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株式市場「強者」の論理(2007/6/19 中原圭介)

概要

金融・経営コンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」にてエコノミスト兼アドバイザーとして活動していた中原圭介さんが書いた本。

株式市場でのプレイヤーは、「強者である一部の大口投資家」と「弱者である大多数の小口投資家」の2つに大別され、マーケットのシステムでは、不公平さを放置したままで小口の弱者から大口の強者へと資金の集積が行われている。

その中でも個人投資家の大多数がマーケットに買いのエネルギーを供給し、大口投資家にその資金を奪われているといった不利な状況の中で、「マーケットの強者の論理」を知ることや、私たちが陥りやすい行動パターンを冷静に見つめ直すことで、個人投資家ひとりひとりがこの状況を打開できる方法が何かということについて綴られた一冊である。

目次


印象に残った内容

株式投資の成績は勉強した時間や知識の量には比例しない

実践で役に立つ知識と役に立たない知識をしっかりと分けて、役に立たない知識は全て捨て去るべき。

株式投資の成績は勉強した時間や知識の量には比例せず、逆に知識が増えすぎることで判断材料が多くなり、迷いが生じるようになる
  

外資系投資ファンドによる株価操作

①本当は売りたいとき
いったんは保有率を増加させることで、これからも買い続けると投資家に思わせる。
保有率増加が公表された翌日から売ってくるケースも。

②本当は買いたいとき
いったんは保有率を減少させることで、これからも売り続けると投資家に思わせる。
保有率増加が公表された翌日から買ってくるケースも。

③売り買いを繰り返したいとき
保有率の増加・現象を繰り返し、①と②のような売り買いで小まめに差益を得ているケースもある。
 

大口投資家は徐々に集め、一気に売る

保有率の高い株が業績の上方修正をして買いが集中するようになると、全株まとめて売ってくることも考えられる。
株価が出来高を伴って上昇しているときは、絶好の売る機会として捉えられている。

買うときは少しずつ買い集め、売るときは一気にまとめて売り尽くすケースが多い。
 

信用取引はリスク許容度を超えた売買はしない

不安定な市場で過度な信用買いをすることは自分で自分の首を絞めることになる。
最悪のケースに備えて、破産した時のシミュレーションを行ったほうが良い。

信用取引を使って良い時と使ってはダメなときを見極めることが大事。
自分の気持ちをコントロールできる売買を身に付けること。
 

過度な情報が根拠のない期待や自信を生む

投資家は自分の能力を実際以上に高く評価しがち。
多くの情報が自信を与え、その自信がかえって投資判断を誤らせてしまうことに繋がる。
現在所有している銘柄への根拠のない期待や多すぎる選択肢・情報には注意すること。
 

欧州投資家と北米投資家の違い

北米の投資家は買いも売りも一度決めたら徹底した行動を取るのが特徴。
そのためトレンドに与える影響も大きく、悪材料出尽くしと判断されれば上昇トレンドが生まれ、逆に本格的に売り始めたらトレンドの終わりが近づいていると考えられる。

一方で欧州の投資家は北米に比べて慎重な傾向。
ファンダメンタルズを中心にGDPや日銀短観などを分析してから行動を起こす。
北米が作ったトレンドを後追いすることもあるが、ファンダメンタルズが好調なら北米勢が売りに転じても買いを続ける傾向がある。

どちらにも言えるのは、外国人投資家はトレンドを見極めて投資をするため、そのトレンドを作り出すのも外国人投資家自身である。外国人が売れば株は下がり、外国人が買えば上がる。
  

勝ち組投資家の共通点

①少額の資金でスタートしている
②必ず1回か2回は大勝負をしている
③信用取引を積極的に利用している

資産を数十倍にするにはうまく上昇トレンドに出会う運も必要。
少額で始めて、数回の大勝負で勝つためには信用取引も活用
する。
 

勝負をするために必要なこと

大勝負をするためには必ず上昇トレンドで行うこと。
逃してしまった場合は次の上昇トレンドを待つしかない。
何よりも日経平均株価の上昇トレンドに乗ることが大事。

そのため、信用取引を行う際は、ボラティリティ(変動率)が高い新興市場の銘柄は避け、上場一部(プライム市場)銘柄に分散投資することが正解である。
 

信用取引を有効に使えるケース・使ってはいけないケース・注意点

【信用取引を有効に使えるケース】
① 中長期的な上昇トレンドのとき
② 中長期的なボックストレンドの下限に近いとき
③ 中長期的な下降トレンドが転換した直後

【信用取引を使ってはいけないケース】
① 中長期的な下降トレンドのとき
② 中長期的なボックストレンドの上限に近いとき
③ 中長期的な上昇トレンドが転換した直後
 
【大勝負するときの注意点】
① 資金がすべてなくなることも覚悟してやる
② 損切りラインは必ず決めておく
③ 1000万円以上の資金があるなら大勝負はしない
 

長期的な計画を立てれば、資金を数十倍にするのは決して夢ではない!

1年、2年といった短期的に資産を増やそうとするのではなく、複利を使って長期的・継続的に資産を増やすことができれば、十倍、数十倍という目標も夢ではない。
 

参考URL一覧

【大口投資家の売買動向の調査】:EDINET

【外国人投資家の売買動向の調査】:日本取引所グループ

 

感想まとめ

中原圭介さんの本にも書かれている通り、我々個人投資家は大口投資家と比較しても扱う資産が桁違いであり、情報量も限られていることから基本的には不利な立場に置かれていると思います。

一方で個人投資家のメリットを強いて言うならば、意思決定が早く、資金も小さなうちは売買による乗り降りがしやすいことだと考えています。

そのようなメリットを活かして資産を増やすには、中原さんが仰る通り、いかに上昇相場でボラティリティが少ない銘柄に分散投資を行ってリスクを減らしながらも、信用取引を駆使しながら大勝負に出て勝ちを収めるかといったことになります。

自分の実力を過信し過ぎて一発退場するといった悲しい結果を生まないためにも、これからも過去の市場の動きやデータを自己分析した上で、次の上昇相場でテーマとなり得る株を発掘するための目をコツコツと養うことによって、勝負の時が来た際には大きな勝利を収められたらと思います。 

URL(Amazon)


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