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こんど情報が漏れたらただでは済まない  西野智彦の金融取材ファイル#10

こんにちは。ご好評をいただいている「異次元緩和解体編」の続きです。2023年7月、10月と相次いで政策修正を行った後、日銀が予想もしなかった環境変化が起きます。それは一体…。

全面解除へ思わぬ「追い風」
唯一の懸念は情報リークか

 黒田東彦の異次元緩和ほど、難解な政策スキームもない。長期国債の大量購入に始まり、その限界が見えるとマイナス金利を追加し、これも不評と知るや、今度は長短金利を同時に操作する「イールドカーブ・コントロール(YCC)」の荒技をひねり出した。さらにこれにも修正を重ねた結果、まるで迷路のような複雑怪奇な政策体系になってしまった。

このため、市場を混乱させずに正常化するには、時間をかけ、段階的に解除していくしか道はない、と日銀のスタッフたちは考えていた。植田和男体制の下でYCCを2回修正した時点でも、次はYCCの完全撤廃、その後にマイナス金利を解除し、それからバランスシートの圧縮に取り組む「長い旅」になると当初は覚悟していた。

◆長い旅になるはずが内外で思わぬ順風

 環境が一変したのは、2023年10月のYCC修正の直後である。11月に入り、米国の長期金利が急激に下がり始めたのだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めがピークアウトしたとの見方が市場で広がったためで、一時4・9%あった米長期金利は、年末には3・7%まで低下し、これに引っ張られるように日本の金利上昇圧力も減衰した。

これにより、日銀が警戒していた「長期金利1%突破」のリスクは霧消し、YCCは「あってなきがごとき存在」(日銀幹部)となる。そしてこの環境変化が、YCCとマイナス金利の同時解除を可能にする重要な布石となった。

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