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異次元緩和の解体プロセスを追う   西野智彦の金融取材ファイル#6

前週までの「前川・大平編」とは打って変わり、今週から現在の金融政策に直結するテーマを取り上げます。

焦点を当てるのは、黒田東彦前体制の下で2022年暮れに行われたイールドカーブ・コントロール(YCC)の唐突な修正から24年3月の異次元緩和の完全解除に至るまでの全プロセスです。現在進行形であるため、なお未解明の部分もありますが、とりあえず現時点での取材成果をドキュメント形式でまとめました。ご感想など頂けたら嬉しいです。

「路線転換」は突然に
異次元緩和のギアチェンジ

 振り返れば、あそこが分かれ目だったと気づくことがある。
1997年11月3日、三洋証券が会社更生法の適用を申請した。当初は透明性の高い法的処理が採用されたと高く評価されたが、後から見れば、未曽有の平成金融危機に向かう重大な分岐点だった。

2000年8月の拙速なゼロ金利解除は、半年後に量的緩和という禁断の世界に足を踏み入れる端緒になった。その後四半世紀に及ぶ大規模緩和時代への分かれ目である。そして10年に及ぶ黒田東彦総裁の「次元の異なる金融緩和」が歴史的な分岐点を迎えたのは、あまり知られていないが、22年11月の最初の週末だった。

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