ミニ四駆を科学する。~ローラーベースとホイールベース、トレッドの関係性~
~はじめに~
まず、これを公開しようと思った理由は、長い間この疑問に対し、回答に辿り着けなかったからであり、先般ようやくその端緒を得て、試行錯誤した結果一つの結論に至ったからです。
公開にあたり、後押しを頂いた方々に感謝します。
これが皆さんの参考になれば幸いです。
ところで、皆さんは自然界のあらゆるものには”黄金比”と言うものが存在するのはご存知だろうか?
トータルバランスの一番良い状態を表し、その比率は約1:1.618。
これは実車のスポーツカーも同様で、車体や直進性及び回頭性のバランスの基準とされている。
車においては1に近いほど回頭性が、2に近いほど直進性が向上する。
ミニ四駆においても同様で、ちゃんと黄金比が存在します。
よく、「バンパー詰めたら速くなる」「リアローラーを詰めたら速くなる」等を聞いたことがあると思います。
これは回頭性が黄金比に近づいている(または、より1に近づいている)からです。
ミニ四駆の記事でたまにローラーベースの基準を125mmとして説明されるのにも、実はこの黄金比が関係しているのはあまり知られていません。
そして、この数値はローラーベースとホイールベース・トレッド比の相互関係により成立している値でもあります。
調べた限り、ローラーベースの基準125mmはかなり昔から確立されていますが、存在は知ってたとしても、理由までは伝承があまりされていません。
本件は、数多の過去のデータ蓄積の上で確立されたものを理論だてて分解し、検証した結果であり、何故125mmになったのか、順に説明していきます。
まず第一に、この数値がはじき出されたのは当時から使われているtype1から始まりZEROやS1、そして現行のS2、VS、最新のVZといった”ホイールベース80mm”のシャーシがベースであるからです。
ミニ四駆はローラーで曲がるため、ローラーの話は出るものの、普段あまり関連されない「ホイールベース/トレッド比」も実は重要なのです。
ここではVSを例に説明します。
黄金比がミニ四駆でも当てはまるのは説明しましたが、実際にホイールベース80mmであったとき、黄金比1.618(計算は近似値1.6で行う)に近いタイヤトレッドは、
80÷1.6=50
約50mm(理想値)となります。
実際にVSのシャーシトレッドは620ベアリングを付けた状態で約45mm。タイヤをめいっぱい寄せた状態が同数値で、実際に私の作ったVSで約50mmに出来ました。
そしてホイールベースに対するローラーベースの黄金比は
80×1.6=128
と本来はなります。
ミニ四駆の場合、操舵機能がない故にホイールベースやトレッドは分けて考えるか無視されやすい。
これが速くしたいのにならない落とし穴でした。
細かい計算は省きますが、前後ローラーと各車軸間(オーバーハング)が等しく上記数値(ホイールベース80mm、トレッド50mm、ローラーベース128mm。ローラー幅前後105とする。)でJCJCコーナー半径から計算したり、実際にコースを測っても、ミニ四駆は壁沿いに”約5度”内向きに旋回してる事が分かります。
(写真は実寸で分かりやすく説明するためコースを直に測ってます。誤差はすみません。)
このコーナーを短く回る(旋回半径を小さく回る、俗に言う”立ち上がりを早くする”)のが速さには重要であるものの、操舵機能がないミニ四駆が速く走るには、この旋回角度を適度に増していかなければなりません。
細かい計算をまた省きますが、JCJCのコーナーを速く立ち上がるラインを走るには、概ね旋回角度が7.5~8度必要です(理想値は7.6位になる)。
つまり、操舵機能の無いミニ四駆に、足りない2.5~3度分の旋回角度をどこかで補い調整する事になるわけです。
この時、2通りの調整方法があります。
ローラー幅を狭める方法、またはローラーベース前後どちらかを詰める方法です。
一般的にはVSの場合リア側のローラーベース(オーバーハング)を詰める場合が多いですが、ざっくり言うと
ローラー幅0.2mm減で左右約1度
ローラーベース1mm減で左右約1度
旋回角度が変化すると考えて下さい。
簡単に言えば、ローラーベース伸ばせば直進性が、詰めれば回頭性があがる。
ローラー幅は105が最大値なので、そこからリア側を引き算で回頭性があがる。
つまり、128mmの等間隔ローラーベースで回頭性を理想値にもっていくには、前より後ろのローラー幅を約0.6mm狭くするか、前後ローラー幅同一では、3mm短く125mmとする事で回頭性の理想値になる計算です。
ローラーベース125mmの根拠は、当時のシャーシにおいて最速を追求したトータルバランスを弾き出した理想値なのです。
これはVS等ホイールベースが80mmかつトレッド幅が約50である場合から弾き出した結果であって、他シャーシやセッティングで数値は変わります。
一般的に、フラットなどでローラーベース125~128mmの中でコースやパワソ等に合わせたセッティングが行われているのは本来そう言った理由があるのです。
ただ、ホイールベース等が長い場合一部例外もあります。
例えば、ファントムブレード(Xシャーシ)であればホイールベース84mm、トレッド72mm、前ローラー幅97mm、リア89mm、ローラーベース138mmもあります(実物の計測値、誤差はあり)。
計算してて分かったのですが、実はJCJCのコーナー半径はホイールベース80mmのミニ四駆に合わせて設計されている為、84mmのロングホイールベースやワイドなシャーシ幅をもつX系シャーシは、3レーンにおいて本来の黄金比(理想値)では窮屈(Rがキツすぎ)なのです。
そういう意味では、5レーンに適したシャーシであると言え、小径ワイドバレルタイヤや長いローラーベースもその為とも言えます。
逆に言えば、5レーンを走らせるには参考になる、非常に計算された数値とも言えます。
3レーンで走らせるには、出来うる限りトレッド幅を詰めたり、ローラーベースを切り詰める等、回頭性へ強く振ることで一応の解決は図れます。
そんな面倒くさい計算できねぇよ!
って方は、概算ではあるがこんなやり方もあります。
先の計算に基づき図面化(目視化)する方法を見つけたので、1つの参考にはなるでしょう。
A4用紙縦の中心に縦線を入れ、適当な位置に中心線に対し直角で線を引き、
上の角からそれぞれ上辺内角87度(縦に3度)で線を引く。
その上辺にフロントローラー軸線を合わせてミニ四駆を置く。
ミニ四駆の車軸位置、タイヤトレッド(タイヤの接地し汚れてる位置。接地面とも言えるが、普通は左右とも同程度の位置に付くはず)の位置を紙に印を付け、交点を出す。
この4つの交点をそれぞれ対角線(×印)で結び、外側の枠まで繋ぐ。
この時、対角線延長線上と87度(3度)の線が交差する地点どうしを計測すると、大体になるが、そのミニ四駆の本来最適なローラーベースが分かる。位置関係は下記写真のとおり
こうして作ったVSで実際に実験を行いました。
実験に使用したコースは53.60m。直進性や回頭性をチェックする為、スロープ等は入れていない。回頭性を中心に見たいのでコーナー多め。
フラットにしてはコースが短いのは設置場所の関係なので勘弁願いたい。
マシンはVSでレブチューン23500回転、タイヤ25.9mmマルーンハーフ。
トレッド50mm、ローラー幅は前104.3後ろ104.0。あえて各ステーのSTD穴位置での計測としている。ローラー径は13mm。車重は電池抜き86gです。
今回の実験だとローラーベースを、
125mm、126.3mm、127.5mm、132mm(尻出し)
とし、同じ電池を追い充で、1回ずつバンパー長を順次かえながら複数回計測し、なるべく状況が揃うよう配慮はしています。
計算上では126.5mmが理想値に近い状態です。
計測の結果、このコース上では微妙ながらも125mmがタイムは1番(10.73秒)だった。
しかしLCの安定度で差があり、125mmだと僅かにLC後半で浮き気味のところ126.3mm以降はしっかり安定した。
125mm、126.3mm、127.5mmのベストタイム差は100分の数秒の範囲。
しかし、132mmになるとこの距離でゆうに毎回0.15秒以上の差が出た。
今回フラットコースにしてはタイヤ径が小さい(本来フラットだと35mm以下ほど)為、短いコースで差が小さく分かりづらかったが、これらの結果から、テクニカルなショートコースは理想値より回頭性を上げ、高速LCを擁する場合は理想値または回頭性を若干下げた方が安定して良いと判断出来る。
また、回頭性が理想値からかけ離れる(直進性をあげる。ローラーベースを伸ばす、ローラーベースに対しトレッドを広げる等)とタイムが明らかに落ちる事も確認した。
先の基準としたホイールベースとタイヤトレッド及びローラーベースの関係性は、実際の走行状況と提供を受けた車体数値及び計算から、ローラーベース125mmを数値の基準とすると
〇ホイールベース80mmに対しタイヤトレッド約6mm拡大(50→56)した場合は約1mm延長
〇ホイールベース84mmに対しタイヤトレッド約11mm拡大(50→61)の場合(X系のトレッド最小幅に近い場合)は約3mm短縮
することで、JCJCコーナーのRに対する理想に近い旋回角度が得られる事が分かりました。
また、この数値はローラー幅に置き換えて計算し、考える事も可能です。
これはあくまで一般的な配置での話であり、例えばフロントのオーバーハングを限りなく0に近付けたり、アクアのようにホイールベースの中へローラー配置するような場合等には別の検証も必要になりますが、結論的には、総トータルにおいて黄金比を実現する「全体のバランス」が大事です。
まだタイヤなど、検証の足りない部分もあり、それらはまた機会をみて書けたらと思います。
如何だったでしょうか?
難しい計算は省きましたが、それでも難しい話ではあったと思います。
しかし、知ってると知らないとではコーナーの速度が変わり、パワソがない程顕著に全体速度が変わり、パワソでゴリ押しもある程度限界があります。
なかなかその通りのセッティングが出来るとは限りませんが、困った時には思い出して解決の糸口になって欲しいと思います。
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