【臨床研究日記 17】研究計画:PECOのE(曝露)をはっきりさせる
大学院で学んだ公衆衛生学・疫学の知見を元に、健康的な社会を作りたい理学療法士のジローです。
これから、臨床研究を始めてみたい!と思った時に、自分が誰にも相談ができなかった経験から、今走らせている臨床研究で行っている内容をリアルタイムで日記にして公開しています。
10月の上旬で、研究仮説(PECO)を作り、FINERチェックが終わりました。
自分の興味関心を「PECO」に当てはめるだけなので一見簡単そうですが、
ここから計画にしていくにはもう一苦労が必要です。
今日は、E(曝露)かI(介入)を決める時に意識しておきたいtipsをまとめました。
■ 曝露とは?
疫学における「曝露(バクロ)」とは、健康に影響を与える外部要因や、環境、行動などに個人や集団が晒されることを指します。
例えば、化学物質、放射線、病原体、生活習慣(飲酒や喫煙)などが曝露に該当します。
臨床研究において曝露は、興味があるアウトカム(疾患の改善や死亡など)に対して影響を与える因子と捉えられます。
■ 研究計画を立てるときの、曝露の設定の注意点
この研究における曝露を何に設定するかは、何となく頭の中にあるのではないでしょうか?
曝露の種類は、早期リハ介入・電気治療・新しい薬や装具、治療方法など何でもなり得ます。
問題は、「この研究における曝露(E)の定義」です。
曝露あり=
生まれてから1回だけ曝露した
1ヶ月前に短期間曝露した
毎週(しかも週に3回)曝露している
全員同じで考えて良いはずがないですよね。
研究で明らかにしたい事によって、曝露の定義は変わります。
まず、ここをはっきりさせておく必要があります。
先行研究を元にして決定することが好ましいです。
例)現在はタバコをやめていたとしても、1週間に5本以上、継続的に10年以上喫煙した者を喫煙群と定義した
■ 曝露同定バイアスに注意
曝露の定義がしっかりしたとして、
サンプルに該当する人が「本当に、申告している量とピッタリ曝露しているか?」という問題が生じる事があります。
これを、曝露同定バイアスと呼びます。
曝露同定バイアスのサブタイプとして代表的なものに、
想起バイアス(リコールバイアス)と、面接者バイアス(インタビュアーバイアス)があります。
■ リコールバイアスとは?
過去の曝露についての不正確な想起によって生じるバイアスです。
例えば、ある癌(x)が生じた時に、「この物質を摂取した事がありますか?」に対しては、この曝露要因に対して敏感になるため、よく思い出されるといった事があります。
また、喫煙や飲酒について「週に何回くらいですか?」という質問に対しては、自分で一番少なかった場面を想起して(別に嘘をついている訳ではなく)報告するといった場面も、リコールバイアスに含まれます。
■ インタビュアーバイアスとは?
面接者の聞き方によって、どの程度の曝露を受けたかに影響を与えます。
プロトコールに定められた質問方法の手順やルールに従わず、(気を利かせて)質問の意味の説明などをしてしまった場合や、
「まさか、この薬を摂取し忘れているわけないですよね??(怒)」と聞かれれば、患者が本来接種した少量の摂取(真の値)に対して、申告が過大になる可能性もあります。
過去の曝露の想起や、面接者の聞き方に過ちがあると、曝露に関する誤分類が生じる可能性があります。
可能であれば「本人の申告を裏付けられる何か他のデータと合わせる」ことでバイアスを軽減させられます。
曝露の誤分類は研究結果(特にケースコントロール・デザイン)にバイアスをもたらす可能性があるので、
・誤分類を減らして、どのように正確な曝露の量を同定するか?
・この研究での曝露の量は、どのように定義するか?
PECOのEに曝露を放り込む時は、気をつけるようにしましょう。
今回は、PECOの E 曝露に関する記事でした!