世界の美しい瞬間 21
21 多様性
数年来のお友だちであるNさんが、久々に京都にて、アロマのワークショップを開いた。
Nさんは元々京都にお住まいだったが、今は旦那さんの地元である北海道にいらっしゃる。
彼女は昔からもそうであるが、年々飾らない、とてもすてきな女性にどんどんなって行くので、お会いするのがとても楽しみなお一人だ。
きっと、北海道の景色も、より彼女を彼女らしく美しくして行くのだと、その言葉の端々に感じる。
この度のワークショップは、初夏のフットケアアロマをテーマにしたものだった。
アロマも、その材料である植物が、同じ場所の採取、同じ農家さんであっても、その年、その時ごとに、香りや成分が違うということだ。
自然相手であるから、それはその通りだろうし、その辺りはこのシリーズの駄文「世界の美しい瞬間16」をご一読いただければ、と思う。
さて、説明の後、何種類か彼女がセレクトして来たアロマオイルとキャリアオイルを、参加者全員がうふふ、と好きな、またはいいと感じる香りのものを選び、調合して行く。
わたしはキャリアオイルにライスとカロフィルムを、アロマはユーカリレモンとプチブレン、アカマツヨーロッパを選んだ。
カロフィルムは、臭くて駄目な人もいるらしいが、循環には効くのだそうだ。
今の自分にはとても惹かれる香りだった。
そして、アロマの効能としては、一般にはプチブレンはリラックス、アカマツヨーロッパは活性化という両極のものらしい。
それを選んでも大丈夫かと訊くと、それも、必要なものが匂うし、必要なものが体に効くのだ、ということ。
また、体もそれを選ぶのだ。
わたしのオリジナルブレンドのオイルをひと嗅ぎして、彼女はおだやかに、そして嬉しそうに言った。
「ああ、ユーカリレモンの香りが立ってますね。ユーカリレモンが他のアロマの香りを抑え付けているんじゃなくて、他のオイルとお互いを補い合うことで、とてもいい香りに成るんです」
調合したアロマオイルは、参加者のものは全員違った。香りも、色も。そして、それぞれが、すてきな良い香りを放っていた。
皆、その夜からのお楽しみとして、自分だけの秘め事のように、大事に持ち帰った。
どれも、同じものはないのだ。
人も、自然も、そうである。
どれひとつ同じものがないものが、性質が両極であっても、お互いを補い合い、そこですばらしいものごとを産み出す。
毎晩、まるで自分だけのとっておきの儀式のように、アロマを手に取り、嗅ぐ。
そして、掌で少し温めて、ゆっくりと皮膚に、その下の血液へと浸透させてゆく。
もう一度、匂う。いい香りだ。
このオイルの中に、多様性の調和の世界の一部が、ブレンドされているのだ。
この様で在りたい。