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小説NO.3


タイトル:獅子の誓い

第一章 - 夢の中の獅子
アリスは、再びその夢を見た。今までのどの夢とも違って、今回はどこか現実的な感覚があった。大草原の中、風が草を揺らす音、遠くで鳥のさえずりが響く中、彼女はただひとり、どこかに向かって歩いている。空は広く、太陽が高く輝き、草の匂いが鼻をくすぐる。しかし、それ以上に彼女の心を引きつけたのは、遠くに見える巨大な影だった。
それは、ライオン――アラドだった。
アリスはその姿を見つけると、心の奥底で何かが叫び、自然と足が進んでいった。黄金色のたてがみが風に揺れ、筋肉のついた大きな体が草原を踏みしめる。彼の目は、ただの動物のものではない。そこには何百年、いやそれ以上の時を生きた者だけが持つ、深い知恵と誇りが宿っていた。
「アリス、ようやく来たか。」
その声が、彼女の耳に届いた。
「アラド…」
アリスは声を出すことができなかった。ただ、目の前に立つその存在が、あまりにも大きく、神々しく感じられた。
「君は私の誓いを守る者だ。」
アラドは静かに告げた。その言葉がアリスの胸に響き、彼女の心は一瞬で混乱し始めた。何がどういう意味なのか理解できなかったが、胸の中に確かなものを感じる自分がいた。
「どうして…私が?」
アリスは震える声で尋ねると、アラドは静かに首を横に振った。
「君の中には、忘れられた力が眠っている。それを目覚めさせるために、私は待っていた。」
アラドの眼差しに込められた強い意志を感じ取ったアリスは、どうしてもその言葉を受け入れることができなかった。しかし、心の中で湧き上がる何かが確かに彼女を呼んでいた。
「私が選ばれた理由を知りたいだろう?」
その問いかけに、アリスは頷いた。
「君の力は、我々ライオンの王国の誓いを解く鍵となる。」
その瞬間、夢は途切れ、アリスは目を覚ました。

第二章 - 扉の向こう側
目を覚ましたアリスは、異常な感覚に包まれていた。心臓が激しく鼓動し、手のひらは冷たい汗で濡れている。振り返ると、部屋の片隅に置かれた一冊の古びた本が目に入った。それは、今朝まで気にも留めなかったものだが、手が自然とその本に伸びていった。
表紙をめくると、夢の中で見た草原と、ライオンの姿が描かれていた。手が震えながらもページをめくり始めると、何かが体を貫くような感覚が走った。突然、世界が歪んだ。アリスは足元が崩れそうになるのを感じ、思わず目を閉じた。
そして目を開けたとき、彼女は再び草原に立っていた。息を呑む間もなく、目の前にアラドが現れた。
「ようこそ。」アラドは静かに微笑んだが、その目にはどこか悲しみと強い決意が込められていた。「君が来るべき時が来た。」
アリスは、言葉が出なかった。なぜ、どうして自分がここにいるのか、理解できない。ただ、アラドが語る通り、運命が彼女を引き寄せていることは感じた。
「君がここに来た理由を知りたいだろう?」アラドは続けた。「君こそ、私たちの誓いを解くために選ばれた者だ。」
その言葉が、アリスの中で何かを揺さぶった。

第三章 - 試練の始まり
アリスはアラドと共に、王国を救うための冒険に出発した。彼女は次第に、自分が持っている力に気づき始めていた。それは、普通の人間には持ち得ない、何か特別な力だった。最初は小さな奇跡のような出来事から始まった。何もしていないのに、手に触れた花が一瞬で咲き誇ったり、風がアリスを包み込むように吹いたりした。
「君の力が目覚めてきている。」アラドはそれを見逃さなかった。「だが、覚えておけ。力を使うには、代償が伴う。」
その言葉を心に刻みつつ、アリスはその力をうまく制御する方法を模索し始めた。
二人の旅は困難を極めた。途中、荒れ狂う嵐を乗り越え、深い森の中で危険な獣に襲われながらも、アリスは次第に自分の力をコントロールできるようになった。しかし、その度に感じるものがあった。それは、彼女の力が確実に、何か大きなものを消費しているということだった。
「力を使うたびに、少しずつ君の命が削られている。」アラドはある日、アリスに警告した。「その代償を払う覚悟があるのか?」
アリスはそれを否応なく受け入れるしかなかった。王国を救うために、彼女は自分の命をも惜しまない覚悟を決めた。

第四章 - 失われた記憶
アリスとアラドは、古代の遺跡にたどり着く。その遺跡には、失われた誓いの書が眠っていると言われていた。アラドはその書に触れることで、自らの失われた記憶を取り戻し、過去の誓いを解く手がかりを掴もうとしていた。
だが、遺跡には多くの試練が待ち受けていた。アリスとアラドは一つ一つその試練を乗り越えていった。その過程で、アリスは驚くべき事実に直面する。実は、彼女の血筋は人間ではなく、ライオン王国の血を引く者だったのだ。それを知ったアリスは愕然とした。
「君が選ばれた理由が、ようやくわかったか?」アラドは静かに言った。「君の父母は、かつて王国の王族だった。しかし、ある時、君の母が人間の王子と結婚したことで、王国はその誓いを破られた。」
その真実に、アリスは深い衝撃を受けた。自分の血筋がライオン王国の王族に繋がっていたことを知り、その責任の重さに圧倒されていた。

第五章 - 迫る影
アリスとアラドは、王国の誓いを解くために最後の地へと向かっていた。しかし、その道のりはますます険しくなり、ついに彼らを阻む者が現れる。それは、誓いを守るために封印されし存在――破滅をもたらす者だった。
「君が誓いを解くことは許されない。」封印された者は、言葉ではなく、力で二人に襲いかかってきた。
アリスはその圧倒的な力に立ち向かうために、自らの力をフルに使うが、その代償はあまりにも大きかった。力を使うたびに、彼女の体力は削られ、生命力も少しずつ失われていった。
「アリス…」アラドは彼女の肩を支えながら、苦しげに言った。「君の命を守るために、ここで立ち止まらなければならない。」
だが、アリスは強く首を振った。「いや、私にはやるべきことがある。」
その決意が、アリスを前に進ませていった。

第六章 - 運命の決戦
最終決戦の場に立ったアリスとアラド。二人はその時、王国を救うために最後の力を振り絞ろうとしていた。アリスの力は限界に達していたが、心の中で強く誓った。「私は絶対に、王国を救う。」
その誓いが、彼女の力をさらに強くし、最終的に封印されし者を打ち倒すことができた。
しかし、その代償は大きかった。力を使い果たしたアリスは、ついに倒れ込む。その姿を見て、アラドは涙をこぼしながら言った。「アリス、君は本当に…」
だが、アリスは微笑んで答えた。「これで、王国は救われた。私の誓いも、解けた。」
その瞬間、彼女の体に温かい光が包まれ、アリスは最期に安らかな表情を浮かべて静かに息を引き取った。
アラドは、彼女の手を握りしめ、静かに誓った。「必ず、君の犠牲を無駄にしない。」


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