【スタイリングにおける「外し」とは】
スタイリングをする時にスニーカーではずす、キャップではずすなど、「外し」または「抜け感」、「崩し」とよく使うことがあると思います。
そのよく使う「外し」って一体なんでしょう?
外すという言葉の意味は、主となるものから離すこと。ことさらファッションにおいては意図的にテイストの違うものを取り入れるということです。
ではなぜわざわざそのようなことをするのでしょうか?
ここでめちゃくちゃ堅苦しいですが、古代哲学者プラトンのイデア論を引用します。
プラトンはイデアを「知覚を超越した場所に存在し、直接には知覚できずに想起によってのみ認識し得る、抽象化された純粋な理念のこと。そして、対象を対象たらしめている根拠であり本質、真の存在」と言っています。
訳が分かりませんね!
安心して下さい。ざっくり説明します。
例えばリンゴを想像してください。そう言うとみんな理想的な綺麗なリンゴを想像すると思います。ただ実際にそのリンゴを知覚することはできません。ただ人は完璧な状態のリンゴを想像できます。これがイデア論です。
つまり、人はあるモノに対する理想的な形を潜在的に思い浮かべることができるのです。
話をファッションに戻します。
スーツを見ると足元は見なくても革靴ですよね。これがファッションにおけるイデアだと考えます。しかし、スーツの足元がスニーカーだとどうでしょう?違和感がありますよね?
これが「外し」です。
おいおい、理想から外れたものを入れたからなんでオシャレなんだ?と言う声が聞こえそうなので、もう一つ大事な概念に触れていきます。
「人は完璧な状態から何かは欠落・欠如したものに美しさを感じる」
これはファッションのみならずアート的な観点でも見られる概念です。
例えば分かりやすいのは、ミロのヴィーナスなどの腕や頭が欠落した彫刻。
これらはあえて完璧な状態(イデア)から何かを欠落させることで、不完全な状態を演出する。
もしかすると完璧な人間がいないのと同じように、親近感が湧くのかもしれません。
前回書いたインサイドアウトも同じような状態とも言えますね。
もっと簡単に言うと、イケメンサラリーマンがふとした瞬間にネクタイを緩めたときレディースたちはキュンするわけです。
長くなりましたが、話を「外し」に戻し結論付けると、
「外し」とは、
「完璧な状態(イデア)からあえて欠落させ、不完全な状態にすることで、美しさを表現すること」
しかし、ファッションにおけるこの完璧な状態はイデアの例で挙げたリンゴのように潜在的に理解できることはできません。
この一種のイデアを理解するためには、歴史の文脈つまり「カルチャー」を理解することが必須です。
次回はこの「カルチャー」について書いていきたいと思います。
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