ビジネスカンパニーのカスタマーサクセス対談<後編>〜サクセスに必要なスキルやキャリアについて聞いてきた〜
(本記事は、2022年12月にインタビューした内容をもとに編集しています。)
こんにちは!マネーフォワード ビジネスカンパニー(MFBC)の塩原です。
「教えて!マネーフォワードで働くリアル」シリーズでは、MFBCで働く人たちが、実際にどんな思いで仕事をしているのかを、インタビューから探っていきます。
今回は、MFBCにおける「カスタマーサクセス」を徹底解剖。部門横断でのカスタマーサクセスの取り組みに関わった、辻吏香さんと山口絢子さんにインタビューしました。
(前編では、横断プロジェクトについて聞きました!)
後編となる本noteでは、MFBCでカスタマーサクセスとして活躍する二人が考える「カスタマーサクセスのスキルとキャリア」について、インタビューしていきます!
カスタマーサクセスの仕事に必要なマインド
―まずは、MFBCのカスタマーサクセスとして働くときに、必要となる基本のマインドについて、教えてください。
山口:カスタマーサクセスはお客様が気づいていない課題を深掘りし、実情を理解した上で改善策の提案や回避策を考えていく仕事です。そのため、まずは業務の知識(ドメイン知識)が必要になります。私の所属するHRソリューション本部でのお客様は人事労務の方が多いので、人事労務に関連する専門知識が必要です。
なので、お客様の担当者以上にその業務領域に詳しくなる!くらいの、業務知識をキャッチアップしようとするマインドは必須になります。
そして、SaaSプロダクトを扱っているので、システムにアレルギーがなく、ITリテラシーがあることがベースになります。データをもとにお客様の先回りをしてアプローチすることもあるので、データをきちんと読み解くデータドリブンな部分も必要です。
―そのほかにはありますか?
辻:カスタマーサクセスでは、多種多様なお客様を同時並行で数多くサポートします。お客様それぞれで置かれている立場、求めていることや考えていることは違うので、全てのお客様に対して全く同じ対応や回答をすることは基本的にできません。
たとえば、新しく実装された機能をご案内する際、すでに課題を認識されているお客様にはすぐにご案内して使っていただく一方、「こんな課題はありませんか?」という投げかけから機能説明を行って使っていただくお客様もいます。ですので、情熱をもってお客様のことを考え抜くマインドが重要だと思っています。
また、MFBCではHRや経費といった、領域ごとに束ねたいくつかの本部それぞれにカスタマーサクセスのチームがあるので、各チームの施策が、横断的に見た時にお客様の体験を損ねないかを意識する必要があります。「マネーフォワードのカスタマーサクセスは、1つのチーム」という意識をもって、本部横断で一緒に施策を進めて改善し、PDCAを泥臭く回していくというマインドセットが大事です。
塩原:前編でも伺いましたが、本部を横断したカスタマーサクセス同士の連携は増えてきていますよね。
山口:「このお客様はこの部分の運用を検討されています」「(HRの)ミーティングで出た質問が経費本部のプロダクトのことなので共有しておきます」という感じで、日々情報連携しています。
また、プロダクトの支援内容を変えるときには他本部にも共有し、違和感のないコミュニケーションが取れるように心がけています。
塩原:そのほかにも、心がけていることはありますか?
辻:カスタマーサクセスは稼働後に末長くお客様とお付き合いしていくので、「お客様と自分」という関係性ではなく、「お客様とマネーフォワード」の関係性を築いていく意識が重要です。
最初は、もちろん「お客様に自分を好きになってもらう」という入りでいいと思うんです。でもその考え方だけしか持っていないと、軽い気持ちで無理な要望にも応えようとしてしまい、結果的に担当者変更の際にトラブルにつながったり、お客様にご迷惑をおかけすることにもつながりかねません。
そうならないために、自分ごととして捉えつつも、高い視座ももってビジネスパートナーとしてお客様と接していく意識が大切なんです。
カスタマーサクセスの機能・役割
―カスタマーサクセスのチームの中には、どんな役割があるのでしょうか?
辻:まず、カスタマーサクセスがお客様と関わるフェーズは、主にプロダクトの導入を支援する「オンボーディング」と「稼働後」です。
そして、カスタマーサクセスの役割は大きく、ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチ、Opsに分類されます。
塩原:なるほど、2つの「フェーズ」と4つの「機能」のマッピングで考えればいいんですね。
辻:まずは、「オンボーディング」における役割ですが、以下のイメージです。
ハイタッチ:定期ミーティングをしながら、お客様を1対1でフォロー
ロータッチ:1対n社で集合研修をしたり、メールでのやり取りなどを通じて導入をフォロー
テックタッチ:eラーニング(クラウドスタディ)や動画などのテクノロジーを利用して、ハイタッチとロータッチを支える
Ops:プロダクトの利用実績やGoogleアナリティクスの分析などデータなどを活用して、カスタマーサクセスの業務を最適化
このように4つの役割があり、メンバーによっては複数の役割を兼ねています。
辻:次に「稼働後」ですが、ここはこれから整備していくところで、現状はハイタッチがメインですが、その他の機能も少しずつ取り組み始めています。
ハイタッチ:お客様と定期的にミーティングをしながら活用促進をフォロー。診断レポートを用いて現状の活用度合いを可視化することで、「意外と使いこなせているんだな」とお客様に愛着をもっていただけることも
ロータッチ:新機能の紹介や、法改正の基礎知識、組織改変など特定のテーマで、複数社向けのウェビナーを定期開催
テックタッチ:接客ツールを活用して製品内で新機能リリースのお知らせや利活用を促進
Ops:プロダクトの利用実績やGoogleアナリティクスの分析などデータなどを活用して、カスタマーサクセスの業務を最適化
ロータッチとテックタッチ、Opsの部分は、今後より強化していく予定で、例えばロータッチでは集合型の追加導入講座、テックタッチでは特定の動作をしたり画面を開いたお客様に対して上位プランにあげていただく提案もしていきたいと思っています。
各機能で求められるスキル
―ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチ、Opsそれぞれの役割で、どのようなスキルが必要になるのでしょうか?
山口:ハイタッチはお客さまとの1対1で対応するので、折衝力やコミュニケーション力が必要です。さらに、課題を見つけ引き出していくコンサルティング力が必要です。
ロータッチは、メールでのコミュニケーションが多いので、文章で適切に伝えて、お客様から情報を引き出す力が必要となります。また対応する社数がハイタッチの3倍ほどと多いので、優先順位をつける力が求められます。
テックタッチは、e-ラーニング(クラウドスタディ)や動画といったコンテンツを制作するため、製品の最新情報やお客様が必要とされている情報を先回りして把握し、適切なタイミング・適切な手法でお客様に届ける企画をスピード感を持って実現する力が必要です。
Opsは開発側とのコミュニケーションが必要で、情報をどう取り出してアウトプットするかを考える仕事なので、データ関連の知識が必要とされます。
―ロータッチでは「優先順位をつける力が必要」とのことでしたが、普段どのように業務の優先順位をつけていますか?
辻:優先順位は基本的に、受注金額の高さではなく、緊急度の高さが大事になると考えています。
例えば、「新機能に関するお問合せ」と「支払処理に関するお問合せ」のお問合せが同時にきたら、後者の支払い関連の方が、何か重大なことが起きているのかもしれないと推測できますよね。
緊急度が高い問合せの対応が遅れると、その後のリカバリーが大変なことも多くあります。こうした危機察知能力は、カスタマーサクセスとして経験を積むことで、身につけるスキルです。
また、オンボーディング中より稼働後の方が、お客様の実業務に与える影響が大きくなる傾向にあるので、より注意が必要です。
塩原:たしかに、そこの優先順位の判断を誤って後回しの対応にしてしまうと、あとでリカバリのための大プロジェクトになる可能性もありますね。サクセスチームの日々の判断が、それを防いでいるんですね。
―では、THE MODEL型の組織の中で、カスタマーサクセスはどのような役割なのでしょうか?
山口:カスタマーサクセスの仕事の大きな特徴は、マーケティングやセールスといったビジネスサイド、また開発サイドのすべての部署と関わりながら進めることです。
さらに、カスタマーサクセスはお客様と近い位置にいるので、このプロダクトはどんな層をターゲットとした戦略で進めていくべきか、お客様にどんな価値提供をするべきなのか、などを肌で感じられるポジションです。なので、事業戦略への提案を行うこともあります。
例えば最近では、「ターゲットとなるお客様の変化」について、サクセスチームから関連部署に共有しました。
マーケット全体の認識では、今も勤怠管理を紙やエクセル、タイムカードで行っている会社も多く、人事労務管理領域のDX推進はまだ白地が大きい。今は、競合他社も一緒になってとにかくクラウドサービスを利用する層を広げていくようなフェーズと捉えています。
ただ、カスタマーサクセスとしてお客様とコミュニケーションしていると、すでに他社のシステムを使っているお客様も増えてきており、当社のターゲットとしても新規導入だけでなく、他社からのリプレースの割合が増えることを見込んで営業やカスタマーサクセスの戦略を先手を打って検討していくことが大切と感じたりするんです。
さらに、マーケットにクラウドサービスが浸透してきたことで、ITに明るくないお客様が「クラウドサービスに挑戦しよう」と一念発起して導入いただく割合が増えてきていることも肌で感じています。
こんな風に、サクセスとして感じた「顧客層の変化」を、セールスやマーケティングに伝えることで、全体の戦略を調整していくということもあります。
また、開発サイドには、「この機能追加の優先順位を上げたほうがいい」「この機能を追加するなら、セットでこの機能も入れないと使われないと思う」などと伝えることもあります。
業務として橋渡し的な役割をしているカスタマーサクセスですが、今後は予言者のような役割になっていくといいのかなと、最近感じています。
カスタマーサクセスは、どんなキャリアを歩むのか
―ここからは「サクセスのキャリア」について伺います。MFBCのカスタマーサクセスのメンバーは、どんな前職をもつ人が多いですか?
辻:本部によって違いがあり、経費本部の場合は、SIer出身者やSNSコンサル、営業や経理経験者などさまざまなタイプの人がいます。
山口:HRソリューション本部は扱っているプロダクト数が多いこともあり、人事労務系のドメイン知識をお持ちの方が多く集まっています。前職では、人事・労務経験者、BPO会社で人事労務や給与計算の業務を代行していたメンバーなどがいます。
―MFBCのカスタマーサクセスでは、どんなキャリアパスを描けますか?
辻:現状でいえば、ロータッチを経験してからハイタッチをしていくキャリアの流れが多いです。ただ、私自身は逆の流れもいいのではないかと思っています。
塩原:ハイタッチを経験してからロータッチにいくのがいいのではないかということですね。
辻:はい、なぜかというと、ロータッチの業務に必要な「1対nに響くことを考える力」はすぐには身につかないと感じているからです。ロータッチのコミュニケーションでは、
どんなコンテンツが大多数のお客様に響くのか
1対nでも自分ごとだと感じてもらえる話し方、情報の出し方はどうあるべきか
こんな風に、マーケティングに似た発想が大事になってきます。そのため、まずハイタッチでお客様と1対1のやり取りを経験して、自分の引き出しを増やすことが有効なんではないかと思うんです。
また、ハイタッチから始めて、データが好きな人はOpsに進むという選択肢もあると思います。Opsはお客様の活用状況を図る「ヘルススコア」の設計をハイタッチ、ロータッチのメンバーと一緒に進めていくので、実務を誰よりわかっている必要があると考えるからです。
山口:HRソリューション本部の場合は、「ロータッチからハイタッチに行きたい、テックタッチに行きたい」と考えている人は意外と少ないかもしれないです。
「人をまとめる力を伸ばしたいから、ハイタッチのメンバーからリーダーを目指す」というキャリアパスがあったり。さまざまな施策を企画して進めたい人は、肩書はメンバーのまま、プロジェクトのリーダーをひたすらやっていくこともあります。
また、お客様への価値提供への考え方が、メンバー一人ひとり違うのも面白いところです。Aさんは「自分自身がお客様と相対して価値提供をしたい」と思っている。Bさんは「自分一人が向き合えるお客様の数には限界があるから、テックタッチの役割になり、間接的により多くのお客様に価値提供したい」と考えている。
ロータッチやハイタッチの仕事を経験してカスタマーサクセスやお客様への理解が深まった結果、メンバー各々が自分の軸を見つけて、さまざまな進路に羽ばたいています。同じチームで同じ仕事をしていても、それぞれ目指す方向が違うのが面白いです。
塩原:辻さんのように、カスタマーサクセスの枠を超えて、PdMとして活躍している方も多いですよね!
(石塚さんや中西さんも、サクセスの経験を活かして今はPdMとして活躍中です)
MFBCのカスタマーサクセスの特徴
―MFBCでカスタマーサクセスとして働くことの魅力を教えてください。
山口:マネーフォワードはカスタマーサクセスの歴史が比較的長く、基盤があります。そのうえで、カスタマーサクセスはどう価値提供していくべきかを考えることにアクセルを踏んでいるので、面白い環境だと思います。
また、全社での規模としては大企業に近づきつつある一方で、本部単位では100名ほどの組織なので、ベンチャーのようなスピード感があって身軽に動けるのもいいところです。
辻:カスタマーサクセスを大事にしていこうと考えている企業はたくさんあり、既に体制ができあがっているところもあります。その点、マネフォの場合は、もちろん経営陣も含めてカスタマーサクセスが大事だというスタンスとしての基盤はありつつも、その進め方についてはまだ完成形ではなくて、試行錯誤していける段階です。
ですので、固まった枠の中でまわしていくだけでなく、これから自分たちで体制や仕組み化を検討していけるフェーズだということが醍醐味かなと思います。
―どんな人と一緒に働きたいですか?
辻:会社として大事にしているVALUEのひとつに「User Focus」があります。このカルチャーはカスタマーサクセスとして仕事をする上で、一番大事な精神であり核になります。
私たちのお客様は、企業のバックオフィスの方々です。そんな方々と「しっかり向き合いたい、笑顔になってほしい」という想いをもった人に来ていただきたいです。
山口:「企業のバックオフィスを改革したい」「業務から紙をなくしてやる!」などの強いこだわりや想いを持ちつつ、データを分析するデータドリブンの視点も併せ持つような方に来ていただきたいです。
私と辻さんもそんなタイプなので、ぜひ一緒にスピード感をもって進めていきましょう!
–編集後記
前編-後編の2本で公開したインタビュー、いかがでしたでしょうか?
「カスタマーサクセス」と一口に言っても、その中には色々な役割や機能があり、それぞれに必要なスキルも幅広いことがわかりました。
マネーフォワードビジネスカンパニー(MFBC)では、「ビジネスを前へ。働く人をもっと前へ。」というミッションを掲げています。そして、「マネーフォワード クラウド」を導入いただいたユーザー企業のみなさまの「ビジネスを前へ。働く人をもっと前へ。」のご支援をお客様に一番近いところでしているのが、カスタマーサクセスチームであり、カスタマーサポートチームです。
MFBCのカスタマーサクセスにご興味を持った方がいらっしゃれば、ぜひお問い合わせください!