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ベースでいい音を鳴らすには?

こんにちは。

11/11はベースの日、ということで2023年記事が想像以上に反響があったので、今年も書きます。

ベースは音楽を始めてからずっと弾き続けているメインパート。
レコーディング業でも常に向き合っているパートなので、エンジニア・アレンジャーとしての視点から解説します。

テーマはベースでいい音を鳴らすには?
ということで早速いきましょう。

1. いい音の基準

本記事内でのベースのいい音について、基準を書きます。

【いい音全般の条件】

そしてベースとして昨今のトレンドも踏まえ、

・5弦ベースでローエンドがしっかりと再生できている。
・アンサンブルに合わせた際にも、ジャズベースタイプやプレシジョンベースなど、ベースタイプがハッキリわかる。
・スラップなどの花形奏法で必要なキレを有している。

これらを網羅したものとします。

2. ベース本体
当たり前ですが、ベース本体がサウンドクオリティー・キャラクターの大部分を決めています。

べース本体はたくさんのパーツで構成されていますが、今回注目したいのはネック材とピックアップです。

ネックがプリアンプ、ボディーがパワーアンプと例えるように、ネックで音作りしている部分は結構大きいです。

ベースの場合は、ベース弦の張力に対応できる耐久性が求められるため、材料の供給の面から、ハードメイプルが採用されていることが多いですが、サーモウッド(ローステッド)のハードメイプルが近年では身近となっていますよね!

ハードメイプル・ライトサーモメイプル・カーボンで4弦ベースのネック材を比較した動画


ライトサーモメイプル、和材の欅、楢、樫を5弦ベースのネック材で比較した動画

欅には明るく、はっきりしていて、
楢は粘りがあって柔らかい。
樫はクリスピーで歯切れがよく、
カーボンはフラットでタイト。

これらのキャラクターの違いは単にイコライジングで解決できる訳ではなく、素材由来の音については、素材からこだわる必要があります。

ベースのネックだけを交換して比較して演奏することは簡単ではないので、比較動画を参考してもらえたらありがたいです。

ピックアップは弦振動を拾うマイクのようなパーツ。
楽器が完成後、サウンドの見直しとしてまずピックアップが取り上げられます。

ピックアップの線材で比較した動画

ピックアップの設計で比較した動画

ピックアップはイコライジングやゲインにあたる表現が適切に思います。
実際のところ線材の種類によって、周波数特性が変わったり、巻き数によって出力が変わります。
ただし、たくさん巻くほど高出力になる反面、音量を絞って演奏する時などの繊細な音作りのコントロールは難しくなり、ギターの場合はドライブサウンドの音作りに大きく影響します。

他にもボディの木材や重量によって、低音の出方は変わります。
ある程度ボディに重量がないとローエンドを鳴らしきるのは難しいです。プリアンプでローをブーストしたとしても元々ないローエンドを増幅することは困難なわけですから。
またピックアップ以外の電装系パーツによっても音の明瞭さが変わってくる印象です。

そしてトータルバランスを考えて設計し、1本1本丁寧に製作しているクラフトマンの存在を忘れてはいけません。
楽器のブランドやモデル、個体差まで含めると、1本を選び抜くのは本当に大変ですが、ベース選びやセッティング、パーツ選定など時間をかけて選び抜くのには意義があります。


3.DI


ベースというパートの性質上、ライブ・レコーディング両方においてDIのことは無視できません。
DIはDirect Injection Boxの略で、音響的な役割はベースをラインの信号として取り扱えるよう、ハイインピーダンスをローインピーダンスに、アンバランス接続をバランス接続に変換します。

ではなぜベースはアンプよりもラインの音をPAやレコーディングエンジニアが優先して取り扱うのか?
それはベースは生音がメインの音色であることが要因に上げられます。
確かにベーシスト的にはアンプで鳴らした音がベースの音という認識なのですが、ライブでは会場によっては低音が回ることにより、ワイドレンジなラインの音の方がハッキリとして取り扱いやすいからです。
アンプの音をマイクで拾う現場もありますが、それだけでベースの音作りを完結しているようにはどうも思えません。

レコーディングも似た感覚で、ラインを音の骨として、アンプの音を回りに肉付けすることで、耳で聴いた時のベースの音に最も近いサウンドになるからです。

なおアンプの音に本当にこだわるというのなら、アンプヘッドだけでなく、キャビネットにもこだわる必要があるでしょう。
ヘッドとキャビネットが一体となってベースアンプの音なので、そうなると自前のセットを所有して、運搬できるようなトッププロの話になってきます。

外的環境が左右されないライン、つまりDIにこだわるのが先決だと考えます。

ベースレコーディングの経験上、DIを通すことによって、音の水準を上げる、元の音を良くする方向に働くと考えます。

今ではすっかり定番となったRadial J48 MK-II。原音系としながらも、低音から高音まで一回りゴツい印象に音をブラッシュアップしてくれます。

そして現在マイクプリ・DIとしてもメインで使っているGorden Age Poject PREQ73 PRIMERはベース本体のキャラクターをピュアかつ高品位に増幅してくれます。


これにより、
・アンサンブルに合わせた際にも、ジャズベースやプレシジョンベースなど、ベースタイプがハッキリわかる。
の精度を高めます。

元を良くする意味ではいいケーブル(シールド)を使いましょうという話にもなりますが、DIにこだわる方が正直なところ効果が高いと思います。

4.ピッキング


音作りの話なので、プレーに関することで恐縮です。

実際のところ、ちゃんとしたピッキングを把握して、的確にベースを鳴らせているかが大きなポイントです。

○のピッキング

×のピッキング

これはスラップのサムピングの波形です。

○はアタックの後、波形が減衰せず低音が鳴っているのに対して、×はアタックのみでその後の波形が減衰しています。

これはサムピングの時、○4弦をヒットし、通過後3弦に親指が当たって止まっている、つまりベース本体にもアタックした時の振動が伝わっています。
闇雲に力だけでピッキングした際、×の状態になっていて、アクションは激しいのに、音に迫力がなく感じます。

ドラムのスネアで言うなら、リムショット。スネアの打面だけでなくリムを同時に叩くことで、シェルも鳴らす。これにより、アタックが際立ち、低音も感じられるので音が太いという訳です。

太い音が全てにおいて正解な訳ではありませんが、トッププロのプレイは打ち損じがなく、この太い音、芯のある音を常に出すことができると考えています。
グルーブが素晴らしい、フレーズがいいとか、演奏の評価の基準は様々ありますが、大前提としてきちんとしたピッキングでベースが常に鳴っていることを忘れてはいけません。
ウォームアップのスケール練習はリズムとかよりもこのピッキングに関するトレーニングだと思っています。

ベース本体が一定以上のクオリティである場合、イコライザーやコンプレッサーが必要かどうかはプレーヤーのピッキング次第に思います。

なので

・5弦ベースでローエンドがしっかりと再生できている。

はアンプやアクティブベースのプリアンプのローの設定や、弦高の高さと同等にLow-B弦がきちんと鳴るピッキングを習得しているかがカギです!

ちなみに

・スラップなどの花形奏法で必要なキレを有している。

はベース弦が新品に近い状態であれば、おおよそ達成できます。

現代はスラップが基本奏法の一つとしていることを前提にベースを設計、セットアップしているからです。

5.まとめ


まとめるとベースは生音が一番重要な音色です。

生音に直結するライン出力に関するところに注視し、ベース本体にこだわり、DIにもこだわり、きちんとピッキングしましょうということです。

この記事を見た方は、イコライザーの設定や、特定の機材レビューを期待していたかもしれませんが、レコーディングの日々で得た実情を書きたかったのでこのような内容になりました。

ベースの日10周年おめでとう御座います!

ベーシストでよかった!

ご覧頂きありがとうございます、
それではまた〜


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