【エッセイ編】『山水豆腐花』香港は美味しい湧き水がないの? (PART I)
香港友人から一通のLINEが来た。「日本人は蒸留水を飲まないの?」驚きを隠せないようだ。どこかの日本人香港ユーチューバーの動画で「蒸留水は実験室の道具を洗う水という認識しかないようだ。日本では蒸留飲料水というものがない。」と言っていて、思わず笑った。これが文化の違いなんだ。
香港に住んでいる日本人なら絶対『屈臣氏蒸餾水』を飲んだことがあると思う。日本のスーパーにあるミネラルウォーターのようなボトルで緑のキャップが付いていて、キャップは、コップにもなる香港の代表的な「ソールフードウォーター」。香港では「蒸留飲料水」という表示がなく、「蒸留水」としか書いてないので、実験室で使っている純粋な水と思われがちかもしれない。
2021年5月に、『屈臣氏蒸餾水』は『香港真係好靚』【和訳:ビューティフル香港】ボトルラベルを新調して、新商品として販売された。しかし、そのデザインは「反政府を煽るスローガン」と見なされ、香港大手スーパーマーケットの『百佳』は全店でこのデザインのボトルを販売中止にしていた。当時香港民主派寄りの新聞紙「リンゴ日報」は新しいデザインのボトル販売中止は香港政府が言論自由を奪う「白色テロ」の結果と非難した報道があった。が、同じ2021年8月に「リンゴ日報」は国家安全法により、停刊され、新聞会社の多くトップ要員たちも政治犯として逮捕された。
どう見ても『屈臣氏蒸餾水』は普通の飲料水ですが・・・香港の歴史の中に大事な出来事として刻まれた。
ちなみに言うと、香港で蒸留水を飲むのは香港の水道水がおいしくないからだ。香港では美味しいミネラルウォーターの水源地がないのか? 香港の水は本当にこんなに不味いのか?実は、香港にも名水地はあった。ただ、それは昔の話。場所は『沙田』だった。
『沙田』の『山水豆腐』【和訳:湧き水で仕込んだ木綿豆腐】と『山水豆腐花』【湧き水で仕込んだ香港豆腐プリンスイーツ】は80年代までは名物だった。湧き水を広東語で言うと『山水』。
小学校の頃、毎週末は『沙田小瀝源村』という集落の別荘で過ごしてきた。『爸爸』【和訳:父】が『嫲嫲』【和訳:父方の祖母】の為に建てられた赤瓦屋根の白い塗りの壁調三階建洋風別荘があった。『嫲嫲』は文化大革命の時、香港に避難して来て、その前は広東省で地主だったので農業をやってたらしい。香港に来た後も自家菜園をやりたかったのだろうか?しかし、私は農業に一切興味がなく、むしろ、嫌いだった。別名、植物キラー。買って来た植物は手入れが行き届かず必ずと言ってもいいほど枯らしてしまう。
別荘の裏庭は『嫲嫲』の家庭菜園だった。様々な中華野菜、瓜、豆、バナナ…『嫲嫲』は中腰姿勢で黙々と野菜を手入れしたり、収穫したり、土を耕したり、一心不乱なその姿は、あの時の私とは対照的だった。別荘を広東語でいうと『別墅』。土の上に野菜の野があって面白い漢字。
車は『沙田小瀝源村』の入口に駐車して、週末を過ごす為の食材やお泊り用の持ち物など、家族全員が両手で持っても持ちきれないほどの荷物を持って、狭い粗末に敷かれたコンクリート村道を辿って別荘に着いた。途中、所々で黄色ぽい色の野良犬とすれ違った。私たちが車から降りた瞬間に野良犬が必ずと言っていい程集まって来る事が一般的。吠えはしなかったがなんとなく怖かった。
都会っ子の私は当時別荘に行くことにとても抵抗があった。村の入口から20分程の村道を歩かないと別荘に着かないし、蚊・ゴキブリ・やもり・虫・蜂も多いし、村道の両脇に下水が流れるような水路があって臭いし、野良猫や野良犬がたくさんいたし、前庭の花畑の草むしりもやらさせたし… テレビもなく、ゲームもなく、ショッピングモールもなく、なんの為にわざわざ遠い田舎に行かなきゃいけないのか、全く理解出来なかった。
村の入口のすぐ右側に、もやし兼豆腐工場があった。通るたびに強烈な煮大豆の匂いがあったのでずっと頭から離れなかった。豆腐やもやしも売られていた。「豆腐」は『沙田』の名物であることはこの自分の経験で分かった。
唯一の楽しみは『沙田』の有名なレストラン『萃華酒家』で食事することくらいだったかな? そこの『蒸釀山水豆腐』はすごく美味しかった。蒸し立ての喉ごしが良い豆腐の上に海老しんじょうが詰めてあって、甘じょっぱい醤油をたくさんかけてあり、トッピングの青ネギに熱い油をかけたおかげで葱油の香りが立ち昇ってくる。お・い・し・かった~
なんと、自分が13年前に書いたブログを発見した! 13年前もと同じことを書いてあった。(笑っちゃう)
2011年の12月に久しぶりに『萃華酒家』にて再訪問。残念ながら『沙田』ではもう豆腐工房がないようだった。今の豆腐は全て他所の工場から仕入れ来たもののようだ。というわけで、清らかな湧水も、もうないということなのだろう。都市開発のため、自然環境を破壊され、もちろん美味しい湧き水もなくなるでしょう。現在の『沙田』はコンクリート森になって、自然が豊かの『沙田』は私の記憶の中にしか残されてない。
この記事を書いていてようやく『小瀝源』の意味が分かった。『瀝』は清らかなの意味。『源』は水源の意味。清らかな湧き水がある場所の意味!!!別荘に通っていた時から何十年も時が過ぎ、今『小瀝源』の地名を調べてからようやって分かった。なぜ『沙田』は豆腐が有名だったか、やっと分かった。水が綺麗だったからお豆腐も美味しいんなんだ!
恐らく、本当の湧き水で作られた豆腐製品はもう香港で存在しないと思いますが、『山水』という名前はブランディングイメージが強く、香港のスーパーではこういう商品はある。一度は食べてみたい。どんな味でしょうね?
『嫲嫲』はもうこの世にいない。『爸爸』もこの世にいない。けど、『小瀝源』で私が過ごした時間は今となって私の宝なんだと気づいた。都会っ子なのに、現在はわんぱく娘のように登山したりやハイキングしたり、冒険が好きなのは当時田舎で暮らした経験のおかげかしら?
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