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Terravie Sounds開発話 (2/4)

1/nの振り返り


前回Terravie Sounds開発話(1/n)の「つい考えたくなる、やりたくなる」という「佇まい」をどう作り出すか、という話の続きを書きたいと思います。その前に少し本のお話をできればと思います(佇まいに関係してきます)。

「1冊で全て学べて自己完結する本」と「見開きで主題が完結する」本

●分厚い本が日本には少ない

日本の教科書と英語で書かれた教科書を比較して感じることは、英語の教科書には1,000ページを超えるような大著がごろごろあるが、日本で1,000ページを超えるような本はかなり珍しいということです。日本は薄い本が好きなようで、元々1冊だった英語の教科書もわざわざ分冊して3冊にして翻訳をしたりしています。そんな中で私は高校生の時に出会った「虚数の情緒」(吉田武 著)という本に衝撃を受けました。

虚数の情緒に出会う
当時、学校の授業と関係なくブルーバックス(講談社が刊行する自然科学や科学技術の話題を一般読者向けに解説・啓蒙するシリーズ)などを読み漁っていました。その中で科学史などのコーナーに一際分厚い本があり、タイトルに「情緒」というワードが入っているなど一見理系っぽくない文字があり、珍しくて手を取りました。そして1ページを開けて最初の1行に

「さあ諸君、勉強をはじめよう、勉強を・・・」

と書かれており、その後の文章にも21世紀の大人は頼りにならない、諸君たち子どもは自学自習で汗をかいて学ぶのだ、というようなことが書かれており、衝撃を受けました。虚数の情緒の内容については詳しく触れないですが、中学生が数学・物理だけなく人類の叡智を全方位的に学ぶというコンセプトで書かれており、ものすごい熱量で書かれた非常に面白い本です。

虚数の情緒の特徴
虚数の情緒には日本の教科書にはあまりないが、学習者にとっては非常にありがたい工夫がたくさんあります。いくつか例を挙げます。

①自己完結している:この本を読むにあたって四則演算レベル以上の知識を仮定しない。全ての必要な前提知識はこの本の中で説明されるため、他に参考書を必要としない。
この特徴だけでもなかなか普通の本にはないと思います。しかし、初学者にとってはこの本だけにじっくり向き合えば理解ができることを保証されるというのは非常にありがたいと思います。

②数式番号を使わず、必要ならば何度でも同じ式を書く
これも多くの教科書ではないことです。数学に関わらずスマートに書こうとすればするほど、以前説明した内容は〇〇ページ参照などしたくなりますが、実際に読み手からすると、毎回そこに定義や式を書いてもらう方が圧倒的にわかりやすいです。(後から辞書的に本を引く場合は冗長に感じるときもあるかもしれませんが)

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