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ドナルド・トランプが大統領になった今、読むべき本を紹介!『民主主義の壊れ方』
こんにちは!
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ドナルド・トランプが大統領になった今、読むべき本を紹介します!
いま世界ではポピュリズムの隆盛、政治の分極化、ソーシャルメディアを通じた情報操作など、民主主義の土台を揺るがす様々な要因が指摘されています。
しかし、現代の民主主義は、かつてのようなクーデターや暴力革命によって崩壊するのではなく、もっと静かに、そして気づかぬうちにその命脈を絶たれる可能性があるのかもしれません。
イギリスの政治学者デイヴィッド・ランシマンは、著書『民主主義の壊れ方』の中で、まさにそのような警鐘を鳴らしています。
彼は、20世紀的な民主主義崩壊論にとらわれず、現代社会特有の要因に着目することで、これまでとは異なる民主主義の終焉シナリオを提示しています。
この記事では、ランシマンの論考を辿りながら、現代民主主義に迫る危機とその行方、そして私たちにできることを考えていきます。
デイヴィッド・ランシマンと『民主主義の壊れ方』
デイヴィッド・ランシマンは、ケンブリッジ大学で政治学を教える教授であり、政治思想史や現代政治に関する著書を多数執筆しています。
彼はまた、ポッドキャスト「Talking Politics」のホストも務め、政治や時事問題について幅広い媒体で発信を続けています。
2018年に出版された『民主主義の壊れ方』は、現代民主主義が直面する危機を分析し、大きな反響を呼びました。
ランシマンの主張で特徴的なのは、従来の民主主義崩壊論とは一線を画す点にあります。
過去の事例では、クーデターや暴力革命、あるいは全体主義の台頭といった劇的な変化によって民主主義体制が崩壊してきました。
しかし、ランシマンは、現代の民主主義は、そのような目に見える形で崩壊するのではなく、もっと静かで気づきにくい形で終焉を迎える可能性が高いと指摘しています。
現代民主主義への脅威
ランシマンは、現代民主主義に対する脅威として、以下の3つの要素を挙げています。
1. 政治の硬直化
現代社会は、豊かで高齢化が進み、ネットワーク化が進んでいます。
これらの要因は、社会の安定に貢献する一方で、政治の硬直化を招き、民主主義の柔軟性を奪う可能性があります。いまの日本がまさにそうですね。
ランシマンは、過去のクーデターのような劇的な変化ではなく、既存の政治体制が徐々に形骸化していく「静かなクーデター」や、政治家が民主主義の原則を無視して権力を掌握する「エグゼクティブ・アグランダイズメント」 などの危険性を指摘しています。
クーデターは、かつてのように軍部が武力によって政権を奪取するとは限りません。
現代においては、選挙で選ばれた指導者が、民主主義のルールを巧妙に利用しながら、権力を強化し、反対勢力を排除していく可能性があります。
ハンガリーのオルバーン首相やロシアのプーチン大統領などは、その典型的な例と言えるでしょう。
彼らは、民主的な手続きを踏む一方で、メディアの統制や司法の独立性侵害などを通じて、自らの権力基盤を固め、民主主義を形骸化させています。
また、経済のグローバル化や新自由主義の台頭は、国家の役割を縮小させ、市場メカニズムを重視する傾向を強めてきました。
その結果、労働組合などの市民社会組織が弱体化し、経済格差が拡大することで、民主主義の基盤となる社会の連帯が損なわれています。
さらに、ギリシャの財政危機における「トロイカ」(国際通貨基金、欧州中央銀行、欧州委員会)による介入は、「静かなクーデター」の一例と言えるでしょう。
ギリシャ政府は、財政再建のために、トロイカの要求に従って緊縮財政政策を導入せざるを得なくなりましたが、その結果、国民生活は困窮し、民主主義的なプロセスが軽視されました。
2. 危機への無関心
現代社会は、核戦争や環境破壊、全体主義の台頭など、文明を崩壊させる可能性のある様々な危機に直面しています
しかし、これらの危機は、人々の日常生活から遠く離れていたり、漠然とした不安として捉えられたりすることが多く、政治的な行動を促すには至っていません。
ランシマンは、民主主義は、目に見える脅威に対しては効果的に対応できるものの、潜在的な危機に対しては、対応が遅れがちになる可能性があると指摘しています。
例えば、気候変動は、将来の文明を脅かす深刻な問題ですが、その影響は広範囲にわたり、目に見える形で現れるまでに時間がかかるため、人々は危機感を抱きにくく、対策も後回しになりがちです。
また、核戦争の脅威は、冷戦時代には大きな社会問題でしたが、冷戦終結後は人々の関心は薄れ、核軍縮に向けた動きも停滞しています。
全体主義の台頭も、現代においては、過去の教訓から警戒感が高まっているとはいえ、油断は禁物です。
民主主義の自己満 が、ワイマール共和国をナチス・ドイツに転落させた要因の一つであったことを忘れてはなりません。
3. テクノロジーの支配
インターネットやソーシャルメディアの発展は、民主主義に新たな可能性をもたらす一方で、情報操作や監視、プライバシー侵害などのリスクも孕んでいます。
ランシマンは、ソーシャルメディアが、人々の政治参加を促す一方で、フィルターバブルやエコーチェンバー効果によって、社会の分極化を加速させる可能性があると指摘しています。
また、巨大IT企業が、政治プロセスに過剰な影響力を持つようになり、民主主義の原則を歪める可能性も懸念されています。
ソーシャルメディアは、人々に情報発信や意見交換の場を提供することで、政治参加を促進する側面があります。
しかし、アルゴリズムによって情報が選別されることで、ユーザーは自分と似た意見ばかりが目に入るようになり、多様な意見に触れる機会が失われてしまいます。
その結果、社会の分極化が進み、対立が激化する可能性があります。
また、ソーシャルメディアは、政治的なプロパガンダやフェイクニュースの拡散にも利用されやすく、民主主義的な意思決定を阻害する可能性があります。
さらに、巨大IT企業は、膨大なユーザーデータや高度なアルゴリズムを駆使することで、選挙運動や政治広告に介入し、世論を操作する力を持つようになっています。
このような状況は、民主主義の根幹を揺るがす深刻な問題と言えるでしょう。
民主主義の未来 - 衰退か、再生か?
ランシマンは、民主主義の未来について悲観的な見通しを示しているわけではありません。
彼は、民主主義は、これまで多くの危機を乗り越えてきた、 回復可能なシステムであると認めています。
しかし、現代社会における民主主義は、新たな課題に直面しており、その克服には、従来とは異なる発想が必要になると主張しています。
そして、現代の民主主義は、明確な終焉を迎えるのではなく、長い時間をかけて徐々に衰退していく可能性も示唆しています。
ここで、ランシマンの議論を他の学者と比較してみましょう。
ティモシー・スナイダーのような歴史学者は、20世紀の全体主義の台頭を教訓に、民主主義の回復が再び悲劇を招く可能性を警告しています。
また、スティーブン・レビツキーは、現代においても、民主主義はクーデターや暴力によって崩壊する危険性を孕んでおり、警戒を怠ってはならないと主張しています。
このように、多くの学者が、過去の事例を参考に、現代民主主義に対する脅威を分析しています。
一方、ランシマンは、現代社会の特質を踏まえ、20世紀的な民主主義崩壊論では捉えきれない新たな危機を指摘しています。
彼は、現代の民主主義は、過去の教訓から学び、クーデターや暴力、革命に対しては、ある程度の耐性を持っていると考えています。
しかし、それゆえに、人々は危機感を抱きにくくなり、政治の硬直化や潜在的な危機、テクノロジーの支配といった、より見えにくい脅威に対して、無防備になっている可能性があります。
ランシマンは、民主主義の代替案として、プラグマティック(実用的)な権威主義やエピストクラシー(知識人による支配)などの可能性を検討していますが、いずれも決定的な解決策とは考えていません。
プラグマティック(実用的)な権威主義は、効率性や安定性を重視するあまり、人権や自由を軽視する危険性があります。
また、エピストクラシー(知識人による支配)は、専門知識を持つエリートに偏った政治となり、民主主義の根幹である国民主権の原則と相容れません。
ランシマンは、「solutionism(あらゆる社会問題を解決できるという考え方)」もまた、民主主義の課題の一つとして捉えています。
複雑な社会問題に対して、安易な解決策を求めるのではなく、問題の根本原因を深く理解し、多様な意見を踏まえて、粘り強く解決策を探っていくことが重要です。
民主主義の再生に向けて
ランシマンの主張を踏まえ、民主主義の終焉を回避し、その再生を促すために、できることをまとめると
政治への関心を高め、積極的に参加する
政治は、一部の政治家や専門家だけのものではありません。
市民一人ひとりが、政治に関心を持ち、選挙への参加はもちろんのこと、地域活動やNPO活動などを通じて、積極的に社会に参画していくことが重要です。
多様な意見に耳を傾け、対話を重ねる
インターネットやソーシャルメディアの利用に際しては、フィルターバブルやエコーチェンバー効果に陥らないよう、意識的に多様な情報源に触れ、自分と異なる意見にも耳を傾けることが重要です。
そして、異なる意見を持つ人々とも対話を重ね、相互理解を深めることで、社会の分極化を防ぎ、民主主義的な議論を活性化していくことができます。
情報リテラシーを身につける
インターネット上の情報には、真偽不明なものや偏ったものが多く存在します。
情報源の信頼性を見極め、批判的に情報を読み解く力を養うことが重要です。
また、ファクトチェックやメディアリテラシー教育などを通じて、情報操作やフェイクニュースに惑わされないようにする必要があります。
地域社会に貢献する
地域活動に参加したり、ボランティア活動を行ったりすることで、地域社会への愛着を高め、社会の一員としての責任感を育むことができます。
これは、民主主義の基盤となる社会の連帯を強化し、地域レベルでの民主主義を促進することにつながります。
結論
デイヴィッド・ランシマンの『民主主義の壊れ方』は、現代社会における民主主義の課題と未来について、深く考えさせられる一冊です。
民主主義は、決して完璧なシステムではありません。
しかし、私たちがより良い社会を築いていくための、かけがえのない基盤であることに変わりはありません。
ランシマンの警告を心に留め、民主主義の価値を守り、発展させていくためには、市民一人ひとりの意識と行動が不可欠です。
政治への積極的な参加、多様な意見への寛容性、情報リテラシーの向上、地域社会への貢献など、私たちにできることはたくさんあります。
民主主義の未来は、決してあらかじめ決められたものではありません。
私たち自身の選択と行動によって、未来を切り開いていくことができるのです。
皆さんは、民主主義の未来について、どのように考えていますか?
ぜひ読んで考えてみてください!
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