
理学療法士が考える「高齢者の健康」 | リハビリテーションの役割とは?
こんにちは。
私は、回復期リハビリテーション病院で主に脳卒中などの脳疾患のリハビリを担当している理学療法士のジローです。
先日、とある偉い方にこんなことを言われました。
「高齢者のリハビリって意味あるの?」
「やって元に戻るの?」
「高齢者の社会復帰って、本当にできるの?」
正直、この言葉にはカチンときました。
でも、上手く反論できなかったんですよね。
自分にも悔しさが残りました。
確かに、「健康」や「リハビリ」の考え方が、昔のままだと高齢社会には当てはまらないかもしれません。
だからこそ、「健康」そのものを再定義することが必要ではないでしょうか?
今回は、高齢社会における「健康」の考え方について掘り下げていきます。
🔹 従来の「健康の定義」は高齢者に当てはまるのか?
まず、「健康」の一般的な定義を見てみましょう。
📖 広辞苑による「健康」の定義
「身体に悪いところがなく、すこやかなこと」
つまり、病気がないこと=健康という考え方です。
では、高血圧や糖尿病などの診断がついたら、もう健康ではないのでしょうか?
あるいは、脳卒中などで後遺症を持つようになったら、二度と健康には戻れないのでしょうか?
🔹 WHOの「健康の定義」とその変化
WHO(世界保健機関)は、1948年に次のような健康の定義を発表しました。
📌 WHOの健康の定義(1948年)
「健康とは、肉体的、精神的、並びに社会的に完全な良好状態であり、単に疾病や病弱でないということではない。」
これは、従来の「病気がない=健康」という考え方に、「精神的・社会的な要素」を加えた画期的なものでした。
しかし、約75年が経過した現在、高齢社会を迎えた日本では、さらに一歩進んだ「健康の捉え方」が求められています。
🔹 高齢社会における「健康」とは?
日本の平均寿命は、1950年代と比べて大幅に伸びました。
🕰 1950〜55年
男性:61.6歳
女性:65.5歳
📅 2020〜25年(予測)
男性:81.3歳
女性:89.2歳
高齢者の多くは、何らかの病気を抱えています。
✅ 生活習慣病(高血圧、糖尿病、慢性腎不全、高脂血症)
✅ 整形外科疾患(脊柱管狭窄症、変形性関節症、骨折の既往)
✅ 循環器・腫瘍疾患(脳卒中、心筋梗塞、がん)
しかし、多くの人は病気を持ちながらも、日常生活を普通に送っています。
つまり、「病気の有無」よりも「生活が維持できているか」が、健康の指標として重要なのです。
🔹 高齢者にとっての「健康」とリハビリテーションの役割
💡 「健康」の新しい視点
「病気がないこと=健康」ではなく、
✔ 病気があっても、それと共存しながら自分らしい生活を送れること
✔ 身体の機能を最大限に活かし、生活の質(QOL)を向上させること
これが、高齢社会における「健康」の考え方です。
💡 リハビリテーションの新しい役割
リハビリテーション医療の役割は、単に「失われた機能を回復させること」だけではありません。
✅ 生活の中で、今ある機能を最大限に活かし、自立度を高める
✅ その人なりの「できること」を増やし、自己実現を支援する
✅ 本人ができることが増えれば、家族や介護者の負担も軽減される
✅ 「支えられる存在」ではなく、「自分の力でできることがある存在」として、当事者の尊厳を回復する
この視点に立てば、「高齢者のリハビリって意味あるの?」という疑問への答えは明確です。
「意味あります。リハビリは、単に失われた機能を取り戻すことだけが目的ではありません。できることを増やし、自立を支援することで、本人の尊厳を守り、周囲の負担を軽減する。そうして、その人が自分らしく、輝ける人生を取り戻すためのものなのです!」
🔹 まとめ
✅ 従来の「病気がない=健康」という考え方は、高齢社会には合わない
✅ WHOの健康の定義を超え、「病気と共存しながら生活の質を維持すること」が重要
✅ リハビリの役割も「機能回復」から「今ある能力を最大限に活かす」ことへ変化している
✅ 理学療法士は、高齢者の健康を支える重要な存在である
高齢社会において、「健康」や「リハビリの価値」を、もっと広い視点で捉えることが必要です。
次に同じような質問をされたら、今度は自信を持って答えられそうです!