陸上競技800m走を競馬風に見る
競馬ファンのみなさん、こんにちは。
今年はオリンピックイヤーですね。
せっかくの4年に1度のお祭りですので、陸上競技を競馬のような目線で見る、という楽しみ方を提案します。
とにかく1度レース見てみて
全く知らずイメージがわかないものに対して興味が湧く人はいないですよね?
なので、とりあえずまずは、興味がなくても1度レースを見て欲しいです!
下の動画だけ、ポチッと見ていってください!
お願いします!!
レース自体は4分40秒あたりからです!
これは2020年 (2021年) 東京オリンピックの男子800m決勝です。
なんかコース取りのポジション争いで押し合ったりするシーンもありますし、2着はラスト200mからの切れ味を生かした差し込み、3着は序盤最後方からの追い込みでしたね。
競馬っぽい?
興味持てそうですか?
もうひとついきましょう!
こちらは2024年の日本選手権の女子800m決勝です。
勝った久保選手 (ピンクの服) は2番手の選手を前に行かせて、3番手外目に控えて脚をためているのがわかりますね。
そして残り300mで後ろの選手が仕掛けてきたのにあわせ、相手を前に行かせないようにスパートかけているのがわかります。
こういう動きはかなり競馬っぽくないですか?
かなり興味持ててきたのではないでしょか!?
ちなみに、勝った久保凛選手は、サッカーの久保建英選手のいとこだそうです。
800m走はほぼ競馬
知らなければ、競馬と陸上競技は全然違う、と思われるかもしれません。
陸上競技はトラックがあり、レーンを守らなきゃいけないから、ポジション争いがないのでは?
馬のように逃げ差し追い込みのような脚質もないのでは?
そんな疑問を持つ人も多いでしょう。
いえいえ、そんなことはありません。
800m走に限っては、ほぼ競馬と同じく、ポジション争いもあれば脚質もあるんです!
ポジション争いもあります
短距離走はレーンが決まっているのでポジション争いはありませんが、中距離走である800m走は違います。
ばちばちにポジション争いがあるので、陸上の格闘技とも呼ばれます。
スタートは第1コーナーの位置からで、スタート直後は走るレーンが決まっているセパレートレーンとなりますが、第2コーナーを終えて向正面の直線に入るとどこを走ってもよいオープンレーンとなります。
ちょうどスタートから100m過ぎたところからです。
ここから競馬のようにポジション争いがしっかり起きますし、ボディコンタクトも発生します。
陸上トラックは1周400mですので、800m走は2周のレースです。
オープンになってから1と3/4周するわけですね。
ポジション争いがあるということは当然、内にいる有力選手の外にかぶせて仕掛けられないようにする、とか、距離損覚悟で動きやすい外目にポジションを取る、と言った戦略もレースから見えますよ。
脚質もあります
脚質
脚質というのは、逃げ、先行、差し、追込みなどに分類されるもので、レース中どのポジションを取り、ペース配分をどうするか?といったものです。
最初から飛ばして先頭に立ち逃げ切るのか(逃げ)、最初は集団の後方に控えてラストスパートでぶち抜くのか(差し)、といった、力の使いどころの話ですね。
そのような脚質が発生する理由は、実は筋肉の性質に関係があるんです。
筋肉の性質
瞬発的な働きをする筋肉 (速筋) というのは、全力でバットを振るなど、完全な瞬発的な使い方をすると5秒程度しか動きません。
全力疾走するなどの、少し長持ちするけど、全力で動くような筋肉の使い方ならば、40秒程度は動きます。が、それ以上は生理学的に持ちません。
これが生き物の限界です。
マラソンのように数十分数時間という長い時間動くには、また別の、持久力的な動きをする筋肉 (遅筋) を使うことになります。
これは長い時間動けますが、パワーが出ないため、レースならスピードがあまり出せません。
中距離走の走破タイムと脚質
では人間の中距離走や競馬の走破タイムは、というと、距離にもよりますが、1分20秒から3分くらい。人の800m走の記録は男子が1分45秒くらい、女子は2分くらいです。
これは瞬発的な筋肉の稼動限界、40秒を大きく超えていることから、完全な瞬発力勝負はできないし、マラソンのような走りをしたのではスピードが遅すぎるという、ちょうど難しい数値です。
ただ事実として、タイム的にも中距離走は100m走のように終始全力で走り切ることは絶対に不可能なことがわかると思います。
そのため、800m走は基本は全力疾走で瞬発的な筋肉を大きく使いながらも、どこかで力の抜きどころが必要です。
つまりペース配分をする必要性が生じます。
テンから全力で走り粘り切るのか、なるべく脚をためて末脚で勝負するのか、その中でもなるべくワンペースに運ぶのか、選手に合わせたレース運びが生じるわけです。
これが脚質を生む理由です。
競馬も実は全く同じで、馬も最初から最後まで全力で走り切ることはできない距離を走っているから、脚質が発生しています。
要するに競馬の1200mも3200mも、タイムを考えると馬にとっては本来は中距離走なんですね。
普段の競馬では短距離、長距離と呼んでますが、実は全て中距離なんです。
ちなみに人間の100m走は10秒くらい、400m走なら45秒くらいですので、ここまでは瞬発力で対応可能な走破タイムのため短距離と分類されており、800m走からが中距離という分類です。
人間の800m走はちょうど競馬で言うと1700mから2000mくらいのタイムですね。
筋肉の限界を超えて走る800m走ですので、一番キツイ種目は800だ、という話もよく聞かれます。
本当に選手のこと尊敬するしかないですね…!
人と馬の違い
ただし、人間は馬と違い、少しずつ少しずつペースアップすることもできますし、ゴールがどこかも脚がどれだけ残っているかも自分で把握できます。
ですので、めちゃくちゃ賢い馬のように、脚を余さずバテもしない完璧な位置からの段階的なロングスパートをかけることができます。
そのため、競馬のように、最終直線の鬼の末脚でハナ差だけ差し切る、のような展開はほとんどありません。
最初は控えていたとしても、残り400mか、遅くとも残り200mあたりからスパートをかけて、最終コーナーを終えて直線に入ると勝つ人はすでに先頭に立っていることが多いです。
自在にペースを操れ、脚を絶対に余さなければそんな展開になるんですね。
馬は、ゆったり追走と、本気の全力疾走の、主に2段階のギアしかないため、競馬のようなぎりぎりの差し込みが起きるのでしょうね。
ある意味、人間の800m走は、完璧にレースを理解できる馬だけでレースをした時の、理想のレースが見られる場所、という考え方もできるかもしれません。
色々参考になりそうですね。
あとは選手を把握するだけ
・走破タイムが競馬と同じ
・競馬同様のポジション争いがある
・競馬に近い脚質によるレース展開がある
ここまでくると、競馬とほぼ同じようにレース観戦楽しめることがわかると思います。
あとは、実際に走る選手を知るだけです。
競馬もそうですが、何も知らずに見ても、ただ走るだけにしか見えません。
ところが選手の個性を知り、以前のレースをチェックし、見るレースの予想をしてからレースを見ると、漫然とみるだけでは味わえないような極上の体験ができます。
さあ、あとはオリンピックに出場する選手を把握しましょう!
出馬表
というわけで、簡単にデータをまとめてみました。
競馬の出馬表風にしてみたので、ぜひ予想を立ててください!
前哨戦レースの動画もリンクしています。
女子の出馬表の記事はこちら。
リアルウマ娘ですね。
男子の出馬表の記事です。
ぜひ前哨戦の動画をチェックして、予想と観戦を楽しみましょう!