
理学療法士が健康教室で行動変容プログラムを導入するときに気をつけること
大学院で学んだ公衆衛生学の知識を元に、健康的な社会を作りたい理学療法士のジローです。
コロナが落ち着いてきたと同時に、方々から、健康教室の依頼が来ています。とてもありがたい限りです。
‖ 健康教室の講師や運営って難しくない?
まだ若かった頃から、このような事業に参加する機会をいただいていたのですが、実践した後、どうも手応えがなく、「これは、うまくいった」という実感が得られなかったんですよね。
おそらく、依頼された健康に対する知識や体操を、リハビリの学生に教えるような感じで実践していたからかもしれません。
若かった私には何が足りなかったのでしょうか?
現在では、大学院で学んだ行動科学の知識を埋め込みながら、
「新しい健康教室」の資料作成しています。
今、重要と思っていることを以下でシェアします。
‖ ①聞き手の、教育レベル・識字レベルに合わせること
同じ、高齢者に対する講演でも、高齢者自身の互助活動によってかなりの健康知識を持たれているサロンに講演に行ったことがあります。「そんな事は分かっているから、具体的に教えて!」と言われてしまいました。一方で、そのスライドを使い回すと、全く話が通じないことも。フロントの人と、事前によく打ち合わせをしておきましょう。
日本では、識字レベルはそれほど気にしなくても良いかもしれませんが、以前作った私の高齢者向けの転倒予防教室のスライドは、字が多く、小さかった。せっかくスライドを綺麗に作っても届いていませんね。
‖ ②地域の特性・文化的背景に適したものであること
「熱中症に気をつけて夕方歩きましょう」→ 薄暗く治安も悪い。道も悪いからなかなか歩けません
「スポーツジムを活用しましょう」→近くにそのような施設はありません
「友達を巻き込んで運動をしましょう」→周り近所の付き合いがありません
ただ運動しましょう!と言っても、これは言ったうちに入りません。
地域に合わせた具体的な戦略がなければ行動変容プログラムは受け入れられません。その地域で実践できそうなプログラムに手直しをしていきましょう。
‖ ③それぞれのライフステージに固有な脆弱性に焦点を当てること
同じ、高齢者を相手にしていても、前期高齢者では、すぐに要介護状態になる人は少なく、生活習慣病の悪化防止を加味したりするようなプログラム(健康増進)が必要でしょう。
一方、後期高齢者では、いかに生活力を維持できるかが重要と思います。参加者の年齢層も事前に調べておくと良いですね。

‖ ④長期にわたって行動変容が維持されることは困難であるを理解しておくこと
一時的に行動変容が起きたとしても、長期にわたって維持するのはとても難しいです。そのため、どのような仕掛けで維持してもらうかの作戦も事前に考えておいた方が良いですね。
今までの健康教室は、1回きりか、あっても数回の介入が多かったので、教室の内容を、ほとんど維持できていないと思います。行動変容とは程遠いと思います。
参加者が場所にうまく集合できなくとも、スマホ(アプリ)などを活用することで行動変容がしやすくなるかもしれません。ICTの活用はこれからですね。
‖ まとめ
健康に関するプログラムといえば、対象者も何をしたらいいのかは、大体分かっているんですよね。
しかし、それを対象者に実施していただく(行動変容)には、かなり戦略的にやっていく必要があります。
今までは、健康に重要と思われる教科書的な情報を伝える程度でした。
挑戦的に内容を変えて、新しい健康教室を作っていきたいと思います。
(今は、その作戦会議中!)
また、新しい動きになれば、報告させていただきます。