【RS】ローリスクで歌手を目指す人生設計
こんにちは。REASNOTの紅葉です。
今回は、メンバーシップの掲示板で募集した「読みたい記事」から、下記の質問に答えたいと思います。P.N.中1ママさん、ありがとうございます!
お子さんを思う親御さんの気持ち、分かります。ローリスクで歌手を目指しつつ最終的に幸せになれそうな人生設計をするうえで、どこに気をつければいいのか。せっかくの機会なので、がんばって考えてみましょう!
未来のことは分からないので、2024年3月現在の社会情勢が、緩やかに変化しながら続くと仮定して書きます。戦争や災害、新しい科学技術の普及など、劇的な変化は想定していません。ご了承ください。
また、本記事は私の独断と偏見に基づいて、書きたいように書きます。お子さんへの伝え方はご自身で考えてくださいね!よろしくお願いいたします。
0.前提
芸術で身を立てることは非常に難しいです。拙著『夢や「好き」と、ともに生きる』でデータを挙げた通り、99%、不可能です。歌手も例外ではありません。メジャーデビューして大ヒットを飛ばして誰もが知る有名な歌手として生きていけるのは、天文学的確率を乗り越えた一握りだけです。
一つ注意したい点として、「1%の成功者」という言葉は、「芸術で身を立てたいと考えている全ての人間に、等しく1%の可能性がある」という意味ではありません。
特に音楽業界は、若さが命です。具体的には22歳、いわゆる大学卒業までの年齢に、ほぼすべての勝負が決します。音楽業界における成功者のほとんどは、22歳までに成功の糸口を掴んでいます。大手芸能事務所に所属したり、SNSでバズったり、自力で音楽活動を黒字化できていたり。
詳しくは過去記事もご覧ください。
ここに抽選箱があるとしましょう。1等の景品は「歌手としての成功への糸口」です。歌手志望者はオーディションを受けたり、動画をSNSへ投稿したりするたびに、この抽選箱からくじを引いているわけです。
恐ろしいことに、この抽選箱は、くじを引く人間の年齢によって、箱の中に入っている1等の本数が変わります。つまり年齢によって、夢が叶う確率は違うということです。
勝手に数値の目安を出します。22歳までの人は当選確率0.98%、23~25歳の人は0.01%、26歳以降の人は0.0099…%くらいかな。
……いやもし「85歳まで畑仕事一筋に生きてきましたが、ここから寿命が尽きるまでの間に歌手を目指します!」って人がいたら、物珍しさで注目されて、成功確率が跳ね上がるかもしれないけど……。
*
とにかく、本気で歌手になりたいと願う13歳に「大人になってから挑戦しようね」と言うのは、その芽を完全に摘み取るのと同義です。
逆に「じゃあ今、全力でやろう」と伝えるべきです。
「22歳まで、全力で歌手を目指そう。もし叶わなくても『良い歌』をきわめる道に終わりはないし、一生歌い続けられたらいいね」と。
1.中学時代(13~15歳)
①ピアノかギターを練習する
音楽的センスを磨き、色んな楽曲の構成を学び、音感を鍛え、将来の選択肢を広げる。楽器を弾けて損することは一つもありません。
どんな楽器も素晴らしいですが、今回は歌手を目指すので、弾き語りしやすいピアノもしくはギターに絞りました。
歌いたい人ほど、楽器を学ぶべきだと思います。私自身、ピアノを弾くようになってから、歌が上手くなった実感があります。
*
習得する方法は自由です。音楽教室に通ってもいいし、弾ける友達に教わってもいいし、本やインターネットで調べて独学でもいい。とにかく3年間、みっちり楽器に触れてください。
中学を卒業する時には、最低5曲、暗譜した状態で弾き語りを披露できるようになれば、目標達成です。
②プロに歌を習う
カラオケやお風呂で歌いまくるのもいいですが、本気で歌手を目指すなら、早いうちにプロの指導を受けてみてください。
呼吸法や喉の使い方の癖は、なかなか治りません。それが個性につながる場合も多いのですが、変な癖をこじらせると、声が出なくなったり健康を損ねたりする場合があります。
将来に禍根を残さないために、とりあえず一回、「ちゃんとした」人について学んでみてください。合唱部で顧問に見てもらうもよし、ボイストレーニングスクールの体験授業を受けるもよし。
その指導が合わないと感じたら、あとは独学でもいいと思います。
③思い切り遊ぶ
シンガーソングライターは、個性を生かして曲を作ります。ボーカリストは、その人だけの声や歌い方で、多くの人を魅了します。
個性や表現の源になるのは、「自分だけの」想いや経験です。
家族と話して、旅行して、友達と遊んで、学校行事を満喫して、日々をめいっぱい楽しんでください。
様々な経験が唯一無二の「あなた」を作り、「あなたにしか歌えない歌」を生み出すことでしょう。
年齢を重ねれば重ねるほど、やるべきことが増え、遊ぶ時間は減ります。歌手として成功したら、なおさらです。今のうちに、めいっぱい遊んでください。これは22歳まで、いや一生、意識的に続けてほしいことです。
ただ犯罪行為や、人の道に外れることはしないでくださいね。
有名になってから「若いころに違法薬物を使っていたらしい」とか「反社会的勢力とつながりがあるらしい」とか「異性関係が派手で三股四股しまくっていたらしい」とか、週刊誌に書き立てられちゃいますよ。
たとえ誰にも知られなくても、自分は自分の悪事を分かっています。それらは、いつかどこかで自身に跳ね返ってくるものです。
④恋愛を楽しむ
一目惚れ、片思い、幸せな両想い、すれ違い、失恋。様々な経験を重ねるたびに、味わい深いラブソングが歌えるようになるでしょう。今、日本で一番ヒットしやすいのはラブソングです。それに、自分の人生を豊かにするうえで、恋愛は欠かせない要素の一つです。
ここまでだと③と同じ理由ですが、あえて分けたのは、「セーフティネットを作る」という意味合いもあるからです。
現代の日本社会において、女性は結婚や妊娠出産によってライフステージが完全に変わりがちです。悪い方にとらえると、「ずっと勉強や仕事をがんばってきたのに、キャリアが全部失われたわ!」ってことになります。
しかし良い方にとらえると、勉強も仕事もがんばらなくても、何の成果も出せていなくても、全部チャラになります。パッとしない人生を送ってきた女の子でも、結婚すれば問答無用で「奥さん」になれるし、妊娠出産できれば「お母さん」になれます。これを利用しない手はありません。
22歳まで音楽に心血を注いで、延長戦もがんばったけど、どうにもならなかったときの逃げ道の一つとして、恋愛を用意しておくのです。
中学時代の同級生や元カレは、その際の有望な選択肢になります(もちろん相手次第です)。そこまでいかなくても、若いうちから恋愛経験を積むことで、きっと将来の婚活に役立ちます。
22歳まで音楽に心血を注いで延長戦も頑張って、気づいたら25歳になっても彼氏いない歴=年齢、なんてことになると、婚活でも苦戦すること間違いなしです。もちろん、相手次第ですが。。
高校でも大学でも、良い人がいたら、良い恋愛してください。いいですか、「彼氏を作って遊びまくれ」と言いたいわけではありません。真剣に目の前の人を愛する経験でなければ、意味がないと思うからです。
⑤勉強する
中学校までは義務教育です。先祖代々、偉い人たちが「日本で、世界で生きるために、子どもたちに学んでほしいこと」を考え、まとめ上げた内容を教えてくれます。ちゃんと全部吸収しましょう。
最低限、クラスの真ん中くらいの成績はとりたいところです。もちろん成績は良ければよいほど、今後の進路選択の幅が広がります。良い会社に行くためには良い大学に行く、良い大学に行くために良い高校に行くのです。
きっとあなたには、歌以外にも好きなものや、興味のある分野があるはずです。知識が増えれば、含蓄のある歌詞が書けるようになったり、独特な着眼点のメロディが思い浮かぶかもしれません。がんばってください!
2.高校時代(16~18歳)
①オリジナル曲を作る
幾つかのカバー曲を弾き語れるようになっていれば、楽曲の構成などへの理解も深まっているはずです。作詞作曲編曲に挑戦し、自分だけのオリジナル曲を完成させてみましょう。
その過程を楽しめれば、シンガーソングライターになる道が開けます。楽しめなければ、今後はボーカリストとして、誰かに楽曲提供してもらう方向へ進みましょう。
自分の適性を知るためにも、挑戦が必要です。高校を卒業する時までに3~5曲、オリジナル曲を弾き語りできるようになれば目標達成です。
②アーティスト名を決める
世界へ打って出るにあたって名乗る、アーティスト名を決めてください。本名を使ってはいけません。理由は以前書いた通りです。
名乗るだけでテンションが上がってしまうような、最高の名前を考えることをオススメします。
③人前で演奏を披露する
これまでは一人で練習することが多かったと思いますが、ここからは、積極的に人前へ出ていきましょう。
たとえば高校の友達とバンドを組んで、文化祭で歌う。近所のライブバーへ行って、歌わせてもらう。スマホで「歌ってみた」動画を撮って、SNSに投稿する。ライブ配信をする。なんでもいいです。
自分がやりたい方法や、環境的にやれることを、どんどん実行しましょう。中学時代に練習したカバー曲の弾き語りを中心に、オリジナル曲も披露できたらいいですね。
ライブの場数を踏んで、演奏力はもちろん、アドリブ力や度胸を鍛える。動画編集や配信の技術を磨く。リアルとバーチャルの双方を駆使して、アーティストとしての能力を高めていきましょう。
目標は、高校を卒業するまでに、「ホーム」を作ることです。
ライブハウスやイベントの関係者と親しくなり、少ない費用負担で、良い音響で演奏できる場所を得る。X(Twitter)やInstagramなら、インフルエンサーと呼ばれる「フォロワー数1,000人以上」を達成する。YouTubeやTikTokなら、収益化条件をクリアする。どれでも構いません。
高校卒業後に本格的な活動を行うために、環境を整えていきましょう。
④オーディションを受ける
今の日本社会で歌手として成功する方法は、大きく分けて「自ら知名度を稼ぎ、お金も稼ぐ」か「誰かに売り出してもらう」かの2通りです。
前者については、目標③でスタートを切りました。もちろん後者にも関わります。業界関係者は、SNSのフォロワー数が多かったり、バズったりしているアーティストを日々チェックしているからです。
より直接的に、業界に自分を売り込む方法が、オーディションを受けることです。インターネットを調べれば、色んな事務所や企業がオーディション情報を掲載しています。積極的に応募しましょう。
しかし、何でもかんでも応募すればいいわけではありません。
周囲に相談しても名前を聞いたことがなく、いくら調べても実績が見つからない小さな事務所やイベントは避けましょう。事務所への所属費用や、イベントへの参加費用を請求してくるところも避けましょう。これらは詐欺の可能性が高いです。
まあ、昨今はエージェント契約などもありますが…。ちゃんと調べて、人に相談して、まっとうなところにだけ関わるようにしましょう。
⑤勉強する
大学へ進学するために、一生懸命勉強しましょう。
進学理由の一つ目は、時間稼ぎです。あなたはまだ「歌手として成功する=生計を立てる」という夢を目指している途中ですから、合法的に(?)無職でいられる大学生として、扶養家族で過ごした方が都合がいいです。
二つ目は、夢が叶わなかったときのセーフティネットを作るためです。大本命の「歌手として成功する」が上手くいかなかったとき、「それならこの業界で働きたい」「こんな仕事をしたい」と、次の夢を叶えましょう。
学歴がちゃんとしていれば、就活に有利です。また、どんな業界でも、有名大学を卒業すればするほど、OBOGが会社のなかで高い地位についている場合が多いため、贔屓してもらえる確率があがります。
さらにいえば関東近郊、東京まで片道1時間半以内に存在する大学が望ましいです。なんだかんだいっても、有名歌手になるなら、上京したほうが話が早いですから、進学ついでに狙いましょう。
つまり候補に上がるのは、茨城大学・千葉大学・横浜国立大学・埼玉大学・一橋大学・お茶の水女子大学・東京大学など、関東近郊の国公立大学。私立ならGMARCHや早慶ですね。がんばってください!
3.大学時代(19~22歳)
①活動形式を定める
一口に「歌手として成功する」といっても、幾つかのパターンがあります。ここでは簡単に、5つに絞りましょう。私が考える難易度順に記します。
1.バンド・ユニットのボーカル(作詞作曲/楽器演奏/歌唱)
2.シンガーソングライター(作詞作曲/楽器演奏/歌唱)
3.シンガーソングライター(作詞作曲/歌唱)
4.バンド・ユニットのボーカル(楽器演奏/歌唱)
5.ボーカリスト(歌唱)
バンドやユニットとして成功するためには、上記の音楽的な項目に加えて「コミュニケーション能力」や、「人との出会いに恵まれる」という特殊能力が必要です。一人で全部やればいいシンガーソングライターより、成功するのは難しいと思います。競争率という観点で見れば、また変わってくるかもしれませんが。
自分がやりたいこと、やりたくないこと、できること、できないこと。これまでの経験を振り返りながら、おおよその方針を決めましょう。
残された時間は4年しかありません。闇雲に行動して、時間を浪費してはもったいないです。バンド一本に絞るなり、バンドとSSWの両方の線を狙うなり、何かしら戦略を立てて行動しましょう。
②がむしゃらに成功を目指す
どうすれば歌手として成功できるのか、正解は誰にも分かりません。やれることは全部やるしかないでしょう。
具体的には週3回以上、ライブハウスで演奏したり、配信ライブを行ったり、動画を投稿したりしましょう。頻度は高ければ高いほどいいです。
できれば月1曲は新しいオリジナル曲を出して、三ヶ月に1回はシングルを出して、年1回はアルバムを出しましょう。そのたびにMVも出しましょう。
カバー動画も出しまくりましょう。オーディションも受けまくりましょう。信頼できる業界人に見つけてもらえるといいですね。
何度も言いますが、残された時間は短いです。4年間、あらゆる方法で攻めまくりましょう。
③音楽活動を黒字化させる
具体的には、大学4年生になるころには、月に10万円程度、音楽活動で収益を上げることを目指しましょう。収入源はCDやグッズでも、ライブのチケット販売でも、配信での投げ銭でも、なんでもいいです。
よかったら過去記事も参考にしてください。
高校生時代は、やりたいことをやりたいようにやって、存分に楽しんだはずです。大学生はその段階を卒業し、マネタイズを意識して、マーケティングと自己分析に取り組みましょう。
「自分の顔なら、こういう髪型やファッションをしたほうが受けるな」「今の客層なら、こういう曲を出した方が受けるな」「今の流行はこうだから、自分はこういう歌い方をしよう」「この人と仲良くなれば利益が大きそうだから、上手く付き合おう」などなど。
「どうすれば売れるのか」を一番に考えて、音楽をしましょう。これが苦痛であれば、「歌手として生計を立てる」ことは諦めたほうがいいです。
④大学を卒業できるようにする
せっかく進学したのに、単位が足りなくて卒業できなければ、意味がありません。ちゃんと大学に通って、講義を受けてください。
「どこにそんな時間があるんだよ」と思う人もいるでしょう。
ここで重要になるのが、学部・学科選びです。医学部や薬学部のように、実験や研究で時間をとられるわけにはいきません。教育学部も教育免許取得のために必修の科目が多く、教育実習などが大変です。
つまり、受験前からのリサーチが大事です。自分の学力で狙える範囲で最も偏差値が高く、可能な限り楽に卒業できる大学・学部・学科を狙ってください。
……あんまり具体的に書くと、問題が起きそうですね。どうしても気になるという方は、個人的にご連絡ください。笑
4.運命の分かれ道(22歳)
さて。精いっぱい頑張っても、99%の人は成果が出ないのが、音楽活動です。22歳、大学卒業目前となったところで、一度、立ち止まりましょう。
延長戦に突入すべきかどうか、考えるポイントをお伝えします。
①音楽活動は黒字化できていますか?
メジャーデビューして大ヒットを飛ばしまくる歌手でなくとも、それなりに能力があって、時間をかけて、頭を使って活動していれば、日々の活動を黒字にすることはできるはずです。
13歳から9年がんばってきてなお、このラインをクリアできていないのならば、あなたには、音楽だけで生計を立てることは難しいです。今後は「お金を使う趣味」として、音楽を楽しんでいきましょう。
②今でも音楽は好きですか?
長く頑張り続けた結果、「これまでの努力を無にしたくない。報われたい」という想いや、プライドだけで立っていませんか。
今でもまだ、音楽は好きですか?
試しに一週間くらい、朝から晩まで、カラオケのフリータイムで8時間歌い続けてください。楽しいですか?それを一生続ける覚悟を持てますか?
少しでも不安を覚えるならば、今後は「余暇を使う趣味」として、音楽を楽しんでいきましょう。
③音楽以外にやりたいことはありませんか?
中高時代や大学での勉強を通じて、興味を持った職業はありませんか。友人と過ごす時間に安らぎを覚え、「ずっと一緒にいたい」と思ったことはありませんか。恋人との将来を考えたことはありませんか。
少しでも心惹かれる他の夢があるなら、ぜひ優先してください。それらは生活の幸福度に直結し、成功確率も、音楽での成功にしがみつくより高いはずです。これからは「プラスアルファで人生を豊かにする趣味」として、音楽を楽しんでいきましょう。
**
色々と考えた結果、「ここまでにしておこうかな」と思ったなら、1年ほど留年して、しっかり就職活動をすることをお勧めします。卒業してから就職浪人をするより、幅広い企業にアプローチできるからです。親御さんに頭を下げて、アルバイトをして、学費を捻出してください。
あなたが、次にどんな夢を見るのか楽しみです。おつかれさまでした!
***************
「それでもまだ、諦めきれない」という方は、延長戦に突入ですね。良いと思います。どうせ0.98%しかなかった可能性が、0.01%以下になるだけです。大して変わりません。もうちょっとだけがんばってみましょう。
ひとつだけ、覚えていてください。
あなたはもう卵ではありません。
これまでのあなたは「何が生まれるか分からない」存在でした。無限の富を産む鵞鳥かもしれない、幻の鳳凰かもしれない。「もしかしたら金の卵かもしれない」から、大事にしてもらってきた部分が大きいのです。
それが学生さん、22歳ごろまでの特権です。
社会に出るということは、卵から生まれ出て、一羽のヒナとして歩み始めるということです。あなたは無限の富を産む鵞鳥でも、幻の鳳凰でもなかったのです。しかし、悲観することはありません。
金を産めないなら、地下鉱脈を探して掘り当てればいい。虹色の羽を持たないなら、染料を採ってきて染めればいいのです。自分の選択次第で、未来は変えられるはずです。
まだ見ぬ価値を評価されるのではなく、これからは、自分で自分の価値を作っていきましょう。
*
さて。一般人が延長戦をする方法は、ざっくりわけて2通りです。
①正社員として就職した上で、音楽での成功も諦めない
②とりあえず非正規で食いつなぎつつ頑張る
個人的には①をお勧めします。生活基盤を安定させることで、音楽活動もやりやすくなります。最近はインターネットも発達し、仕事と音楽の両立は難しくなくなりました。
何より、②はしんどいです。非正規の仕事で家賃や光熱費を全て賄おうとすると、結局一日8時間・週40時間ほど働くためになり、「自由を得るために非正規を選んだはずなのに」ってなりがちです。
かといって、大学を卒業してなお仕送りをもらったり、実家にお金も入れずに住み続けたりと、親のすねをかじり続けるのはよろしくありません。
まあ親御さんの理解を得られるなら、25歳くらいまでは、甘えてもいいかもしれませんね。人生100年時代ですし。あとでしっかり恩返ししましょう。
5.延長戦(23~25歳)
目標①よりがむしゃらに成功を目指す
どうすれば歌手として成功できるのか、正解は誰にも分かりません。4年間やってもダメだったのなら、もっとがむしゃらにやるしかないでしょう。
正社員として働きながらの活動だと、時間は制限されてしまいますが、金銭面は安定するはずです。より良い機材を買ったり、優秀なスタッフを雇ったりして、学生時代にはできなかった取り組みをしましょう。
正社員にならなかった人は、代わりに一日8時間、週40時間は音楽をしましょう。そのために非正規の道を選んだはずです。ライブハウスで演奏したり、配信ライブを行ったり、動画を投稿したりしましょう。頻度は高ければ高いほどいいです。
できれば月2曲は新曲を出して、ニヶ月に1回はシングルを出して、半年に1回はアルバムを出して、MVも出しましょう。オーディションも受けまくりましょう。信頼できる業界人に見つけてもらえるといいですね。
あなたは既に「22歳以上である」という大きなハンデを負っています。
例として、とあるオーデイションの最終選考に、19歳と23歳が残ったとします。どちらも募集条件をすべてクリアしていて、能力的にも人格的にも、今回の案件にぴったりな人材だとします。
「SNSのフォロワー数1000人・動画の再生回数1万回」のそこそこ歌が上手い19歳と、「SNSのフォロワー数3000人・動画の再生回数3万回」でかなり歌が上手い23歳だったら、ほぼ間違いなく前者が合格します。
後者が合格しても、すぐ詐欺まがいの話にもっていかれたりします。その裏で、前者にはもっと条件の良い話が行ったりします。
22歳以上の人は「ちょっと優れてる」くらいじゃだめなんです。圧倒的な実力と個性とファンの数で殴りにいかなければ。「SNSのフォロワー数30000人・動画の再生回数30万回」くらいになってはじめて、19歳に勝てる可能性が出てくると思います。がんばってください。
目標②音楽活動の収益で生計を立てる
具体的に言えば、音楽活動だけで年収400万円以上を目指しましょう。詳細は過去記事も参考にしてください。
メジャーデビューしなくても、大ヒットを飛ばさなくても、この世界に生きるほとんどの人に知られなくても、歌手として生きることは可能です。
あなたの歌に価値を感じ、お金を払ってくれる人がいるならば。
熱心なファンが500人くらいいれば、ぎりぎりなんとかなります。最悪、たった一人のパトロンを掴むだけでもいいのです。
①の結果が②になるのか、②の結果が①になるのか分かりませんが、「自分の食い扶持を自分で稼ぐ」のは大人の基本です。がんばってください。
目標③仕事を頑張る
正社員になった人は、そちらの仕事もおろそかにしないでください。最低限、周りについていってください。社会人としての礼儀作法を学んだり、メールの書き方を覚えたり、交渉術を磨くことは、音楽活動にも必ず生かされます。結局、ビジネスの世界は、最後は人と人の付き合いだからです。
同じくらい歌が上手くて、片方は礼儀知らず人、片方は礼儀正しい人だったら、後者が選ばれることがほとんどです。
*
非正規を選んだ人は、できれば「本命の職場」を作ってください。具体的には、一つのアルバイト先で週3~4日、一週間あたり30時間以上働き、雇用保険と社会保険に加入しましょう。
社会人として最低限の義務を果たすと同時に、夢が叶わなかった場合のセーフティネットを作るのです。
いいですか。音楽活動ばかりに現を抜かして、数か月おきにアルバイト先を変えて、「毎月○万円くらい稼げればいいや」と考えていては、先がありません。今後、正社員になりたいと思うタイミングがあっても、入社試験に合格できなかったり、入社しても馴染めず辞めてしまったりします。
アルバイトなりに責任感を持って、一か所でしっかり働いていれば、必ず得られるものがあります。勤続年数が長ければ、就活でも有利です。雇用保険と社会保険を支払っておけば、助けられる場面がきっとあります。
6.運命の分かれ道(26歳)
さて。精いっぱい頑張っても、99%の人は成果が出ないのが音楽活動です。26歳になったところで、一度、立ち止まりましょう。
もし、この時点で「音楽活動だけで年収400万円を達成する」ことができているなら、音楽専業で生きていくのもいいと思います。
ただ、なかなかにハイリスクです。今は良くても、今後AIなど科学技術が発展し、居場所がなくなるかもしれません。ケガや病気で歌えなくなるかもしれません。この記事の趣旨としては、お勧めしづらい選択です。
*
まして、ここまでに成功の糸口を掴めなかった人が、「歌手として成功する」夢を追い続けることは、あまりにもハイリスクでお勧めできません。
とりわけ、親に甘えて来た非正規の方は、立ち止まるべきです。
20代後半になってまだ経済的にも精神的にも自立できていないなんて、「夢を描くアーティスト」ではなく「現実逃避したままの子ども部屋おじさん・おばさん」です。
そんな人の歌が、どれだけの人を感動させられると思いますか?
「俺の人生、あいつよりはマシだな」と見下される対象になったり、馬鹿にされる方が多いでしょう。
*
26歳の大卒なら、まだ、いくらでも就職先が見つかります。今後は、まっとうに働いて生計を立てつつ、家族や友人や恋人を大切にし、たくさんの趣味を楽しみながら、ぜひ音楽も続けてください。
単なる趣味でもいいし、副業でもいい。
いつかどこかで何かがバズって、プロへの道が開ける可能性は、ゼロではありません。99.999999999%は成功できないけれど、0.000000001%くらいは常にチャンスが転がっているのが、音楽業界だと思います。
「うっかり当たればもうけもん」くらいの精神で行きましょう。
**
ここまで頑張りぬいた経験は、あなたの人生においてかけがえのない財産となるでしょう。おつかれさまでした!
あなたがいつまでも、あなただけの夢や「好き」とともに生きていけることを願っています。
7.まとめ
いかがでしたでしょうか?
「ローリスクで歌手を目指す人生設計」を真面目に考えました。お役に立ちましたら幸いです。
私自身、シンガーソングライターを目指して延長戦までやった人間です。色々ありましたが、今はまっとう(?)に働いて、同年代の平均年収以上は稼ぎつつ、好きなことを好きなようにやれています。
これからも、多様な夢や「好き」をうたう人々と出逢い、お話を聞きながら、楽しく生きていきたいと思っています。
今後ともどうぞよろしくお願いします!
おまけ
ここからはFan Club会員の方向けに、ちょっとした小噺を。
ここから先は
REASNOT Fan Magazine2
毎月1~2回更新。2023年4月以降のREASNOTの編集後記を中心に、編集長のゆるふわコラムをお届けします。
お読みいただき、ありがとうございます。皆さまからのご支援は、新たな「好き」探しに役立て、各地のアーティストさんへ還元してまいります!