【#レシピ4】『山水豆腐花』香港名物・豆腐プリン(PART II)
香港はなぜ美味しい湧き水がないの? なぜ香港人は蒸留水を好むのか? (PART I) の記事で答えを!
『豆腐花・豆花啦喂 〜 』
~ 夏休みにしか聞こえない音 ~
自転車を押しながら、高層ビルに向かって、叫び売りの『豆腐花』 【和訳:豆腐プリン】おじさんがやって来た。『豆腐花』 とは滑らかなおぼろ豆腐にシロップや黄色砂糖をかけたような『香港甜品』(ホンコン ティムバン・香港スイーツ)。
『嫲嫲』【和訳:父方の祖母】から香港2ドルと年代物の濃い緑色のふちが付いた黄緑色の琺瑯ボウルを貰って、ダッシュでエレベーターに乗ってマンションの一階に降りていった。
うちのマンションの横にある細い道に『豆腐花』 おじさんが入っていった。2ドルと交換でおじさんは、自転車の荷台にある木製の樽を開け、鉄で出来た浅いおたまの様なものでボウルいっぱいに『豆腐花』を入れてくれた。そして、プルプルしたそれの上に甘いシロップをかけて、おじさんは樽の蓋を閉じた。
まだ小学生低学年だった私は、両手でボウルのふちをしっかり持って、落としたら『嫲嫲』に怒られるので、慎重に一歩、一歩、中のものを溢さないように、ゆっくりマンションのエレベーターホールに戻って、10階の自宅まで無事に戻って行った。
『嫲嫲』は姉妹の人数分で分けてくれて、待ちきれなく思わず大きな一口をスプーンに盛ってしまう。口に入れたらそれは本当に滑らかで、甘くて、ほんのりの焦げ臭かったけど、子供の私たちからすれば『豆腐花』 は最高のご褒美。
あの『豆腐花』の焦げ臭いにおいは、なんだったのだろう?もしかしたら豆乳は焦げやすいから何回も焦がして、そのにおいが鍋に染みつき、豆腐にもにおいが移ってしまったのかもしれない。
子供の頃、やっぱり夏休みは楽しみだった。学校がない幸せな毎日、朝から晩までテレビ漬けの生活。両親は共働きなので家にいない。だけど『嫲嫲』は「早く宿題をやりなさい」なんて言わない。三食うちで食べて、時々『豆腐花』 のおじさんが来たり、時々おこずかいをもらって、近所の『金華士多』 【和訳:金華というストア】にてオヤツを買いに行ったり。私の夏休みを邪魔するものは何もなかった。
夏休みが終わる頃、ずっとやってなかった夏休み課題を大慌てで終わらせようとしたが、朝3時までやっても終わらなかった。泣きながら母に叩かれ、学校に行けば眠そうにしてた。もう二度と味わえない過去。
あっという間に大人になって、香港では『山水豆腐花』【和訳:湧き水で作られた豆腐プリン】も消えた。
今は目の前にある日本の美味しい湧き水で、もう一度あのごろの味を作りたい。
リュックを用意して「尾瀬」へ。
美味しい水を探して三千里。
どこの山に行っても湧き水は「そのまま飲まないで下さい」と言われるが、片品村戸倉に行ったら、そちらの湧き水はそのまま飲んでも大丈夫だと泊まった宿のご主人が教えてくれた。「濾過しなくていいの?」とびっくりした。
水は柔らかくて冷んやりしていておいしい。
自分の水筒と予備用の水袋に合計3リットルを汲んで山へ。
宿のスタッフの車に乗せてもらって、片品村の豆腐屋「尾瀬 万里姫どうふ」まで送ってもらった。片品村の気候風土で育った大豆「大白」と名水「尾瀬の郷片品湧水群」の水を使用した豆乳はとても濃かった。豆乳を自宅まで発送してくれた。
「大白」大豆と湧き水で出来た豆乳で作った『豆腐花』は正真正銘の『山水豆腐花』と呼べることでしょう。
今まで作った『豆腐花』の中で一番味が濃かった。澄まし粉で凝固した豆乳の弱点は旨味を引き出しにくいことなのに、「大白」大豆は驚異的な旨味と甘味の持ち主なので、以前香港で食べた『山水豆腐花』の味に非常に近かった。
香港ではまだ『山水豆腐花』を食べているだろう。? 恐らく湧き水で作られているものはほぼないと思う。こちらのお店ではまだ『山水』と書いているので、食べに行ってみてもいいかもしれない。『宋伯山水豆腐花』。難点はとてもアクセスが悪い場所であるということ。地元の人でさえ行きにくい場所である。
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