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PTA活動は“非常識”? まともな企業と比べてみる

PTA役員の勧誘は大変です。ひと昔・ふた昔前より共働きの人も増えており、多忙を理由に断られることも多いでしょう。
勧誘する側は「そんなこと言ったって、誰かがやらなくちゃいけないのに・・・」と思われるかもしれませんが、他に大切にしたいことがある人や生活をかけて働いている人もいるわけで、大半の人にとっては知ったことではありません。

「できる範囲でいいんです」などのほぼ嘘みたいな甘い言葉や、泣き落としなどのテクニックに走る前に、まずPTA側が、他の保護者から見て「やってもいいな」と思われる組織に「なる」必要があるのです。

企業の採用活動で無理強いして、飾り立てて無理やり入ってもらったところで、離職率が高かったり、病む人が増えるだけでしょう。素敵な企業の採用活動を参考に、「一緒に働きたい」と思われる組織になっていく姿勢が必要だと思います。

というわけで、今回は「素敵な企業」と比較した「PTA役員の勧誘」の非常識の例を挙げてみたいと思います。

「ミッション・ビジョン・大切にしたいもの」が「子どもの笑顔」以外ない

何のためにPTA組織があり、なぜその仕事があるでしょうか。
本来学校・園・現PTA役員はその理由を矛盾なく説明できるでしょうか。

例えば「PTAのイベントの収益を、学校の教育設備に寄附する」というプロジェクトがあるとして、「では同額の寄付が集まるようにします」という代案は通るのでしょうか?
たいていは「いや、それは・・・」「前例が・・・」という答えになるのではないでしょうか。
大切にしたい価値観、体験、状態というのは何なのか、多くの人が共感できる「大義」が必要です。それが「笑顔のために」とか「前例だから」という理由では、ビジネス社会でまともな判断をしてきた人であればあるほど納得いきません。

「子どもたちの笑顔のために」と連呼する人もいますが、PTA役員をマジメにやると、たいていは各家庭の子どもの笑顔は(少なくとも役員の活動をしている間は)犠牲になります。それを乗り越えられる勇気をくれる、「理想の状態」を一緒に作りたい、と思わせるものが必要でしょう。

仕事の内容やかかる時間が不明確

PTAの勧誘時にはよく「やれる範囲でやればいいんです、誰でもできます」などと言われるようですが、本当でしょうか。
「私がPTAに割ける時間は月に1時間だけ、しかも在宅作業でもいいですか?」と聞かれて、「はい、大丈夫です。もしそうでなかった場合は私が責任をもって残りの仕事を引き受けます。」と書面・捺印つきで回答できますか?
各役職ごとにどの時期に何にどれだけの時間がかかっているのか、具体的な内容と数字のを可視化し、そのうち不要なものはなくしたうえで引き継ぐという姿勢が必要です。

※業務時間の計測には「Hours」などの作業時間管理アプリが便利です。

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(c)Hours

次年度のスカウトに向けてまずはPTA業務にどれだけ時間がかかっているのか、会議、自宅作業も含め計測することから始めてはいかがでしょうか。
参考:とある会計監査職の毎月の稼働時間とは?(後日公開)

ロジカルな判断が必ずしも尊重されない

まともな企業であれば、「売り上げがコストより低い」「業務のためのリソースが足りない」となると、対策を練るものですが、PTAではなぜか前例が尊重され、ロジカルな判断が尊重されないことがあります。
もちろん、裏側に様々な事情があってのことかもしれませんが、まずは「困っていること」を提示して、それに対して妥協点を探り合う、という対話がなされないことが多く、問題発見力・課題解決力の高い人であればあるほどやる気を失うという環境になりかねません。

コスト感覚がない

「所詮主婦の労働はタダ」などと思っている人たちにとっては、母親がPTA活動に何時間かけようとまったく意に介しません。
しかし最低賃金で働いていると仮定しても、もし働いていれば月に5~6万円分くらいの労働になるかもしれません。
“ボランティアをやってもいいと思ってくれるような貴重な人材”の時間を、社会に必要とされている労働や他のボランティアにまわしたときの社会へのインパクトを考えると、「PTA活動は割に合わない」と思われて当然です。

対面による会議はそもそも必要なのか。紙のお知らせは必要なのか。そもそもこのイベントや作業って必要なのか・・・。
組織のミッションと、各プロジェクトの「目的」を照らし合わせた時に、手段は複数あるはずなのです。

コンプライアンス意識がない


コンプライアンスとは、法令や規則、組織倫理などのことです。
「ここではコンプライアンスが守られてる」と感じられることが従業員にとって大きな安心材料となり、継続率や採用に影響するのと同じように、PTA活動にもコンプライアンス遵守の意識が大切です。
保護者の中にも、コンプライアンス意識がある人とない人の差はあるかもしれませんが、少なくとも多くの人や子どもを巻き込む立場である役員には、コンプライアンス遵守の意識がほしいところですし、もしコンプライアンスについての知識がなさそうなら、説明の機会を持ち、同意したうえでの就任であるべきです。

例)
・入会の意図確認をせず、会費の徴収を給食費とともに行う
・役員・委員が決まるまで部屋を施錠し監禁に近い状態にする
・会費の使い込み、不適切な流用
・パワハラ、セクハラ、恫喝
・個人情報保護法違反
・食品衛生法や消防法など、イベントに必要な法律を遵守しない
・ステークホルダーへのアカウンタビリティ(関係者への説明責任)
などは起こっていませんか。

社会の構成員としてコンプライアンスが守られていない組織で、なぜ時間を割いてボランティアをしたいと思えるでしょうか。

IT・電子化を嫌悪

「業務効率化のために連絡はメールやオンラインツールでやりませんか」と提言すると、「スマホを持っていない人だっているゥゥゥ!」「パソコンが使えるからって偉そうにしてェェェ!」と立腹する人もいます。
一部の人がスマホを持っていないのであれば、無視するのではなく、その人々に配慮し代替手段があればいいだけなのです。
環境のこと、エネルギー、テクノロジーなどの変化はめざましいのです。30年後の子どもの未来を考えたときに、大半の保護者が利用しているツールすら導入できない大人に育てられ、果たして未来を切り開けるのでしょうか。「どちらも使える状態にしておき、必要に応じて使い分ける」という状態になっておくことが、「教育的」なんではないでしょうか。

男尊女卑

「男の人は立てなくちゃ!」と、男性相手だからと言ってあきらかな忖度・過剰な気遣い・女性にはない待遇をしたり、「女性はおとなしく男の言うことを聞け」と口に出しちゃうような学校・園・PTA組織もいまだにあるようですが、上場企業でそんな発言をしようもんなら、録音・公開されて炎上しかねない案件です。地方では根強い男尊女卑の考え方ですが、世界的に見ると時代遅れなのです。

国連サミットで採択された「SDGs」(※)の目標の5番目は、「ジェンダー平等」です。(日本も国としてSDGsを進めています)

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※2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標。URL

日本の古い組織にはびこる男尊女卑は、女性にとってマイナスなだけでなく、男性が忖度され甘やかされることで、本来伸びるはずだった男性の能力も損っているのです。男尊女卑をしている本人たちに自覚はないかもしれませんが、「会長の性別は●●、役員や委員の性別は●●であるべき」という性別による制限があるのであれば、そこから見直してもいいかもしれません。

男尊女卑をする保護者の背中を見て、世界に通用する常識が果たして身につくのでしょうか。

エスカレーション先がない

まともな企業では、セクハラやパワハラ、不正があったときには、直属の上司に相談をするでしょう。上司自身が問題な場合も、その上の役職がありますし、そもそも上の役職に問題がある場合も、労働組合やユニオン、コンプライアンス窓口などに相談したり通報したりが可能です。
最悪マスコミへのタレコミも可能です。
雇用されていれば、労働時間などは労働基準法に定められています。しかしPTA活動においてはどんなに不条理な人がいようとも、「子どもたちのためでしょ」と、子どもを人質に取られた背景から自分たちで解決することが求められがちです。
※スクールカウンセラーが配置されている学校では相談可能な場合があります。心が参っている場合は、まずは話を聞いてもらってもいいかもしれません。

「運によっては非常に倫理的に問題のある人がいるかもしれないのに、相談先もなく、月に何時間も何をするかわからないボランティア、だけど途中でやめられない」って、一般社会では淘汰されるでしょう。
せめて学校・園の窓口が、中立的かつ、効果的・建設的な助言やサポートをしてくれる人であることが必要です。

歯車扱い

「業務は誰でもできるようなことです。ただし月に数十時間くらい取られるけど。あ、ちなみに給料はナシね」と企業の採用面接の際に言われて、「それなら私にぜひ!」と積極的に思える人っているでしょうか。
ただの歯車ではなく、自分のスキルや得意なことを活かせる機会、自分の裁量がどれだけあるのかが明示されていると、「なんか楽しそう」「チャレンジしてみたい」と思えるかもしれません。大義なき前例主義の歯車になれ、というのは、奴隷労働または虐待の連鎖だと思います。


長々と話してしまいましたが、上記のような「問題点」がある状態に目をつぶったまま、勧誘を進めるのはもはや「虐待の連鎖」です。

「友達・仲間ができる」「園の教育方針がわかる」「子どもの様子がわかる」などの言葉で勧誘する人も多いようですが、もし本当にそれらが上記の問題点を打ち消すほど魅力的なら複数年連続でやる人ばかりで、スカウトに苦労するはずがないのです。

次年度のスカウトの前に、上記のような問題点があるなら、一つでも改善する努力をしてもらいたいところです。

サムネイル画像:photo-ac

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