社長の履歴書シリーズ「東大発ベンチャーが挑む より良い社会づくり」第1回 リアルグローブ誕生秘話(起業編)
はじめに
2008年10月創業のリアルグローブは、「現場の “いま” を地図に載せよう」を合言葉に、リアルタイムな現場の情報を地図上に集め、AIでちょうどいい地図を作る、「デジタルツイン」「地図 x AI」という切り口から社会課題の解決に取り組んでいます。
現在、令和5年度に国土交通省のSBIR制度「3D都市モデル自動生成・自動更新システムの開発及び実証」に採択され、令和6年度には「不動産分野における新たなサービス創出」を行う事業者に選定されました。他にも大型案件が進行するなど、大きな転換期を迎えています。
代表取締役社長の大畑は、東京大学在学中に起業しました。
社長の履歴書シリーズ「東大発ベンチャーが挑む より良い社会づくり」では、インタビューを通して社長の思い、人柄、起業についてお伝えしていきます。
第1回目は「リアルグローブ誕生秘話(起業編)」では、東大に関係することを中心にインタビューをおこないました!
東大を目指した理由
— 社長は東大在学中に起業したと伺いましたが、まず、東大を目指したきっかけを教えてください。
一番の理由は田舎(山口県)から「東京」に出たかったからですね。どうせ行くなら一番の学校に行こうと思って、東大を目指したことがきっかけです。
— 高校は進学校だったのでしょうか?
田舎の私立高校で、僕の前で東大に入った人はあまりいなかったと思いますから、いわゆる「進学校」ではないですね。目指してみて、その難しさがわかりました。当然ながら現役合格はできず、一年浪人して頑張って、やっと入ったという感じです。
— もし東大に入れなかった時には…、と考えたことはありますか?
考えてなかったですね。僕は性格的に、あまりスペアを用意するタイプじゃないんです。
大畑流、東大合格の勉強方法
— 全てのエネルギーを集中して臨んだ受験ですが、東大合格のための勉強方法を教えていただけますか?
大学受験は(過去の問題から)各大学の出題傾向がわかるので、対策が変わって来るんですね。(受験当時)他の京大や慶応などの問題を見た時に、難しくて「こんな問題は解けない」と思いました。なんとなくですが、マニアックというか、ひっかけ問題のような傾向もあるとの印象を受けて、そうなると「どう勉強すればいいのかわからない」と。僕からすると、(東大以外の)他の大学受験の方が難しいと感じました。
(当時の)東大受験の場合、全ての学科の学力を上げるための勉強というよりは、苦手な分野はセンター試験突破できればOKと割り切って、とにかく得意分野を伸ばしていく。基礎をしっかりとやり切れば合格ラインに到達できそうだとの手応えがありました。自分に合ったトレーニングコースを組み立てやすかったし、そういう意味でも、東大の入試の方が自分に向いているように感じました。
基本的には素振りというか筋トレ的なことが好きですね。これをしっかりやっておけば、ちゃんと結果が出る、みたいな事が好きだから、東大の受験は性格的にも合っていました。僕はピーキー(※)だから、向き不向きがはっきりしているし、好き嫌いもはっきりしているので、そういう僕には東大入試の方が面白く見えたんです。
※ピーキー(peaky):
人の性格に使う場合、「特定の分野でのみ実力を発揮する人」「感情の起伏が激しい人」のこと。
東大在学中に起業、そのきっかけとは
― 東大在学中に起業したきっかけを教えてください。
起業したのは大学4年生の時ですが、地方から東京に出てきて、遊ぶお金が欲しくていろんなバイトをやった中で、プログラムの仕事がお金も稼げたし、一番自分に合ってたんですね。
― 「遊ぶお金欲しさにバイトを始めた」というのは意外ですが…。
東大の場合、赤門のある文京区の本郷キャンパスは3年生からで、1、2年生は渋谷近くの駒場キャンパスで学ぶんですが…、そこは歩いて渋谷まで行けてしまうんですよ。
― 地方から出てきて、いきなり渋谷はちょっと刺激的ですね。
東京って街は誘惑だらけ(笑)、遊んじゃったね。ダメですよ、渋谷の近くに大学を作ったら(笑)。おかげで大学1〜2年を4年間やってしまいました。
― 遊戯の経験を経て、大学4年生で起業された理由はなんでしょうか。
当時、アルバイトで働いていた会社の社長はとても良い方で、優しく、初心者の僕にもいろいろ教えてくれる人でした。その会社のまわりの人が次々と起業していくんですが、みなさん、とても楽しそうで、それで僕も起業してみたくなったのが一番大きな理由ですね。社長も起業することを応援してくれました。
― 社長が起業した頃は、いわゆるIT起業ブーム(※)の頃ですか?
僕が起業したのはITブームのちょっと後の、ガチガチの就職氷河期世代(※)なんです。世間では就職に対するネガティブなニュースが蔓延している中で、留年やら浪人やらでだいぶ遅れをとっていた僕には、起業くらいしか面白そうな選択肢が残ってなかったんです。
※第三次起業ブーム(IT起業ブーム):
1995年頃に到来し、サイバーエージェント(1998年)、DeNA(1999年)などのIT企業が多く誕生した。2000年代に入り、ネットバブルの崩壊や、ベンチャー企業の不祥事などが相次ぎ、ブームは終焉。
※就職氷河期世代:
1993年から2005年に学業卒業で社会に出た世代。
学業と起業の両立
― プログラムのバイトからの起業。どのように起業して、仕事はどうやって得たのでしょうか?
LLP(※)で起業したんですが、アルバイトをしていた頃のまわりの方々が良くしてくださって、案件(仕事)を回してくれたんですね。他にも知り合いの紹介などいろんな出会いがあって、「東大生が起業」してると知ると、大人の方たちが楽しそうにかまってくれて、快く開発の案件を僕の会社に依頼してくれて仕事が成り立っていた、という感じでした。
※LLP(Limited Liability Partnership):
2005年8月1日に創設された有限責任事業組合制度。
参加する組合員が個性や能力を発揮しながら共同事業を行うことができる組織形態。
― 「仕事は順調」、その中で大学院に進学されたのは、何か理由があったのでしょうか。
理由があった訳ではなく、東大の理系の学部の人たちはほとんどが大学院に行くんですね。だから「(大学院に)行くよね?」「うん、いくよ」みたいな感じでした。
― 大学院と会社経営の両立は、大変ではないかと想像するのですが…。
起業したといっても、今思い返すとアルバイトの延長のような感じだったのかもしれません。仕事は知り合いの方々から回してもらっていましたし、優秀な学生アルバイトたちで開発の仕事をやって、それで会社が回っていた感じですね。
すごいビジョンがあったとか、どうしてもやりたいことがあって起業した訳ではなくて、「起業してみたかった」から起業したこともあって、当時は「会社を経営している」感覚があまりなかったと思います。
ところがリーマンショック(※)が起こったことで、本気で仕事に向き合わざるを得ない状態になりました。開発案件や研究開発系の案件などが一気に消えたんですね。それはもう見事なくらいに無くなりました。
その時に「無くならない仕事ってなんだろう」と考える中で、「サーバーの仕事だ」と思いました。今では当たり前になったクラウド、仮想化技術みたいなのが、当時は走りだったんですね。
AWSやAzureなどが、まだ本格的に日本に来ていない頃で、サーバーの基盤みたいな開発をやりだしました。「Webのボタンを押すと、すぐに使える設定済みのサーバーが手に入ります」みたいなことが新しかったんです。
当時はまだ、ユーザーがインフラやソフトウェアを持たなくても、インターネットを通じて、サービスを必要な時に必要な分だけ利用する考え方があまり無くて、クラウド技術について言われ始めた頃でしたから。基盤技術というか、その基盤を使ったユーザビリティのようなものを作ったんです。
※リーマンショック:
2008年9月15日に起きた米投資銀行リーマン・ブラザーズの経営破綻を機に、世界的な金 融危機と不況に発展した現象のこと。
リーマンショック直後に法人を設立
― では、今のリアルグローブが得意とする「Web APIで何でもできるようにする」というようなコンセプトの開発を、この頃すでに始めたということでしょうか。
案件がほとんど無くなって、暇でしたからね。まわりにその開発をするだけの技術を持っている人たちがいたことも大きかったですね。「こうやったらブラウザからできる、というようなものはかつてないし、効率的に運用できるよね」という開発を試行錯誤しながらやっていました。
― そんな大変な状況の中、2008年10月1日に会社を設立されたのはなぜでしょうか。
リーマンショック以前は、まわりの大人たちがかまってくれて、仕事をまわしてくれたおかげで成り立っていました。でも、これからは自分たちで開発したものを営業していくとなった時に、自分の足で歩いていくというか、心構えというのでしょうか、法人化を決めました。実際に営業で回ってみると、一個も売れませんでしたけど(笑)。売れませんでしたが、いろいろな意見やアドバイスをいただくことはありがたかったですね。
― 東大発ベンチャーという言葉がありますが、東大が起業のサポートしてくれるシステムはあるんでしょうか?
あります。あったんですが、僕は知らずに起業して、後から「こんな仕組みがあったんだ」と。チャンスもくれるし、相談するとサポートもしてくれる。その仕組みを活用すると、東大の名前でいろんな企業につないでくれるんですよ。今まで個人でやってた時には全然会えなかった人に会えたり、役職が上の方々が話しを聞いてくださるる。すごくありがたかったです。
その上出資を受けることもでき、東大の中にあるインキュベーション施設を利用することもできましたし、本当にお世話になりました。起業するにはとても心強い環境ですよ。
その中でNTTにご紹介いただいて、NTTのインキュベーションプログラムを受けることができたんですね。(そこでできた基礎技術を使ったものが、後にニフティに採用されました。)
そして、グローバル・ブレイン(※)から出資を受けることが決まり、大学院を辞めたんですよ。
※グローバル・ブレイン:
グローバル規模でベンチャー支援を行う独立系ベンチャーキャピタルです。徹底したハンズオン支援、グローバルなエコシステム、スタートアップ企業と大企業のオープンイノベーションを通して、スタートアップ企業を支援するとともに、新たな産業の創出を目指しています。(公式Xより)
― 東大の大学院を辞める…。とてももったいないと思ってしまうのですが。
僕は就職氷河期の世代ですから、就職そのものに魅力を感じなかったということもあります。しかも僕はダブリまくっていますから、その面でもハンディキャップを負っていましたし(笑)。その戦いの中で、性格的にもクセが強いという自覚がありましたから「起業しかないよね」みたいな感じでしたね。
—— 東大の大学院を辞め、大手企業からの出資を受け、本格的に起業家としての道を歩みだした大畑社長。快進撃の始まりを予感させるスタートですが、ご本人いわく「失敗の連続だった」という社長業について、《社長の履歴書・第2回》を note で詳しくお伝えします!
《お知らせ》
リアルグローブは国土交通省のSBIR制度に採択いただき、現在「3D都市モデル自動生成・自動更新システムの開発及び実証」を行っており、一緒に開発するエンジニアを募集しています! 「Project PLATEAU」の開発に関心がある方、一緒に働きませんか?
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