行政書士事務所の報酬の決め方
行政書士事務所を開業して、悩んだことの一つが値段の決め方だった。
そもそも経営するのがはじめてなので、自分の商品(業務)に値段を付けたことがない。
これから行政書士事務所をはじめようと思っている方は、事務所報酬を決める際の一つの参考にしてほしい。
基準価格表がある
日本行政書士連合会(通称:日行連)は、基準価格というものを公表している。
これは、実際に行政書士事務所にアンケートを取って、その業務の報酬の最低値、最高値、平均値、最頻値などをまとめたものだ。
どこかから入手できるので、報酬を決める際に見てほしい。
この平均値や最頻値は、実際に実務をしていても、だいたい妥当な報酬額だと思う。
たまに、「一桁間違ってません?」と思うぐらい高い価格を付けている人がいて驚く。
競争相手の価格も参考に
自分と同じ地域で、同じ業種の事務所がいくらぐらいの報酬にしているのか、ホームページなどで調べてみることができる。
たとえば、「〇〇市 行政書士 遺言作成」とかで検索。
私も開業当初、他事務所10件ぐらいの報酬を表にまとめて、自分の事務所報酬を決めていた。
私の事務所では、開業当初、平均値のやや下ぐらいの報酬で始めた。
とにかく実務経験を増やしたかったのと、今思えば、自分の実務に自信が無かったのかも。
ただし、その業種を専門にやっている事務所の報酬単価はめちゃめちゃ低いことがある。
たとえば、「国際業務専門行政書士」みたいな人の事務所報酬は、単価がやたら安かったりする。
これは、同じような仕事をたくさん受けるため、提出先が一緒だったりして効率良く進められるからだ。
これを参考に自分の事務所も非常に安い価格に設定してしまうと、はじめは業務が大変な割に報酬が安くて苦労するので気を付けて。
また、他士業の報酬単価はあまりあてにならない。
たとえば、司法書士さんや税理士さんは、相続登記や相続税申告とあわせて遺産分割協議書などの作成もするが、協議書作成費用を1万円ぐらいで受けていたりする。
それは、本体(登記や税申告)があるから、協議書作成がオプションのようなものだが、行政書士の場合、遺産分割協議書自体が本体(業務)だったりするので、1万円では安すぎる。
行政書士ならではの価格設定に注意しましょう。
慣れてきたら値上げしよう
集客が安定してきて、その業務についてある程度経験を積んで自信がついたら、少しずつ値上げしましょう。
物価も上がってるし。経費も増えるし。
オススメは1割ずつぐらいの値上げ。
この時に、再度、近隣の同業者の報酬を調べ直してもOK。
意外とみんな値上げしてたりする。
最初は、そんなに儲かっているわけではないのに値上げして大丈夫?と不安だが、お客さんは正直そこまで些細な料金の違いに気付いていないことも多い。
特に法人相手の業種は、自分の給料が減るわけでもないので、担当さんもまったく気にしていない。(自分が気にするほど相手は気にしていない)
たまに、個人経営の人でめちゃくちゃ料金にうるさい人もいるので、そういう人や、リピートの人だけ、値段据え置きでもいいかも。
値上げすると、とにかく安さ重視のお客さんは寄り付かなくなる。
でも、そういうお客さんは正直あんまり質が良くない方たちなので、むしろ依頼してもらうとトラブルの元だと思う。(変な口コミ書いたり)
そのため値上げすると、客数は減る。
はじめが地域最安値みたいな料金だと、忙しい割に儲けが少ないけど、値上げするとその分、ちょっとヒマになる。
ただ、単価を上げているので、収入はそんなに減らないハズ。
時間に余裕をもって仕事ができるので、オススメです。
(安い単価だと、「とにかく早く」みたいなお客さんよく来る)
自分の仕事に自信が無い人は報酬安くしがち
まわりの同業者を見ていても、自信が無い人は、報酬が安い。
そんな値段で受けなくても・・・と思うような、ほぼタダで仕事をしてたりする。
気持ちはよく分かるけど、自分の仕事に自信を持って、適正価格を維持してほしい。
それが行政書士全体のためにもなる。
やたらと報酬高い事務所もある
私の近隣にも、「安い仕事はやらん!」と新人なのにやたらと高い報酬の事務所がある。
別に自由競争なので、好きにしたらいいと思うが、同じ業務をしていて、その報酬で誰が依頼するの?と思ってしまう。
今はお客さんもネットで料金比較してから、依頼してくる人も多い。
相見積もり取ったり。
紹介のお客さんなら、ある程度高い報酬でも依頼してくれるかもしれないけど、バカ高い報酬掲げておいて、「最近ヒマー」と言われても、「それはそうでしょう」としか言いようがない。
それに単価が高い事務所は、仕事の質も高いのかというと、けっしてそういうわけではない。
飲食店の場合は、仕入れがあるから、材料が高いとか仕込みに時間がかかるという理由で商品単価も上げる必要があるのかもしれないが、行政書士の場合、商品の質というのは、イコール行政書士の質だ。
バカ高い価格で本当にずっと儲かるのか、私には分からない。
やっぱり地域の相場ってあると思う。
相手によって変えてもOK
事務所報酬って不思議なもので、同じ価格なのに、お客さんによって、「高い!」と言われたり、「こんなに安くていいの?」と言われたりする。
同じ日に別々のお客さんから、「高い」と「安い」を言われるときもあって、混乱する。
ようは、その仕事への対価なので、自分がめちゃめちゃ楽できてこの値段なら「安い!」と人は思うし、自分でもできるぐらいの内容なのにこの値段は「高すぎる!もっと安いとこあるのに」と思ったりするのだ。
そのため、私は一応、価格表をホームページ上にも載せているのだが、お客さん(の仕事内容)によって多少変えている。
※行政書士事務所には価格表を設置しなくてはならず、最近はなるべくホームページにも公表するよう本会から言われている。
言い方が悪いと、相手を見て料金を決めているのだが、ようはお客さんが満足してくれて、自分もなるべく利益が高い値段にしている。
なかなか説明しにくいのだが、一律この料金!にしなくても柔軟に対応していいと思う。
たとえば、まとめて依頼してくれるなら値引きするとか。
相手によって提供するサービス(書類をどこまでこちらが準備するかとか)もちがうわけだし。
もちろん、受託前に見積額を伝えて、もめないようにしましょう。