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読んだもの観たもの_202308

ここ数か月で摂取した作品を載せておきます。どの作品も疲れた社畜のこころにクリティカルヒットするのでおすすめです。



永田礼路『螺旋じかけの海』

遺伝子操作が産業として発達し、人間であることの線引きを自由に操作することすら可能となった世界のお話。生体操作師の音喜多おじさん(白髪のひと)が主人公。
学生の頃に2巻まで紙の漫画本で買っていて、久しぶりに調べたら5巻までで完結していたのですべてkindleで買いなおして読み切った。最後まですごかった。

主人公やそのまわりの人たちに漂う「諦念」が本当に好きで、というか、やばい仕事したり哲学まなんだりしていた学生時代にも刺さるものがあったが、数年経過したド社畜のいま、刺さり方が違っていた気がする。人生の節目ごとに読みたいと思った。
ネタバレになるから多くは言えないが、結末のシーンでは、諦念の中にも抗う場面があって、でもそれを止める周りの手もあって、とにかく最高だった。

モルフは、自我の境目がぼんやりしている子どもに似ているなと思う(大人もそういう側面があるけど)。
自分を確立するために必要なこと、学校だと将来の夢を書かせることだったり金銭的に自立させることだったり、自分で選択することだったりするのかなと思うけど、他人との線引きをきっちり作ることなのではないかと改めて思った。
だから彼も「役に立たなければ生きていてはいけない」ということばにずっと囚われていたと思うし、それでは「親」との線引きができていない状態のままだと思う。
勿論彼はこれからも他者の役に立つように生きるのだろうが、たまには自分のために生きてほしい。


地主『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』

リスナーさんからのおすすめで読んだ漫画。最新刊の3巻まで読んだ。
くたびれた社畜の佐々木さんが密かに癒しをもらっているスーパーのレジの清楚系山田さんが、実はごりごりにヤニカスなつよつよおねーさんで、偶然喫煙所でエンカウントするものの、山田さんは自分を別人「田山さん」と名乗って……というところから始まるストーリー。

とにかく田山さんが疲れた社畜に響くことばをくれて最高にかっこいい。そして佐々木さんは社畜の先輩(四十代くらい)なので、この諦念極まれりなところがとてもよい…心にくる…。

田山さん(山田さん)は佐々木さんがどきっとするようなことをしばしばしかけてくるものの、佐々木さんがおじさんすぎて全然響いてないのも見ていて最高。あ~~もだもだするぜ~~でもいい大人だから佐々木さんのその対応は正しい~~20くらい年下の女の子だもんな~~、とにこにこする。


江口連『とんでもスキルで異世界放浪メシ』

アニメ全話と漫画最新刊9巻まで、あとスピンオフ漫画最新刊7巻まで履修済み。待ちきれないのでいずれラノベ版も読みます。
うっかり異世界転生してしまったくたびれた社畜の向田さん(くたびれた社畜率ここまで100%)。ほかの若い転生者はすごい魔法が使えたりするのに、向田さんだけはなぜかスキルが少ししょぼめの「ネットスーパー」。
しかしそのネットスーパーで取り寄せた現代の手料理が、異世界ではめちゃめちゃウケまくり、フェンリルだのドラゴンだのがメシ目当てで仲間になっていく…というストーリー。

この作品見ながら酒を飲むと捗る。生姜焼きもステーキも捨てがたいけど、ハニーマスタードチキンとか豆乳スープが超うまそうで最高。アニメも料理作るシーンの作画がすごい丁寧ですき。
異世界転生系のグルメものって、結構家庭での再現がハードそうなものも多めな印象なんですが、この作品は基本的に向田さんの手料理なので、市販のタレがんがん使ってくれて、こういうのでいいんだよ系の品も多くてよい。

あと、ストーリー序盤、ほかの若い異世界転生者に「あのひとのスキル、ネットスーパーだって…ヒソヒソ…」と言われたときに、食ってかかるとかせず、「アッ自分スキルしょぼそうなんでここでサヨナラします~」と大人の対応を見せて離脱するシーンがあって(多分転生後1時間経過してないくらいのタイミングで)、
下手に火力使わずに受け流して生きていく感じが大人だ…最高だぜ向田さん…という気持ちになった。社畜おっさんものは常識的な諦念がちゃんとあって、社畜的には疲れずに楽しめていいね…。


『王様戦隊キングオージャー』

リスナーさんからのおすすめで人生で初めてのニチアサ戦隊モノ。戦隊モノを見るのは人生初めて、ドはまりしている。
スーパー戦隊シリーズの中で初めて「昆虫」モチーフを採用しているそうで、これまで「昆虫」が採用されなかったのは「弱そうに見えるから」らしいと何かのサイトで読んだ。

前作2作品とは違って、多少のことでは諦めない精神は勿論あるものの、「やらざるをえない窮地があって、いま王の座にいる」という人物が多くて、毎日やりたくもない雑務に追われるタイプの社畜に効く。
自分の望みではないにしろ置かれてしまった立場をどう受け入れていくか、ということのほかに、自分が発したことばに対する責任、みたいなものについても丁寧に書かれていて好き。

推しはリタ様とヒメノ様とモルフォーニャ。つよい自立した女しかいない。すき。




今回はここまで。何が楽しくて人生頑張らなきゃいけないんだ…としんどい思いをしている社畜どもにおすすめの4作品でした。
若いころは、自分のしんどさを吹き飛ばすくらい笑えたり刺激的だったりするものを好んでいたけど、年齢を重ねると眩しくて摂取するのがしんどくなったりする…しない…?
そういう皆さまにぜひ摂取してほしい。

毎日毎日ままならないけど、それでもなんとか生き延びような。

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