【臨床研究日記 11 】先行研究の精読と、産みの苦しみ
大学院で学んだ公衆衛生学・疫学の知見を元に、健康的な社会を作りたい理学療法士のジローです。
臨床研究の状況を逐一日記にまとめています。
7月末に思いつきで始めた研究も、ちょうど1ヶ月が経ちました。
今日(日曜日)は、午後から手が空いた時を狙って、研究に取り組んでいました。
両親が子供の相手をしてくれたこともあり、数時間まとまった時間が取れました。中々、まとまった時間が取れることは少ないので助かりました。
先日、論文の検索式を改良したところ、求めていたような論文がたくさんヒットしたので、今日は、CAしながら大量に読み込みました。
検索式、何のこと?(過去記事)
本ブログのCAは、critical appraisalの事です(過去記事)
■ ただの病院職員が臨床研究の時間をとる難しさ
私は、本当にただの民間病院の職員(中間管理職)です。
職場の臨床研究に関する空気感はゼロです。
平日は、家事が終わって寝るまでの1時間程度はこの研究に費やしていますが、子供達にも手がかかる年代なので、この辺りが限界です。
コロナ禍では、通常業務に加えて、コロナ患者さんへの直接の介入だけでも時間がかかるのですが、欠勤者のフォローなどに時間を取られ、業務過多でヘトヘトでした。
コロナ明けは、病院からの単位の圧力が激しいので、少しの時間も空きません。ゴリゴリに働いているので、肉体的にも精神的にもかなりきています。
その中での研究なので、もっとスパートをかけなければいけないかもですが、ま、大学の教員という訳でもないですし、研究が責務ではありません。今まで、大学院で学ばせてもらった事を社会に還元できるような活動なので、身体を壊さない程度に、細く長くやっていければと思っています。
大学院時代と比べて、「大学院の登校日は、研究するぞ!」とか、「中間報告はいつだぞ!」というものが無いので、タイムマネジメントが重要になります。
臨床研究の経験はあるのだから、一つずつ階段を上っていけばいいだけです。時間を見つけてコツコツとやっていきます。
※このブログは、臨床研究初学者の人に、その階段の登り方や順番を知るのに良いのかなと思っています。
■ 論文の精読
私の悪い癖が、いつも見切り発車をしてしまう事です。
もっと先行研究を読み込んでおけば良かった…。と研究の途中段階になってから解ることがしばしばです。今回は、同じ失敗をしないように、とにかく先行研究を読み切ろうと思います。
新たな分野なので、また勝手も違うので、とりあえず「100論文」を目標に読み込んでいこうと思います。
今日は、一日で8本が限界でした….(集中力ゼロ)。
(臨床研究日記なので、今日読み込んだ論文のタイトルは、この記事の最後に備忘録的に残しておくことにします)
■ 仮説検証脳からクリエイター脳へ
今回は、自分にとっては大きめの課題について挑戦してみようと考えています。
ライフワークとして年単位で取り組む課題になると思います。
すぐに得られるデータで、簡単な仮説検証では、得られるものが少ないので時間をかけてやっていこうと考えています。
ここで必要なのがクリエイター脳です。
そもそも、新しい物の創造といっても、既存の知恵を変革させたものに過ぎません。
先人達の知見を借りながら、更に良い方向を目指していこうと思います。
やはり論文の読み込みが重要ですね。やはり、「100本」ですね。
9月末までに100本読むぞー!(私の意志が弱い事は皆が知っているので、敢えて宣言してみました)。
■ 今日、精読した論文(ただの備忘録)
1、Five-year mortality and related prognostic factors after inpatient stroke rehabilitation: a European multi-centre study DOI: 10.2340/16501977-0991
脳卒中発症から6ヶ月後の機能の状態を高く保つと、5年後の死亡率が低下する。
2、Effects of augmented exercise therapy time after stroke: a meta-analysis
DOI: 10.1161/01.STR.0000143153.76460.7d
脳卒中後の最初の6ヶ月間に運動療法の時間を多くすると、ADLのわずかな改善につながる。ADLに有意な差を得るには、実験グループとコントロール群で少なくとも16時間の差が必要。
3、IMPACT OF REHABILITATION START TIME ON FUNCTIONAL OUTCOMES AFTER STROKE
DOI: 10.2340/16501977-2775
発症2日目にリハを開始した方が、3日目以降に開始した場合より結果が良好(DPCデータを使用し、患者の重症度が不明であるため、3日目以降の開始は、より重傷者が多い選択バイアスがあるのではないか。結果の解釈には注意が必要)
4、Increasing the amount of usual rehabilitation improves activity after stroke: a systematic review
DOI: 10.1016/j.jphys.2016.08.006
脳卒中後のリハビリの量を増やすと、活動性が向上するが、有益な効果を得るには大量の追加が必要である。差を出そうと思えば、通常群の約3倍が必要。
5、The effect of rehabilitation interventions on physical function and immobility-related complications in severe stroke-protocol for a systematic review
DOI: 10.1186/s13643-018-0870-y
重症の脳卒中の身体機能を改善し、不動に関連する合併症を軽減するためのリハビリに関する質の高いエビデンスは不足している。合併症予防については、リハビリで介入したため予防ができたのか、通常の回復で自然と予防されていたのか鑑別することができない。
6、Long-Term Improvements After Multimodal Rehabilitation in Late Phase After Stroke: A Randomized Controlled Trial
DOI: 10.1161/STROKEAHA.116.016433
脳卒中の急性期および亜急性期から、長期間経過した者でも、マルチモーダル介入をすると有意な改善がある。(マルチモーダル介入:音楽療法・乗馬療法)。アウトカムが、個人の自覚的な改善(SIS)であることには注意が必要。
7、Functional Gain After Inpatient Stroke Rehabilitation: Correlates and Impact on Long-Term Survival
DOI: 10.1161/STROKEAHA.115.010440
脳卒中患者に対する、専門的リハを行い、FIM利得が小さい人の方が、大きい人より長期フォローで早く死亡する。FIMの天井効果については十分な補正ができていないため(重症でFIM利得が少ない人と、軽症で天井効果でFIM利得が小さい人が混じっている)、結果の解釈に注意が必要。
8、Evaluation of an Extended Stroke Rehabilitation Service (EXTRAS): A Randomized Controlled Trial and Economic Analysis
DOI: 10.1161/STROKEAHA.119.024876
早期退院支援後に提供される、延長脳卒中リハビリサービス(EXTRAS)の臨床的有効性と費用対効果について、ADLのパフォーマンスを著しく改善させなかった。コストと、質調整生存年数への影響を考慮すると、手頃な追加手段となりうる。
粛々とやっていきます。