🐈‍⬛　5〜6 /6　オコゼ まっこうくじらに変身

それから　ひと月がたった。

Nさんは

すっかり元気になったジニー オコゼを 大部屋デビューさせる事にした。
情がわいて 手放せなくなったのだ。

元々 体格のいいオスなので
お局さくらにいじめられる事もなく

かといって 彼は 見てくれこそ キズだらけの 物騒なつら構えだが
意外にも弱い者いじめをするでもなく
すんなりと Nさんちの ネコ軍団の仲間入りを果たした。

のんきな家ネコ暮らしになって、ジニー オコゼは だんだん太ってきた。

みっしりと筋肉がついて ついでに去勢のせいか おなかに脂肪もついて
元々 がっちりした体格だから やたら でかくなってしまった。

こうして 半年もたつと

オコゼは まっこうくじらに なっていた。

ご主人が ボヤく。

「今にも シニそうで　あれは 大した名演技やったな
　そんだけ太ったら、もう外で 暮らせるやろ？」

ところが、まっこうくじらは

「なんのはなしですか？」　

　　　　　　　　　という顔をして いばっている。

おまけに
でかくなった ジニー・まっこうくじらは

顔に似合わない 甘えん坊だった。

ある日、こいつは床のふき掃除をしていたNさんの

背中に いきなり飛び乗って首根っこを甘噛みしたのだ。

「な　何するのよ！」

と叫んだNさんのお団子ヘアに手を突っ込む。

「こら〜」と振り払われると
ずり落ちそうになって、ぶっとい爪で しがみつく。

おかげで、Nさんの肩や首は 傷だらけという有り様だ。

それでも Nさんは まっこうくじらが可愛い。

というのも
彼女は、弱った猫を放っておけない。
「まったく 猫のために働いているようなもんだわ」 と
ぼやきながらも　治療費も 食費も惜しまない。

その代わり、エネルギッシュで押しが強い。
ついつい 猫たちをしつこくかまうので、彼らもタジタジとなる。

本人の情熱のわりには、猫に好かれない！？　　　

　　　　　　　　　　　　　　という かわいそうな事になる。

そんな中で
まっこうくじらは 珍しく　Nさんの

暑苦しい愛情にめげない　タフな奴だったのだ。

「ホントに 参っちゃうよ」とか言いながら
Nさんはまんざらでもない顔をしている。

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