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世界の美しい瞬間 1
1 バスに乗って
不定期な日記のように、
美しいと感じるものごとを集めてみたいと思った。
写真なら、インスタでする方がいい。
けれど、わたしの感じる美しいとは、
ややこしいようで、シンプルな気もする。
文字で綴りたい。
誰にも見せることのない日記なら、紙に書く。
でも、これはコレクションになるかも知れない。
集めたものを、そっと展示しておく。
そんなふうに、してみたい。
ふとそう思い、なんとなく始めた。
以下は、
わたしの世界にあった、美しい瞬間である。
☆☆☆
先日、久しぶりにバスに乗った。
わたしの住む京都は、とても外国人観光客が多い。
というか、年々増加の一途だ。
バスのメイン路線は様々な言語が飛び交う。
この日も、途中のバス停から4人の外国人の方たちが乗って来た。
その内お二人は大人のご夫婦(推定30代) 。
後お二人は、中国系の十代半ばの女子二人。
四人ともがフランス語を話していらした。
そして、前方の席へと内三人が腰かけ、
女の子が一人立っていた。
ここはわたしの勝手な想像なのだが、
なんらかの国際交流的な外国人を受け入れている、日本にお住まいのご夫婦のお家に、
十代女子二人がプチ滞在をしたのかな、
という雰囲気。
女子二人は背の高くて頼れそうなかんじの子と、
小さくて細い子。
どちらもわたし目線ではキュートだ。
四人ともが(何を話しているのかはさっぱりだが)とても楽しそうにしていた。
車内はやや満席に近かったので、
女子二人のうち、立っていた背の高い子の方が、
わたしより後ろの席へと離れた。
と、小さい子が、
その背の高い子の動きを、すい、と目線で追う。
友達のことが心配なのかな、と思った。
その後、京都駅が近付き、
背の高い子が再び前の席へと移動して行くと、
小さい子が、それまでご夫婦に見せて嬉しそうにしていたスマホの写真を背の高い子に、
同じく嬉しそうに見せた。
そのとき、
彼女たちの目線の距離が、ふんわりと近付き、
ちゅっ、と
口付けを交わしたのだ。
何もてらうことなく、ためらいもなく、
ごく自然で、彼女たちの日常だった。
互いの求めは、全く比重の変わらない、
そんな距離の近さだった。
その光景は、
幸せが行き交ったもので、
とても純粋で、
とても美しく感じたのだ。
その後四人はバスを降り、
彼女たちは自然と求め合い、手を繋ぎながら駅へと向かって行った。
そして、ああ、と思い当たった。
あの小さな子の、背の高い子を追った目線の意味と、心の動きを。
純粋に、何の損得勘定もなく、
互いの心が行き交う相手に出会えるのは
奇跡みたいな確率かも知れない。
どちらに偏るでもなく、対なる想い。
十代で、彼女たちは見つけたのかも知れない。
もしくは、十代だからなのかも知れない。
彼女たちの未来のことまでは分からないけれど、
その二人の存在が、
とてもピュアで、心が洗われたのだ。
わたしは異性が好きな個性の持ち主だが、
損得の勘定なく、相手の持つ条件でなく、
ただ、その存在を尊重し、愛し合う。
そのような相手に出逢うすばらしさを
改めて見せてもらえた気がした。
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