#2 アクタースクールで出会った男
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学生時代、アクタースクールに通っていた話。
学生時代にアクタースクールに通い始める
アクタースクールには入会金が必要だった。
学生の身分ではかなり厳しい価格帯だったが、バイトしてお金を貯め
入会をした。
アクタースクールにもいろいろ種類があるのだけどそのアクタースクールは撮影所お抱えの事務所になっていて、低価格の賃金でいわゆる仕出し・端役を貸し出す事務所だったため、研究生として沢山の作品にエキストラ的に出演させてもらっていた。
アクタースクールに所属するメンズ
当たり前と言えば当たり前だが
アクタースクールや役者の事務所に所属している男性たちは
当時、一般的に見かける学生やサラリーマンと段違いに魅力的な風貌だった。(現在より男性は見た目にこだわる人が少なかった)
顔が整っている、という事だけでは説明が出来ない魅力もあった。
私は、この事務所に所属している同じ年の藤黄と同じ道を目指す仲間として出会った。
藤黄は10代にしては20代後半に見られるほど落ち着いた雰囲気と
やはり10代特有のやんちゃな素顔があり、撮影所のスタッフや事務所の所属俳優から可愛がられていた。
夢を語られる
撮影所では毎日、様々なドラマが撮影されていた。
いわゆる大御所や今を時めく俳優(当時)が沢山のスタッフに囲まれ
ライトを浴びている。
私たち端役・エキストラは出番があるまで、セットの端にわやわやと固まって静かにスタンバイしているのだ。
藤黄と私は同じ18歳ということもあり、同じ現場の時はたいてい並んで待ち時間をすごしていた。
普通の学生やサラリーマンからは発せられないような
ギラギラしたオーラのようなものをまとった藤黄の目は
いつも煌めくライトの真ん中にいるスターから離れない。
私は藤黄の口からささやきのように洩れる言葉を
聞き洩らさないように体を寄せる。
『いつか、俺があそこに行くから。その時は月白、お前も呼ぶからな』
夢を語られる経験なんて皆無だった10代の小娘は、いちころだった。
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