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WEB Re-ClaM 第35回:クラシックミステリ原書刊行状況(2021/5)

6月末に待ち受ける怒涛の国書ラッシュに、どう資金を捻出したものか迷う日々です。とりあえず今週末には『エラリー・クイーン 創作の秘密』が出るのでまずそこから。編者のジョゼフ・グッドリッチは、Re-ClaM本誌の連載に快くOKをくださるなど鷹揚なナイスガイなので、個人的にも応援していきたいところ。

Mary Roberts Rinehart / The Wall (American Mystery Classics, 1938)

日本でも『帰ってこない女』という題名で翻訳されている作品(小学館文庫、2000)。加瀬義雄さんが解説を書いていた記憶があります。ところでこの時期の小学館は良作が多いです。文庫ではアームストロング『もつれた蜘蛛の巣』『ノックは無用』、ミラー『眼の壁』。また単行本ではバーネット『リトル・シーザー』やフォレスター『終わりなき負債』、テイ『魔性の馬』など(ちょっと時期は後ですが、バーディン『殺意のシナリオ』も良かった)。どなたが選定していたんだろう。『煙の中の肖像画』を訳された仁賀克雄さんかもしれませんね。

★Marie Belloc Lowndes / The Chianti Flask (British Library Crime Classics, 1934)

日本では(というか英米でも)ジャック・ザ・リッパーものの草分け的作品『下宿人』の一作で記憶されている作家ですが、これはその中後期作。法廷ミステリのようなのですが、ちょっと気になります。なお、この作家の『リジー・ボーデン事件』を仁賀克雄さんが翻訳されています。なんだか今回は仁賀さんが付いて回るなあ(先日旧蔵書を購入したから意識にあるのか)。

★Mike Ashley ed. / Future Crimes (British Library Publishing, 2021)

大英図書館ではミステリ以外にSFの復刻叢書も出していますが、これはその一冊。タイトルからも分かる通り、SFミステリの傑作を集成した作品集です。ジョン・ブラナー、エリック・フランク・ラッセルといった渋いところから、P・D・ジェイムズの60年代の短編「殺人」("Murder, 1986")のような変化球、そして最後はミリアム・アレン・ディフォード「完璧このうえない犯罪」で締める構成で、定番作品も多いですがなかなか楽しめそうです。

今月は少なめですがこの辺で。6月も自粛の日々が続きますが、分厚い本を楽しむ機会を捉えたいところですね。それでは。

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