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桃栗三年柿八年 case②

 父は、花のお世話だけでなく、木のお世話も良くしていた。今は取り払ってしまってもう無いが、自宅の敷地内の一角に畑があった頃、畑の奥の片隅に、キウイフルーツの木が植えてあった。良く育って、ジャングルのように伸び伸びと蔓を伸ばせていた。

 キウイフルーツの木には雄株と雌株があるようだ。私は知らなかったが、そういえば2本、植わっていた気がする。そのキウイフルーツのジャングルで、時期になったら、摘果や摘蕾をしていた。何せキウイフルーツの蔓が、森のように大きく長く伸びていて、実の数も沢山つくのだ。間引くのも大変だったと思う。そのままにしておくと、小さい実が沢山出来るので、収穫が大変みたいなのだ。

 キウイフルーツの実は11月頃に、収穫する。収穫したてはまだ少し固いので、12月一杯は、自宅の暖かい場所で追熟し、柔らかくなった物から食べていた。甘みはあったが酸味も凄かった。美味しかったけれど、その凄い酸味のおかげで、食べ過ぎたら口の中が変な感じになってくるのだった。いかにも「ビタミンCを採っている!」という感じで食べていた。

 我が家には、キウイフルーツよりも古くから植えられている果実の木があった。
 「柿」の木だ。柿は祖母の時代に植えられたもののようだ。キウイフルーツが植えられている株に混ざって、柿の木が数本、植えられていた。この柿もまた、毎年実をたわわに実らせていた。
 毎年11月頃になると、葉を落とした柿の木に、つやつやの橙色の柿の実が、沢山木の枝に実っていた。
 柿の実は、放っておくとカラスに良く食べられるのだ。橙色に実った柿の実が甘いと、賢いカラス達は知っているのだ。
 
 「あの柿の実、もう少し放っておいたら、更に美味しく熟すだろうなあ。」と、放置している間に、カラス達はその柿の実つついて食べてしまう。非常に苛立たしい。カラス達も生きるために食べているのだと知ってはいても、苛立ちが収まらなかった。
 
 もうこうなったら、カラス達に見つからないうちに収穫するしかない。カラス達の狡猾さと戦いながら、毎年収穫していた。

 柿の実を効率的に収穫するには、何か道具が必要である。
 高い柿の木に、たわわに実った柿の実を、祖母が作ったお手製の道具を使って、毎年収穫していた。
 お手製というほど凝った作りではない「柿を採る棒」は、長い竹の棒の先だけを2つに割り、割ったすき間に細くて短い丈を挟んですき間を確保した物で、採り方は、「柿を採る棒」の先の割れた部分で、柿の枝をすくうように下から入れ、ぐりぐりとねじることにより、もぎ取るのだ。
 背が小さくて幼かった私は、「柿を採る棒」のコントロールが案外難しく、いつも苦戦していたように思う。背が小さかった故に、リーチの長い竹の棒の扱いは、難しかったのだ。

 柿の実も良く採れた。不思議と全く採れない年も何年かに一度はあったが、祖父母が亡くなり、柿の木を切り落とすまで、十分な柿の実を、毎年実らせてくれていた。

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