【RS】影響を受けた作品BEST3
こんにちは。REASNOTの紅葉です!
今回は、メンバーシップの掲示板で募集した「読みたい記事」から、「REASNOTが影響を受けた作品を教えてください」というリクエストに応えたいと思います。P.N.フワヌーバさん、ありがとうございます!
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私(紅葉)が、生きていくうえで影響を受けた作品はたくさんあります。今回は、あくまでREASNOT編集長として、「REASNOTを制作するにあたって影響された作品」を選びました!ご承知おきください。
1.村上春樹『アンダーグラウンド 』
私(紅葉)個人は、村上春樹先生のファンというわけではありません。
むしろ、苦手です。
子どものころから沢山の本を読み漁ってきましたが、どうしても受け付けない作家、作風、ジャンルがあります。村上春樹先生はその一人です。
どれだけ頑張っても、最後まで読めない。読み通しても、頭のなかが「?」でいっぱいになる。しんどい。。『ねじまき鳥クロニクル』とか『1Q84』とか、一生懸命取り組んできたのですが、未だに読破できていません。
そんな私が唯一まともに読み切って、とてつもなく大きな影響を受けた作品が『アンダーグラウンド』です。
本書に触れたのは、中学生のころでした。寝る前に軽い気持ちで読み始めたら止まらなくなって、徹夜で読みきったことを覚えています。
地下鉄サリン事件について、学校の歴史の授業で習いはしたものの、まったく遠い世界の出来事のようにとらえていた私にとって、本書に収録されている生々しいインタビューの内容は、衝撃でした。
「もし自分がこういう事件の当事者になったら?」と、考えたこともないようなことを考えるきっかけになりました。
それだけで十分以上のものをいただいたのですが、さらなる感銘を受けたのが、「はじめに」と「あとがき」の村上春樹先生の言葉です。
上述の動機以外にも、いくつかの理由が書かれていますが、結果として村上春樹先生は、この本を作ることを選ばれました。被害者たちを一人ひとり探して、会って、話を聞いて、書き起こして、一冊にまとめたのです。
「この心意気こそが『作家』なのかもしれない」と、震えました。
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REASNOTとして本書から受けた影響は、大きく2点です。
◆自分の読みたいメディアがないなら、自分で作ればいい
拙著『夢や「好き」と、ともに生きる』の「はじめに」で書きましたが、私は幼いころから疑問に思っていました。「時代と運命に愛された1%の人間しか、夢や「好き」とともに生きることはできないのか?」と。
たとえば、高校球児が「プロ野球選手になりたい」と夢見たとして、ドラフト会議で選ばれてプロ球団に入るのは大変です。入団後に活躍し、メディアで取り上げられ、有名になれるのはごく一部です。華々しく引退し、監督や解説者に転身して、生涯「野球」だけで暮らしていける人間は、さらに少数です。野球を好きだったり野球で身を立てたいと夢見たりした全ての人間から考えれば、1%にも満たない数でしょう。
では、そのほかの99%の人には、夢や「好き」とともに生きる資格はないのでしょうか?
そんなことはないはずです。
私は、99%の人のことが知りたいと思いました。とてつもない天才や、驚くべき幸運に恵まれた人、想像を絶する努力を重ねた人たちの「特別」な伝記ではなく、ほどほどの才能や運で、常識的に努力している「普通」の人が、どうやって夢や「好き」とともに生きているのかを。
できることなら一人ひとりについて細かいところまで、それこそ心臓の鼓動から息づかいまで、具体的に克明に知りたいと願っていました。
年齢を重ねるたびに、想いは募っていきました。しかし、いくら探しても、そういうことが書いてあるメディアは見あたりませんでした。
途方に暮れていたある日、ふと、子どものころに読んだ『アンダーグラウンド』を思い出したのです。あとがきの最後の言葉とともに。
おそらく村上春樹先生が本書に込めた祈りとは違う形だと思いますが、私は私なりに受け取ったものを、自分の祈りに変えました。
REASNOTを創刊したきっかけの重要な一つです。
そして、個人出版で終わらせず、商業流通させることにこだわってきた理由の一つでもあります。普通の本屋や図書館に並べられる本でなければ、「あなたのもとにそのまま送り届ける」ことは不可能ですから。
◆三人称(ルポルタージュ)形式での執筆
REASNOTを企画するとき、対談形式や一人称形式ではなく、三人称形式を採用したのは、本書の影響が大きいです。
私が『アンダーグラウンド』を読み、あの日あの地下鉄に乗った人々の物語を、自分自身の物語として感じたのと同様に、アーティストの皆さまのお話を臨場感ある文章で伝えたいと思ったのです。
ただ私には、村上春樹先生と同じ書き方をすることは不可能でした。あの感じそのままに、私が書きやすい形を探した結果が、現在のREASNOTです。
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できれば全ての人に、本書を読んでほしいです。地下鉄サリン事件について知るという意味でも、生きるとは何かを考える意味でも。特に、あとがきの『目じるしのない悪夢』は読みごたえがあります。
多感な時期に本書を読んだことは、私の人生にとって大きな財産になりました。ありがとうございました。引き続き精進いたします!
2.たつき『ケムリクサ』
実家を出てからずっと、テレビのない生活をしてきました。
大学進学のために上京が決まり、生活用品一式を買いそろえたとき「テレビは高価だから、落ち着いたら買おう」と後回しにしたのです。
いざ一人暮らしを始めてみて、テレビがなくても困らないことに気づきました。パソコンで動画は見られるし、ニュースもチェックできるし、大学の図書館で新聞を読むこともできました。ただ、話題のドラマやアニメをリアルタイムで見られないことだけが残念でした。
数年前、「配送無料」の文言につられてAmazonプライム会員になり、サービスの一つとしてドラマやアニメも見られることに気づいて、嬉しくなりました。早速、友人にオススメを聞いて、手当たり次第に視聴しました。
そのうちの一つが、たつき監督の『ケムリクサ』です。
たつき監督といえば、2017年に公開したアニメ『けものフレンズ』の監督として有名ですね。私は上述の通り、テレビがなかったので見ていませんが、名前は聞いたことがありました。
本作を観て、ドハマりしたあと、『けものフレンズ』も一気に見ました。泣きました。……その話は、いつかまたどこか別のところで。笑
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さて。『ケムリクサ』の良さはどこか?と聞かれると…うーん、言葉で説明するのは難しいんですよね。。全部いいです(真面目に書け)。
がっつりエンタメで面白い、という系統ではないと思います。しずしずした空気感に浸る作品です。
すべてが滅びたあと―…「日常」どころか人類のほとんどがいなくなって、街は破壊されて久しく、優しい風にさえずる小鳥や、青々とした海や森、降り注ぐ太陽の光さえ失われた世界で、何を希望に生きることができるのか。人の心に最後に残るものは何だろうか、と。
カタストロフィの奥底に残る、甘く優しい世界観が大好きです。
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REASNOTとして本作品から受けた影響は、理念そのものです。
◆キャッチコピーに「好き」を追加しました
現在のREASNOTのキャッチコピーは『どこまでも自由に、夢と「好き」をうたおう』です。季刊のフリーペーパーはもちろん、MOOK.01から.05まで、すべてのタイトル部分に書いてあります。
実は、創刊号である2019年3月号には『どこまでも自由に、夢をうたおう』としか書いていませんでした。
どこまでも自由に、夢をうたおう。それで過不足なく、ばっちり「REASNOTとは何か」を形容できると考えていました。
しかし2019年3月、『ケムリクサ』のクライマックス~最終話を視聴し、感動のあまり、キャッチコピーに「好き」を追加することを決めました。
夢という言葉は、未来志向ですよね。「あれがほしい」「こんな自分になりたい」「もっと大きな世界が見たい」。そのほとんどは、「目標」や「将来への希望」と言い換えることができます。
でも『ケムリクサ』を見ていて、私が「価値がある」と感じるものは、未来志向の感情や行動だけではないと気づきました。
何かを得たいとか成し遂げたいとかではなく、ただ歌うことが好き。目の前の人が好き。この場所にいることが好き。その源にあるのは、過去に積み上げてきた時間や、思い出のはずです。
また、過去も未来も一切関係ない「今ここ」の感情や行動も尊いものです。
それらを包括できる表現は、『ケムリクサ』のキーワードとなっていた「好き」に違いないと確信しました。
ゆえに2019年4月号から、REASNOTのキャッチコピーに「好き」を追加し、以降は交互に「夢」と「好き」を書いて、MOOK本では両方並べることにしたのです。
未来志向の「夢」と、過去や現在を志向する「好き」。
ふたつが揃って、REASNOTの理念は完璧に整いました。
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私が本当に作りたいものを作るために、最も重要な気づきを与えてくれた作品です。全12話(+α)とお手軽?なので、ぜひ視聴してみてください!
3.村上龍『13歳のハローワーク』
中学生のとき、本書の存在を知って、ワクワクしました。「私の知りたいことが書いてあるかもしれない!」と思ったからです。
しかし実際、図書室で本書を借りて帰って、がっかりしました。
いや、誤解を招いてはいけませんね。本書は面白いです。色んな仕事を知ることができたし、村上龍先生の言葉には勇気づけられました。
ただ私が知りたかったのは、たとえば「○○業界は残業ほぼゼロで、定時は9時~17時だから、終業後にライブ活動をしたい人にオススメ!」とか、「◇◇業界では××のスキルや性格が重視されるから、学生時代は絵描きとして同人活動に打ち込んできた人にぴったり」とか、「△△会社は福利厚生が充実していて、社員は◇◇スタジオを割引で使えるから、家で楽器を練習できない人にオススメ!」みたいな情報でした。
いや、そんなことが書いてある本、あるわけないんですが。笑。
実際に一般人が音楽や芸術を続けるために必要なのって、そういう情報だと思っていて。当時の私は、理想論も一般論も、聞き飽きていたので。
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本当は今も、可能なら、そういう本が作りたいと思っています。むしろポータルサイトかな。「音楽を一生続けたい人向けのマイ○ビ新卒」とか「アートを副業にしやすい本業へ転職するためのdo○a」みたいな。
ただ、難しいですね。大人になればなるほど痛感します。情報はすぐ変わるし、入社してみないと分からないことも多すぎます。。
求人票のデータ通りに休みは付与されるけど、人間関係がいまいちだったりで実際は休めない職場もあれば、有給の付与日数は少ないけど人間関係良好で休みがとりやすい職場もある。
結局は、人と時と場合と場所で変わって、「ここに行けば大丈夫」とか「こうすれば大丈夫」みたいな話じゃ、ないんですよね。
だからせめて、「私はこうしたよ」「俺のときはこうだったよ」という実在人物の体験談があれば、若者の参考になるのでは?と思いました。それこそ、10代のころの私が心の底から求めていた本なのではないか、と。
だから、そうですね。本書から受けた影響、という言葉では上手くまとめられません。本書そのものがREASNOTの制作のきっかけの一つであり、ある意味で、オマージュさせていただいた作品です。
◆私(紅葉)が作った『13歳のハローワーク』=REASNOT
昨年、『夢や「好き」と、ともに生きる』を執筆するに当たって、もう一度本書を読みなおしました。2003年版と、2010年の改訂版の両方を。
改めて、村上龍先生のお言葉は、正しいと感じます。
「できるだけ多くの子どもたちに、自分に向いた仕事、自分にぴったりの仕事に就いてほしい。そんな未来を選び取るための知識を提供したい」という村上龍先生の志は、立派だと思います。心から賛同します。
でもやっぱり、何もかも仕事に結びつける必要はない、とも思います。
お金にならないものに価値がないなんてことはありませんよね。昭和っぽいたとえかもしれませんが「毎日働いて生活費を稼いでくる旦那さん」と、「専業主婦として家事と子育てを頑張る奥さん」は対等であるように、「仕事でないものには意味がない」なんてことはないはずです。
絵を描くことが好きな子どもが、漫画家やアニメーターになるのは素敵なことです。それと同じくらい、まったく関係のない業界に就職して9-17時で働き、余暇に好きなだけ漫画を読んだりアニメを見たり、欲しいだけグッズを買ったり、気の向くままファンアートを描きまくったりする大人になることだって、同じくらい素晴らしいです。
そういう人たちがいないと、誰がどんなにいい漫画やアニメを作っても、読んだり見たり楽しんでくれる人がいないわけで、つまらないです。全員がプロのクリエイターで、お互いの作品を評価し合うっていうのは刺激的です。しかし、「そうではない人」も絶対に必要な存在です。。
「好き」を仕事にすることは、それとともに生きる方法の一つですが、唯一の正解ではないと考えます。
……いや、この本はこの本でいいのです。こうだからこそいいのです。「それゆえに私はREASNOTを作った」という、それだけの話です。
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13歳の子どもはもちろん、彼らを導き守るべき大人にも、ぜひ読んでほしい本です。大切なことを教えてくださり、ありがとうございました!
まとめ
いかがでしたでしょうか?
REASNOTとは何か、またひとつ、皆さまにお伝えできたような気がします。
これからも、多様な夢や「好き」をうたう人々と出逢っていきたいです。今後ともどうぞよろしくお願いします!
おまけ
ここからはFan Club会員の方向けに、ちょっとした小噺を。
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