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別冊Re-ClaMの翻訳について【修正】
先日、別冊Re-ClaMの新刊『ジャスミンの毒』(クライド・B・クレイスン)の翻訳について大いに不満があるという批判の声が見られたという報告を受けた。
これに対して私がまったく対応しないというのは、他の購入者、また翻訳者に対して不誠実に当たるだろうと考えたため、このほどnoteにおいて編集部としての意見を公開することにした。購入者諸氏(あるいは今後出て来るかもしれない新たな翻訳者)の参考となれば幸いである。
①翻訳の不備について
原則として、批判の声の内容は概ね適切なもので、個別に反論を行う意向はない。ただ、すべてを一律に「誤訳」と受け入れるつもりもない。訳文について批判を受けているのは大まかに以下の事項である。
A.「翻訳を読んだ時に何を指しているのか伝わらない」
B.「日本語としてこなれていない」
A.の直接的原因は「訳文の検討不足」にある。原文の趣旨を壊さない範囲で、より適切な訳語、より適切な表現を突き詰め、読者に分かりやすい訳文を提供することは、翻訳書を刊行する側にとって重要な使命であり、全文でこれを徹底することができていないという点は、「手抜きである」と批判されても仕方がない。
B.の直接的原因は「翻訳者の経験不足」にある。多くの文章を読み、また翻訳する中で「この表現に対してはこのように翻訳するのが自然だ」という判断ができるようになる。修行の中で師である先輩翻訳者に指摘され、学ぶこともあろう。(Vol.2 『乗合馬車の犯罪』担当の小林晋氏を除き)別冊Re-ClaMに参加した翻訳者(三門含む)にこれが足りないという意見は否定しがたい。
②責任の所在について
とはいえ、Re-ClaMとしてはこれらの不備の責任は編集サイドにより多くあると考える。これは「経験を積んだプロの翻訳者と比較して質の面で劣るアマチュアによる訳稿」であることを承知の上で使用しているからである。
それに対して編集サイドが助力することで品質を高め、可能な限りプロの翻訳者/商業出版のレベルに近づけていく……のが理想だが、現状私の力不足・経験不足もあり、翻訳者諸氏に対して十分なサポートができていない場合が多い。そのため、もしクレームがあれば間接的にお書きいただくのではなく、「直接」三門にお申し付けください。
今後、校正・校閲の強化(外部に専門的な校閲担当者を依頼するなどが考えられる)も含めて更に品質を上げることが、購入者および翻訳者の「信頼」に応えることだと思う。努力したい。
③同人誌であることの「甘え」
「安からぬ金額で販売する以上クオリティの高いものを出すべし」というのは購入者として当然の考えだが、それと同時に「アマチュア翻訳者の(まだレベルの高くない)仕事をある程度許容する、育てる」ことを、できればご寛恕いただければ幸いである。
別冊Re-ClaMでは編集方針として、「明らかに間違っている箇所は訂正案を指導するが、「自分だったらこう訳すけど」という箇所については翻訳者の判断に任せる」ようにしている。完全に三門に納得が行くまで直すと翻訳者自身の文章ではなくなるし、モチベーションも下がる。(編集サイドの尽力は前提として)「自分はこれがやりたい」といって出てきた人たちに場を提供するのを続けるためにも、どうか暖かく見守っていただけないだろうか。
以上、随分都合の良いことも書いたが、今後出て来るだろうあらゆる翻訳同人誌、そこから紹介される作品、登場するだろう翻訳者、そしてクラシックミステリの受容のためにも、懐の深い、より良い将来を夢見ることができるようにしていったらいいんじゃないでしょうか。
※申し入れに対応し、適宜修正を行った。