら、
何者でもない人間の他愛もない朝に
特別である自分と錯覚したい通勤を
何も生産しないし何も前に進まない
ぼんやりとした日常の時間に乗って。
気力薄くオフィスビルに吸い込まれて。

行くのです。
そんな日々です。

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