
パワハラ社長物語(1)最初はパワハラじゃなかった!
創業当時は、社員に心から感謝していた
パワハラ社長は、創業から数年は、社員に心から感謝していたそうです。
「こんなに営業成績が取れて、本当に感謝している」
と、社員全員に涙しながら語ることもあったのだとか。
ですが、いつの日からかパワハラ社長へと変貌していったそうです。
そこには、そこまでに至る段階があったのではないかと、長年在籍していた方からの証言を元につづってゆきます。
黎明期・パワハラの芽生え
最初は、「注意する」の段階だったと思います。
社長という地位は、周囲に影響力を与えます。ちょっとした注意でも、その効力は抜群!
最初の一歩は、社員に「ちょっと注意するだけ」だったかもしれません。ですが、その効力は抜群で、社員に影響を与え、しかもよい方向に向かってしまったため、心地よくなったのではないでしょうか。権力をもつ快感ってやつです。自己効力感がムクムクと芽生えたと思われます。
この快感のために、行動は強化されてゆきます。「注意」は繰り返されてゆくのです。
初期・叱り始める
次第に、言葉が強い「叱る」へと変貌してゆきます。
このころには、処罰感情もあったはずです。
悪いものはやっつける!という勧善懲悪な水戸黄門様のような気分。
「怠け者な悪い社員をやっつけるぞ!」という気持ちで、叱ることに快感があったと思います。
快感のために、ますます行動は強化されてゆきます。
中期・恫喝する
一方、社員は「叱られる」ことに慣れてゆきます。「馴化(じゅんか)」の状態です。うなずいたり、「わかりました」と返事をしたり。社長の要求は、理不尽でもあるため、行動には移せません。
すると、パワハラ社長はどうするか。
思い通りに動かないので、ますます叱るのです。感情の激しい「恫喝」です。
実際にありました。
<とある会議で>
パワハラ社長、タスクをしていない社員に恫喝しました。
社員は、その場しのぎでうなずき、社長は「わかってくれた」と納得して一旦、恫喝は収まります。
後日。
社長は、タスクが塩漬けになっていたことに気づき、もっと激しい恫喝をしました。
これは、恫喝という行動が強化されている「誤学習」だと言えます。
後期・パワハラ依存症になる
社員は、何をしても恫喝されるため、何をしても無駄と学習し、無気力になってゆきます。
一方、社長は、「こんなに自分は頑張っているのに、社員はやる気がない。自分だけが頑張っている」と逆に被害者意識を持つようになります。
そして、ますます恫喝が激しくなり、自分では止められない・抑えられない状態になります。もはや、依存症状態。
実際にこういう発言がありました。
「オレだけが借金してリスクを背負って頑張っているのに、お前らは何も仕事しないし努力しない!」
まさに、被害者の逆転現象、パワハラ依存症ともいうべき典型的な発言だったと思います。
パワハラ依存症については、次で詳しく書いてゆきたいと思います。
(つづく)
<参考文献>
「〈叱る依存〉がとまらない」村中直人 紀伊國屋書店 (2022/2)